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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

データ供養所

【みんなには】狙った異世界へ行ける儀式【ナイショだよ】

作者: まい

オチはあとがきです。

 突然だが、俺は現世に飽きた。


 心が消耗し切ったとも言う。


 今の人生で良い事なんてここ二十年間は出会っておらず、心はマイナス方向からほんの少しもプラスに動いた記憶なんて、とんと無い。


 生活に困っていないのは幸いと言えば幸いなのだが、それだけで人生が満たされるかと()かれれば、それは否であろう。






 そんな俺だが、公共交通機関に乗っている間の時間潰しに見ていたスマホの画面に、変な広告が目に飛び込んできた。



 [みんなには絶対にナイショ!] こんなツマラナイ世界から飛び出そう!



 文字だけしかない、なんとも素っ気無い広告。


 まるでネット黎明期みたいな目にうるさい配色ではあるものの。


 背景も青空と雲なんて言う、どこの初心者が作ったページだと思うものの。


 それを特徴と呼ぶには素人臭すぎる、なんともベタベタで没個性なもの。




 まあ、だからなんだと言うものだが。


 それをさらっとスルーし、次のページに飛ぼうとしたタップする直前だった。


「あ」


 まだ完全にページの読み込みが出来ていなかった様で、いきなり画面がズレた。


「あ」


 その結果、例の広告をタップしてしまう。


「あ〜……」




 タップしてしまった広告のページが爆速で開き、そこはまるでネット黎明期だった。


 (いにしえ)のホームページビルダーで作ったような、今のネットからすればあまりにも寂しい構成の、例えるなら某男性俳優のホームページみたいなページだった。


 そこには、こうあった。



〜〜〜〜〜〜



用意する物


 行きたい世界が記録された媒体


 媒体は紙でも本でも写真でも機械でもOK!


 漫画の世界ならその漫画1冊でOK


 ゲームの世界なら、そのゲームのデータが入っているHDDやSSD等


 媒体の中に世界の情報が複数ある場合、行きたい世界はこれだと分かりやすくなっていないとランダムになります



 必要なら遮音(しゃおん)設備も





儀式のしかた


 まず服を脱ぎます


 それから行きたい世界が記録されている媒体を足下におきます


 限界まで胸を反らします


 どこかの芸人やゴリラみたいに胸を叩きます


 その時の音がベチベチやビシビシやペンペンやパンパン等と鳴る様に叩きます


 補足として、ゴリラのドラミングみたいにポコポコ鳴らすのが理想的です


 胸を叩きながら「ハッピーがいいね新世界!」と叫びます


 叫び続けながら、足下に置いた媒体の周りをグルグル回ります


 叫びながら回り続けていると意識が遠くなっていきます


 意識が戻って「ハッ」とすると、貴方が足下に置いた媒体にある世界の中へ入っています



〜〜〜〜〜〜



「なんだこれ」


 その時に思ったのはそれだけ。


 そのまま時間潰しを続行した。












 が、帰宅してからは違った。


 正確には外に出た用事が終わりに近付く(たび)に、あの時の変な広告を確認したい気持ちが強くなって行った。


 それで帰宅するなり広告の事しか考えられなくなり、寝る前になったら、もうダメだった。



 家に遮音設備なんて無いので、遅い時間でも空いている個人用音楽スタジオを探し、そこへ飛び込んだ。


 用意した媒体は、家庭用ゲーム機と言う単語が普及した要因である、8ビットマシンに分類されるとても古いゲーム機の物。

 これは異常な行列を作り、社会現象とまで言われたゲームシリーズの初代。


 この頃のゲームは全てドットが分かる形で表現され、初期の3Dゲームより全てがカクカクしていたものだ。


 今はデータとかアプリとか言われて複数のゲームが1つの記憶媒体に入っているが、当時は記憶媒体1つにゲームは基本1つ。


 ゲームカセットと呼ばれた物を持ってきた。


 今思えば、それはとても贅沢(ぜいたく)だったのだろう。



 なぜコレを持ってきたのかと言えば、このドットばかりの世界に飛び込んだらどうなるか。


 その興味が抑えられなくなったのだ。


 自身も再構成されて、ドット絵の住人になってその世界に入るのか。


 それかドットではなく、全員リアルになるのか。


 それともそれ以外か。



 ワクワクしてしまったのだ。


 長らくプラス方向に動かなかった、この心が。


 この感じが久しぶり過ぎて、心の制御方法を忘れてしまったのだ。


 幸い独り身だ。親もとっくに他界した。


 この世界から本当に居なくなったとしても、困るのは退職届を出していない会社だけだ。


 その会社は法令には触れないが、それでも法にスレスレの良いとは決して言えない会社だ。


 失踪(しっそう)した理由に労基に世話になるスレスレの労働を問題視してくれればいいさ。




「では早速」


まずは服を脱ぎます。


 …………。


 ………。


 ……。








⚠ 非常事態発生! ⚠


 2次元の世界に3次元の存在が入り込もうとしています!


 過剰なデータです!


 最適化…………………………失敗!


 2次元の世界に適合出来ません!


 適合不可能なデータを削除します!



 削除…………………………………………成功。


 3次元のデータを削除しました。






※ 某ネット掲示板発祥(?)のびっくりするほどユートピアを基に改変しているもので、現実にこんな儀式はありません。




蛇足


 本当は2次元ドット絵の世界に入って「全てがドット絵だ。 テーマパークに来たみたいで、テンション上がるなあ」とか言わせたり。


 ()()()()()()()()()


 とかさせようとしたんですがね。


 2次元の世界に3次元は入れないと、人間のデータを削除する(ころす)事に。


 こっちの方が、リアルかなと。


 で、その変更に対応出来てないのが、転移する為に用意するもの。


 でも転移すること自体は出来てるし、2次元へ転移したら削除される情報はあえて伏せてる極悪仕様の、悪魔の誘いって事で修正せず放置。



 頂いた感想でちょっと誤解が有ったみたいなんで、補足を。


 3Dのゲームとか映像、実写物なら3次元認定されて問題なくその世界へ転移できる設定です。


 作中の儀式は確実に転移失敗で削除されるとかってヤバい罠ではないと、補足で付け加えさせて頂きます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] えーと、漫画とかでもOkになっているけどやっぱり二次元判定なのかな? [一言] 将来的にフルダイブのゲーム出来たら本当に爆売れするのだろうなぁ~。 生きて行けるだけ稼げれば後はそのゲー…
[良い点] 一種のホラー・ひっそり系の都市伝説に分類されるお話。 何かしらの儀式をやったら人知れず消えた・呪われたというタイプで、キャラがいちいち心霊体験に悲鳴を上げたり怒鳴ったりするホラーものより、…
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