プロローグ
読んで下さりありがとうございます。甘酸っぱい学園恋愛ものですが登場人物は比較的明るく濃いメンバーになる予定です。
よろしくお願いします。
農村と山々が広がる田舎から1週間もかけて王都へとやって来た私はもうクタクタだった。
ガタガタな道を容赦なく進むボロい馬車。寝ることもままならない程ぎゅうぎゅうのひしめき合った席に重たい荷物を足元と膝上に置きひたすら長時間座っては降り、たまに硬いベッドで眠り、そしてまた座る日々。
「もう二度と馬車に乗りたくない…」
「お決まりでしょうか?」
「あ!はい!私このパンプキンパイと本日の紅茶でお願いします。」
「かしこまりました。」
やっと着いた王都。重たい荷物と石のようなお尻はもう動くことを拒否していた。
乗合馬車の停留所近くにそこそこオシャレなカフェが見えたので1人で入ってみた。
「ひとりでカフェってなんだか大人。ふふふ。」
そう言いながらも目は疲れで死んでいる。
その時ふわっと冷たい風が吹いた。
「うう、寒い。」
ドアからのすきま風だろうか。夏が終わるこの季節、良く風邪ひいて寝込んでたなぁと少しホームシックに陥る。身震いしたので腕をさすっていると…
「?あれ?」
暖かい。
「なんで?」
さっきまで寒かった空気が今は暖かなものに変わっていた。
周りをキョロキョロ見回すと1人ぽつんと座ってる男の人が居た。
少し細身の彼はシンプルなシャツとズボンをセンス良く着こなしていて、ざわざわと落ち着きのないカフェの中で1人違う空間に佇んでいる様な、そんな雰囲気が漂っていた。
他の客はみんなそれぞれお喋りに夢中だし…
「もしかしてあの人が魔法で?」
その後私は茶色がかった赤い髪から覗く少しだけ見える横顔をパンプキンパイが来るまでぼうっと見ていた。
そして入学式やら入寮式を終えて教室に入ってみたらあの時のカフェの人が居たらそれはもうそういうことでしょ。
とても気になる。
名前はルークと言うらしい。
それから私には片思いの人が居る。そのお陰で憂鬱だった学校生活は一瞬のうちにバラ色に変わった。