幸せって何だっけ。
幸せって何だっけ。
不意に訪れるこの感情。
笑顔が似合うあの子は言う。
「美味しいもの食べてる時だよ〜。」
「好きな人といる時‼︎」
そんなのわかるよー!!!!!!
でも心にぽっかり穴が空いたみたいに、急に不安になる時、あなたにはない、、?
29歳独身。
彼氏はなし。
これといった夢もなし。
ただ毎日を生きるのに必死で働いている。
「何で私ってこうなんだろう。」
出勤時間よりすこぶる早く家を出た私はまだ薄暗い外の空気を思いっきり吸い込んで、そう声に出した。
いろんな話を読んだ。
自己啓発本、唱えれば夢は叶うなんてうたう怪しい手帳なんかにも手を出した。
10代の頃は全てがキラキラしていて、何をしても許される、そんなふうに思っていたこともあったっけ。
実際にアラサーになって思うこと。
もっと冒険してればよかった。
もっとこの人が大好きだー!って感情を大事にしてあげればよかった。
私はもともとすこぶる引っ込み思案で、人見知り、超がつくほどのあがり症。
小学生の時も慣れた友達について行くのがやっとで、中学の思春期を迎えた頃なんか、男の子と話すことなんて恥ずかしくて、怖くて出来なかった。
高校、大学と進学し、うまく生きるための会話術は上手くなったつもりだ。
ただ八方美人って言われることが多くなったけど。
キラキラ輝いて見える人はもう生まれた時から作りが違うんじゃないかとか、人の心を読む能力があるんじゃないかとか、考えた時期もあった。
そんなの考えてたからきっと暇だったんだろう。。
そんな私も、大学卒業と同時に東京から地元に帰り、今は安月給ながら1人で生活をしている。
「決めた!今日仕事が終わったら宝くじを買う!」
突如思い立ったのは、昨日のテレビで宝くじで◯◯億円当たりました〜と言う番組を見たからだろう。
貯金も0円、借金もある私はお金が喉から手が出るほど欲しかった。
そんな憂鬱な気分を吹き飛ばすかのように、
「よし!今日も仕事頑張るか〜」
気合を入れて車に乗り込んだ。
職場に向かう道すがらお爺ちゃんが神社に座り込んでいるのが見えた。
少し気になったが、まだまだ職場では若輩者。先輩より先に行かなきゃという無駄に焦る心には勝てなかった。
「はぁ〜。やっと終わった。もうやだ。大富豪と結婚したい。」
仕事終わりのお決まりのセリフを言いながら駐車場へと向かう。
今日も1日何に謝ってるのかもわからないまま、時間はすぎ、1日が終わった。
早く帰ろう。ご飯はコンビニで買おうかな。なんて考えながら車を走らせる。
「え!あのお爺ちゃんまだいる!」
朝と全く同じ場所に同じようにお爺ちゃんが暗い中座っているのが見えた。
普段だったら、変な人かもと声を掛けることはしない私だが、なんだか暗闇の中座り込むお爺ちゃんの姿と、29歳にもなって好きが何か分からず、男に騙され借金まで作った自分の姿が重なり、無性に泣きたい気持ちになった私は咄嗟に道端に車を停め、お爺ちゃんの方へと足が動いていた。