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VRMMO 【Original Skill Online】  作者: LostAngel


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第六十三話

【第六十三話】


『全国津々浦々のOSOプレイヤーの諸君、ごきげんよう!株式会社「チェリーアプリ」の社長兼代表取締役の白峰桜だ』


 ああ、ついにこのときが来た。


 五月の初め。VR技術が発展した現代の日本で今、一番遊ばれていると言っても過言ではないVRゲーム、Original Skill Online、通称OSOの第三回公式イベントの告知が、今されようとしている。


 月一で月初から月の中ほどまで開かれる公式イベントが、今月だけないはずない。もちろん何日か前に告知があったが、俺たちプレイヤーは妙にそわそわしていた。


『早いもので、こうして諸君にイベントの告知を行うのは三回目となった。今日まで、約21000名ものプレイヤーがOSOの世界を楽しんでいる。まったく、サーバーがパンクしないかとひやひやものだよ!』


 軽い冗談を交えつつ、画面の中の白峰社長が演説を続ける。


 俺は今、自宅の洋室で生配信を見ている。ハッパとグレープと、珍しくファーストとデュアルもいる。


『さて、早速第三回イベントの内容について話していこう。OSO公式の第三回イベント、その名は……』


 俺たち一同、固唾を飲んで彼女の次の一言に注目する。


 なんだ?なにがでてくる?


『「ドキドキ!見晴らし山キャンプとアウトドアジェム」、だ!』


 キャンプ!そう来たか。


 俺はファーストとデュアルと目を見合わせた。


『早速、内容の説明に移ろう。まず、今回のイベントは今までのとはわけが違う。というのも今回のイベントでは、諸君らの誰もが訪れたことのないとあるスポット、その名も『見晴らし山』の中腹でキャンプをしてもらう!』


 山でキャンプと銘打ってるんだから、そうだろうな。


 ひとまず、予想が当たっているようでホッとした。デュアルも安堵している。


 『フロンティア』である『御霊の平原』を攻略しようとして全滅した後、彼が持ちかけてきたのは次のイベントで共同戦線を張らないか、という提案だった。


 これまでのイベントは既存のフィールドに特殊な魔物が湧くというものだったため、そろそろ趣向の違うイベントが来るのではないか。そうデュアルは予想した。具体的には、イベント用のフィールドで、プレイヤー対抗で競うなんらかの競技的なものが催されるのではないか、というものだった。


 『見晴らし山』でキャンプというのは、まさにドンピシャだ。デュアルはもしそうしたイベントが発表された場合、協力しないかと打診してきていたのだ。


 『見晴らし山』もある意味『フロンティア』だ。誰も訪れたことのない地。であれば、『フロンティア』攻略勢も乗り込んでくることが予想できるし、それに伴ってアットのようなPKプレイヤーも参入してくるだろう。


 十中八九、競争は激化する。それを見越して、協定をあらかじめ結んでおこうというわけだ。


『タイトル内の「見晴らし山キャンプ」というのは、まさにこのことだな!見晴らし山にキャンプを立て、様々なアウトドアにチャレンジしてもらう』


「決まり、だな」


 デュアルが言う。


「ああ」


「俺も異存はない」


 ファーストと俺、トーマも頷く。


「さっきからなんの話をしてるんだ?」


「同盟の話だ」


「またなにか悪いこと企んでるんでしょ」


 なにも分かっていないグレープが質問してきたので答えると、正義の執行者ぶっているハッパが杖を構えて脅してくる。


 頼むから、室内で【爆発魔法】を使おうとするのはやめてくれ。


『ここで言うアウトドアは、イベント期間中にのみ挑戦可能なクエストやミッションという意味合いだ。いくつかあるアウトドア、目標と言ってもいいな、をクリアすると、イベント終了後に「アウトドアジェム」が配布されるという流れだ。大丈夫、今回はジェムを奪い合う必要はないぞ。アウトドアの成功を競ってくれ』


 前回『サクラジェム』を巡って血を血で洗う争い繰り広げた俺たちに向かって、皮肉っぽく言う白峰社長。


『さらに今回イベントを行うスポット、「見晴らし山」についても補足しておく。「見晴らし山」は現在発見されていないフィールドの一つで、プレイヤーの諸君は街にあるテレポートクリスタルから転移可能になる。この放送終了後からな』


 なるほど。イベントが始まってるのに誰も山に到達できないという事態はないと。


 しかも、実際にあるフィールドとは。イベント限定エリアとかではないと。


『とまあ、今私から言えるのはこれくらいだな。アウトドアの具体的な内容や「見晴らし山」のマップなど詳しくは、メニュー画面の特設ページから確認できるようになる。これもこの放送終了後からな』


 UIで目標やマップを確認できるのは親切設計だな。


『以上が、私の伝えたかった内容だ。本配信で聞き逃したところがあれば、後に発表される文書での情報を確認してみてくれ。それでも分からないことがあれば、メニューの「お問い合わせ」から聞いてくれ。それでは諸君、また会える日を楽しみにしているよ』


 いつもの締めを終え、社長のイベント発表配信が終わった。


 俺はメニューを閉じる。


「ひゃあっ!!こうしちゃいられねえ!」


 自由になった俺たちの中で、いの一番にグレープが飛び出していった。


 どんだけイベントが待ちきれなかったんだよ。いくらイベントが今から開催されるとはいえ、もう少し準備をだな……。


「っしゃー!いったるでええっ!」


 ハッパ、お前もか。


 リビングの扉を蹴破る勢いで開けないでくれ。


「ははは、流石ソロ」


 彼らの様子を見て、デュアルが苦笑する。


「まあ、何物にも縛られずにプレイできるのがいいところだよ」


「だな。俺もほぼソロみたいなもんだし」


 俺とファーストが口々に言う。


 俺がソロなのは周知の事実だが、ファーストも一人でプレイすることが多いのか。いつもナナと一緒にいるから気づかなかった。


 まあ、ファーストのクラン『ランキング』は彼とナナしかいないので、ソロが多くなるのも必然か。


「で、俺たちはどうする?」


「当然、『見晴らし山』に行く」


「了解、ボス」


「確かに協力を頼んだのは俺だが、ボスはやめてくれ」


「じゃあとっとと行くぞ、ウスラトンカチ」


「ぞんざいに扱ってくれってことじゃねえよ!」


 なにを漫才してるんだ。行くんなら行くぞ。



 ※※※



 俺とファーストとデュアルはとりあえず、ユルルンのテレポートクリスタルから『見晴らし山』に転移してみた。


「おお……」


 見渡す限りの木々に、緑の山並み。


 気がつくと、山の麓であろう森の中に立っていた。


「なるほど、見晴らしがよさそうだ。それで『見晴らし山』ってわけだな」


「はてさて、なにが待ち受けていることやら」


 ファーストとデュアルもロケーションに満足しているようだ。


「まずは、アウトドアとやらを確かめてみるか」


 安全そうなので、俺はその場でメニューを開いてみる。


 項目の中にイベント用のタブがあるので、そこを選択してアウトドアについて詳しく調べる。


 えーと、なになに……?


「テントを立てて一晩明かそう、バーベキューをしてみよう、カレーを作ってみよう、特製かき氷を作ってみよう、『見晴らし山』の山頂に行ってみよう、の五つだな。今のところは」


 読み上げてみると、意外と少なかった。


 アウトドアについて、順番に説明していくか。


 まずテントを立てて一晩明かそうというのは、マップでいうところの三合目にあるキャンプサイトでテントを張り、そこでゲーム内の夜を明かすというものだ。忙しい人のためか、テント内でログアウトすれば、ログアウト中もカウントされるらしい。


 これは簡単にできそうだな。テントはキャンプサイトのロッジにいるNPCから購入可能とのこと。


 次にバーベキューをしてみようというのは、山で食材を採取、もしくは魔物を倒して入手し、これまたキャンプサイトにあるバーベキューエリア、もしくはロッジで購入できるバーベキューセットで調理をして食事をすれば完了する。


 必要な食材は一部山以外で手に入るものもあるが、大抵は聞いたことのないものだった。『見晴らし山』で集めろということみたいだ。


 三つ目。カレーを作ってみようというのは、バーベキューのカレーバージョンだ。バーベキューの場合と必要な食材が異なり、米と香辛料が難関。どちらも山には存在しない食材のため、既存のフィールドから確保するか、ロッジで大枚をはたいて購入するしかない。


 とはいえ、これはお金を積めばどうにかなりそうだ。バーベキューよりはライト向けかな。


 その次の特性かき氷を作ってみようというのは、これも必要食材が氷とシロップとフルーツに変わっただけだ。フルーツは山に自生しているらしいが、氷とシロップが曲者か。足が速いためか、ロッジでも取り扱っていないらしい。


 カレーよりかは難しめのアウトドアだな。食材をどうしたら手に入れられるかまで考えなければならないデザインとなっていて、面白そう。


 そして最後。『見晴らし山』の山頂に行ってみようというのは、一番分かりやすくとっつきやすい。ひたすら山を登り、山頂を目指せ。


 まあ、山頂にボスの魔物がいるんだろうが、色々考えたり用意したりすることのないこのアウトドアは人気が高そうだ。皆とりあえず上を目指すんじゃなかろうか。


「テント、バーベキュー、カレー、かき氷、登山か。なんか食べる系が多いな」


「しょうがないだろ、魔物がいる世界観でスポーツとかレクリエーションはできないしなあ。俺はてっきり、もっと探索系のアウトドアがあるのかと思った」


「それは今後のイベントに取っておいて、今回は食材の確保で歩かせるつもりなんだろ」


 メタな発言のオンパレードで議論するファーストとデュアル。


「まあそれは置いておいて、早速なにかに挑戦してみないか?はやく動かないとどんどん増えてくぞ」


 気づけば、中央に帰還用のテレポートクリスタルがある広場の大半が埋まりかけていた。サービス開始して間もないときの『始まりの街』みたいな混雑具合になってきている。


 方針を決めて船を動かさなければ、俺たちは確実に人々の波に飲まれてしまう。


「それもそうだな。始めに片づけたいのは……」


「じゃ、手っ取り早く行きますか……」


「俺が希望するのは……」


 まず、どこに舵を切るべきか。


 デュアル、ファースト、俺が異口同音で唱えたのは……。


「「「登山だな」」」


 『見晴らし山』の山頂に行ってみよう、だった。

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