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VRMMO 【Original Skill Online】  作者: LostAngel


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第二十一話

2022/09/20 一部を修正、加筆しました。

2023/08/04 一部を修正、加筆しました。

 【第二十一話】


 『大図書館地下』の地下二階も、一階と同じような手法で走破した。


 本棚の上に乗って周囲を観察し、狼に乗り走って、たまに出会う魔物から逃げる。


 こんな裏技と言ってもいいような方法で、地下三階への階段を見つけた。


 地下三階~地下九階もこの手法で攻略した。


 同じことの繰り返しなので、全部カットだ。


 狼が強すぎる。騎乗したときのスピードが速すぎて、魔物との戦闘を拒否できる。


 おかげで、対して時間をかけずに地下十階まで到達できた。


 まさに捨てる神あれば拾う神あり、だ。


 自宅に軟禁され、不当な労働を強いられていた俺を、天は見放さなかった。


 これは俺が天から与えられた、ただ一回きりのチャンスだ。


 必ずここを攻略して、揺るぎない名誉を手に入れ、真の自由を得る。


 そう決意すると、俺は地下十階の扉を開けた。


「ゥ~…」


 隙間から狼が先行してくれる。


 さて、区切りのいい十階層目だ。


 待ち受けているのは、これまでと同じ光景か、それとも最深部か。


 地下十階は一階から九階までと異なり、広く大きな空間だった。


 床は板張りだが、天井だけでなく、入ってきた手前側以外の三方の壁も見えないほどに広い。


 間違いない。ここが『大図書館地下』の最深部だ。  


「う~ん…」


 目を凝らして奥の方を見ると、豆粒のように小さな人影が見える。


 あれがダンジョンボスか?


 狼を前に位置取らせ、慎重に歩いてそちらに進む。


「ウウゥ~…!」


 狼が唸り声を大きくし、纏う殺気を強める。


 ある程度近づくと、普通の体格をした人が一人、こちらに向かって手を振っていた。


 ローブを着ていて、人相が全く分からない。


 その正体は、敵か味方か。


 ダンジョンボスなのだから、味方であるはずはないな。


「よかった。やっと誰か来てくれたよ」


 声の届く範囲まで来ると、振っていた手を下ろして話しかけてくる謎の存在。


 よく見ると、両手には白い手袋をしている。


 また、フードをしっかりと被っていて顔が確認できない。


「あなたは誰ですか?」


 警戒しながら、敬語で話しかける。


 俺のモットーとして、初対面の人(?)に礼儀は欠かさないというのがある。


 その方が、好印象を持たれることが多いからだ。  


「あなたは賢さって言われて、何を思い浮かべる?」


「はい?」


 両手を肩の高さまで持ち上げながら、目の前の人物が問うてくる。


 いきなりなんだ?


「そう、人間だ。人間こそ賢さの象徴であり、全ての魔物が目指すべき終着点である」


 一切、会話が通じていない。


 今の時代、NPCとですらもっとまともにコミュニケーションができるぞ。


 OSOではプレイヤー以外の全ての生き物に高度なAIが搭載されているから、これは魔物でも言えることでだ。


 だから論理的な言動が期待できないとなると、錯乱したプレイヤーという可能性も浮上してくる。


 タッチの差で、俺よりも早く『大図書館地下』を攻略したソロの玄人?


 いや、そんなはずはない。


 人の形をしているが、『全ての魔物が目指すべき終着点』という発言からも、十中八九魔物だろう。


「だから僕は目指したんだよ、そして到着した」

 

「もう一度訊く。お前は誰だ?」


 目の前の何かは、両手を頭の後ろに持っていきながら話を続ける。

  

「僕?そうだなあ、なんて呼べばいいだろう?」 


 しかしここで、今まで常識とされている大前提がある。


 人語を介する魔物なんて、いるはずがない。


「強いて名乗るとするなら、『ゴブリン・ワイズ』かな」


 そう言ってフードを外す彼、『ゴブリン・ワイズ』。


 その顔立ちは端正だったが、肌は緑色。


 完全にゴブリンのそれだった。


 いたわ。目の前に。


 そう思った、瞬間。


 俺の目の前に、『ゴブリン・ワイズ』が現れた。


「なにっ!?」


 俺とこいつの距離は、数メートルほどあった。


 まさか、狼の全速力以上の速さで距離を詰めてきたのか?


「僕はねえ」


 ゴブリン・ワイズはそう言って俺の首を掴み、そのまま体を持ち上げる。


「人間になったんだ。だから…」


 俺はすかさずワイズの腹に腕を入れようとするも、それ以上の速さで床に叩きつけられる。


 やはり速い!


「…『オリジナルスキル』を持ってるんだ」


 後頭部を激しく強打する。


 あまりの衝撃で、視界が揺らぐ。


 俺たちプレイヤーに与えられるスキル、『オリジナルスキル』を持っているだと!? 


 まあ、『悪魔』も持っていたし不思議なことではない、のか?


「グラアァッ!」


 スピードが止まった好機を見て、狼が跳びかかる。


 しかしワイズは俺を掴む腕を放し、最初いた位置に移動した。 


「僕は人間なんだ!努力の末、僕は天に選ばれたんだ!」


 奇遇だな。俺も今日、天に選ばれたんだ。


 自由になった俺は、すっくと立ち上がる。


 先ほどの攻撃は効いたが、意識を失うほどではなかったみたいだ。


 床をちらと見ても、漫画でよくあるような亀裂は走ってなかった。


 今度は油断しない。


 やつのスキルはずばり、『瞬間移動』だ。


 恐らく、視界に捉えた位置に瞬間的に移動するか、転移するスキル。


 移動の場合は、障害物が間にあると成功しないとか、筋肉に負荷がかかるとか、そんな感じの制約がありそうだ。


 転移の場合だと制約は…、思いつかない。


 よって、やつのは『移動するスキル』と考えることにする。


「どっちからにしようかな?」


 今度は狼の眼前に瞬間移動するワイズ。


 そして避ける暇も与えず、狼を思いっきり蹴り飛ばす。


「ギャン!」


 しかし座標を指定するスキルなのに、杖を必要としないのか。


 これも、魔物である『悪魔』と同じだな。


 なので、やっぱりこいつは魔物の範疇から抜けられていない。


「やめろ、魔物風情が」


「あ?」


 こちらを振り向き、怒りを露わにするワイズ。


 魔物に魔物と言って、何が悪い。


「僕は人間だ!」


 よくよく考えると、転移するスキルであるのならば、俺がここに入った瞬間に転移すればいいはずだ。


 だが、そんなことはしなかった。


 それはなぜか?


「こいよ、魔物」


 何故なら、やっぱりこいつのスキルは『移動するスキル』だからだ!


 天に愛されていたのは、俺だったようだな!


「殺す!」


 再び、俺の目の前にテレポートするワイズ。


 来ると分かっていれば、こっちのもんだ!


 狼との戦いで研ぎ澄まされた魂を引き抜く技を、ここで発動する。


「…!」


 即座に手を突き入れる。


 こいつは蹴るときに右足を使う。


 だから半身になり、左へ体を傾けて蹴りを躱し、右腕を腹にめり込ませる。


「…っ!」


 即座に魂を掴む。


 ワイズが視線を下ろし、目を丸くする。


 そのリアクションで、充分時間が稼げた。


 奥にある魂をしっかと握りしめる。 


 知能は蓄えたようだが、大きさも重さも至って普通のゴブリンだな。


「!?」


 即座に手を抜く。


 焦ったワイズが目を跳ね上げ、俺の後ろのどこかの地点へと焦点を合わせる。


 瞬間移動で逃げるつもりか。


 だが、俺の方が速い。


「っ!!」


 力を込めて息を飲む。


 わずかな時間の中で、俺は腕を素早く動かし魂を引き抜いた。


 一連のアクション、トータルで一秒あったかどうかくらい。 


 急激な動きに右腕が悲鳴を上げるが、何とかもってくれた。


「……」


 先ほどまでの威勢から一転。


 魂を失くした『ゴブリン・ワイズ』は呆気なくくずおれた。


 勝った。


 これで少なくとも減刑。


 いや、逆転で無罪になるか。


「ふう」


 勝利を確信し、集中を解く。


 後はトドメを刺して、『大図書館地下』をダンジョンでなくさせるだけ。


 初期装備の短剣を鞘から抜いた次の瞬間。


 俺は背後ににじり寄ってきていた狼のトップスピードの突進を食らって、呆気なく死んだ。


 どう、して? 


 急に暇になったので、リスポーンするまでの一分間、頭を回転させて考える。


 あ。


 もしかして、俺がワイズに言った『魔物風情が』というワードを聞いて、自分も下に見られていると思ったのか!?


 えええ?


 まさに、驚き桃の木山椒の木。


 狼は賢いと聞くが、気位が高いにもほどがあるだろ!


 ダンジョンボスは実質倒したのはいいが、トドメを刺せずに放置してしまった。


 それも、多種多様な魔物が徘徊する迷宮の一番下。地下十階層に。


 ………。


 どうするんだ、これ?

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