悪役令嬢はソロモン皇帝の話を聞く
*本日二度目の更新です。
「俺がマルバスではなく、この国の皇帝ソロモンであることは知っているな?」
至極当然のように言われて、私たちは躊躇いながらも頷いた。既にクリスがこちらの事情は説明済みなのだろう。
「どこから話したらいいのか分からないが・・・」
と始めたソロモンの話は驚くべきものだった。
*****
今から16~17年も昔の話だ。
マルバスは皇帝ソロモンの右腕として辣腕を振るう魔術師だった。
仕事では冷徹なマルバスも、家では愛妻を溺愛しているという噂はソロモンも聞いたことがあった。
しかし、溺愛という枠を超えて、妻を束縛し過ぎて病的な精神状態になっていたことにソロモンは気がつかなかった。
マルバスは独占欲が強く、不安の種を全て排除するために妻と外部との接触を完全に封じるようになった。更に異常な嫉妬心から来る疑念や苛立ちを彼女にぶつけ、密室で妻を虐げる毎日が続いていたという。
その頃、アビントン王国との和平条約が締結されることが決まり、ソロモンの皇宮でアビントン王国からの正使を迎え、調印式が行われることになった。
それに合わせて様々な行事やレセプションが予定されていたが、ソロモンは未婚で宮殿の華となるような女性がいなかった。ソロモンはマルバスに妻を同伴して行事に出席するように命じた。それが大事に繋がるとはまるで予想もしていなかったのだ。
監禁されていた妻は、その時が逃げ出す唯一のチャンスだと思ったのだろう。
関連行事が全て終わり、アビントン王国の代表として訪問していたリッチモンド公爵が帰途に着いた頃には彼女の姿は宮殿から消えていた。
マルバスの妻であったフラウは当時妊娠していた。マルバスは狂ったように彼女を探し回ったが、杳として消息が知れないままだった。
しばらくしてマルバスはソロモンに辞職を願い出た。妻を探す旅に出ると言ったマルバスの顔には、何があっても妻を見つけ出すという固い決意が刻まれていた。
ソロモンがその後のマルバスの消息を聞いたのは、3~4年後のことだった。
マルバスの妻のフラウは、アビントン王国の貴族であるリッチモンド公爵の愛妾になっていた。公爵は帝国の国境近くにある小さな精霊族の村に彼女を隠していた。フラウは精霊の血を引いていたので、その方が目立たないと判断したのだろう。
それを知ったマルバスは激怒した。そして、彼は妻のフラウを殺し、その後自殺したという。
しかも、マルバスはたまたま周囲に居た大勢の精霊や人間をも殺戮した。ソロモンが騒ぎを聞きつけて現場に辿り着いた時には、多くの死骸が地面に横たわっていた。
そして・・・普通の魔力の痕跡だけではない、異常に強力で不吉な闇の痕跡も明確に残っていた。
マルバスが死んだ場所には彼が描いたであろう魔法陣が残っていたが、その魔法はこの世界では禁忌とされる忌まわしいものだった。
それは異世界から恐ろしい魔物を召喚する魔法陣。
ソロモンは戦慄した。この気配は単なる魔物ではない。この世界を殲滅する意思と力を持った何かがこの世界に入り込んだことが分かったからだ。
ソロモンはこの世界では無敵の最強魔術師だ。しかし、他の世界から来た魔物に対してはどうか分からない。
ソロモンは悩んだ。異世界の魔物については前例もなく、どうしたら良いのか分からない。
元々大神官だった彼は創造主、神からの詞を求めることにした。つまり、神託を仰ぐことにしたのだ。
ソロモンは宮殿に戻り、特殊な祭壇を準備し大昔から伝わる神託の儀式を始めた。
香炉に火を灯し、香をくべ、祭壇の前に跪いて神託を求める祈りの言葉を紡ぐ。
・・・最後に神託を求めたのは大昔のことだった。
懐かしいな・・と時も弁えず、ふっと笑みが浮かぶ。
当時も最強だった神官ソロモンは、今後どのように生きたら良いか迷っていた。
ただひたすら神に仕え続ければ良いのか?最強の力を行使し、為すべきことがあるのか?
それを知るためにかつて神託の儀式を行ったのだ。
すると儀式の最中に神の詞として、微かな会話のようなものが聞こえてきた。脳の奥に直接響いてくる声だ。普通の音とは違う。神からの交信だとすぐに分かった。
***
「・・・えー、ちょっと盛り過ぎかなぁ」
「いいんじゃね?基本隠しキャラだし、ネットで話題になるかもしんない」
「ま、そっか」
「ソロモンは一代で帝国を築く精霊の血筋の最強キャラだろ。不老不死だし、最高じゃね?」
***
それっきり、何も聞こえなくなった。
しかし、神の啓示ははっきりしていたように思う。俺の為すべきことは帝国を築くことなのか。差別を受けてきた精霊族を守るためにも、それは良い選択肢に思えた。
それが大昔の神託だった。
再び神意を問う日が来るとは思わなかった。しかも、信頼していた部下のマルバスの後始末のために・・・。
憂鬱な気持ちで神託の儀式に臨むソロモン。
集中力を高めると再び声が聞こえてきたが、今回は会話ではなく独白のような声だった。
***
「・・・あー、またバグだ。なんだこれ?ちょっと意味不明なんだけど」
そして、深い溜息が聞こえた。
「デバッガー雇うか・・でも、これ再現性がないんだよな。こんなにランダムにバグが出ることってあるか?あー、もう嫌だ。しかも、なんかモブが訳の分かんない動きしてんだよ」
しばらく間があいて、更に溜息が聞こえた。
「修正しろったって・・・。こんなんじゃ修正のしようがないし。入れてない台詞が出るってありか?まじで・・・」
また間があいて、何かを飲む音が聞こえた。
「・・・飲まずにやってらんねーよ。日曜の昼間から在宅勤務なんてよ!休日出勤になんのかなー。あーあ、これ、やっぱウィルスかもな。参ったな・・・。プログラム全部破壊されるかもしんねー」
「・・・何を言っているのかさっぱり分からない」
そんな言葉がソロモンの口をついて出た。
「え!?誰!?なに?幻聴?頭ん中にハッキリ聞こえた。やべー、飲みすぎか」
神がパニックになっている様子が感じられたが、ソロモンはそれ以上に驚いた。
俺の声も神に届くのか?
「神よ・・・。私はソロモンと申します。神託を頂きたい。私の片腕だったマルバスが禁忌の術を使い、異世界からこの世界に邪悪なモノを召喚しました。この世界を滅ぼしかねない存在です」
「ソロモン?!おい!最強のソロモンか?!まじか?異世界から召喚?・・・ちょい待て。マルバスって確か墓イベントの墓にあった名前だな。バグは確かに・・・その辺からおかしくなっていったような気がする。ちょいまて・・・」
ソロモンはそのまま待つことにした。カタカタという軽い音だけが聞こえる。
「・・・嘘だろ?ありえねー・・・ありえねーが、何故かマルバスの墓から鬼が出てくる。『おにばなし』の鬼が何故かラブキューに入ってる。スチルにも見切れてるし・・・。訳わかんねー・・・・。まじでプログラム自体を潰さないとまずいんじゃねーか」
「その鬼というのが異世界からの魔物か?潰すというのはこの世界を潰すということか?私がその魔物を排除すれば、世界は救われるか?」
ソロモンの質問に神は一瞬戸惑った様子だった。
「・・あ、ああ。ソロモンがそのバグっつーか、鬼をやっちゃってくれれば、そりゃ助かるわ。ソロモンなら最強設定なんで、どんな鬼でもやっつけられると思うし。バグを見つけて退治してくれる?まじで?」
「そのバグ・・鬼というのはどこにいる?」
「それがなー。多分隠れてるんだ。モブ関連だと思うんだよね」
「もぶ・・?」
「えーっと、主要キャラじゃない人たち。ヒロインのミア、攻略対象のレオポルド、クリストファー、ノア、ジェフリー、あと悪役令嬢のソフィア以外ほぼ全員かな」
「・・・数が多すぎないか?何人いると思っておいでか?」
「・・・確かにな。傾向としては女だな。多分女の周りにいるか、女に化けてる確率が高い。ソロモンは魔力が高いから鬼の気配が分かるんじゃないか?」
「俺は検知器じゃない・・・」
ソロモンは丁寧語を使うのを止めた。
「あ、あと、舞台はアビントン王国の王宮だな。傾向的にあの辺にいると思う。アビントン王宮のモブの女たちだ。さすがに目の前にいたら分かるだろう?」
「そりゃ分かると思うが・・・。王宮の女たちを一人一人探すのか・・・」
ソロモンは暗澹たる気持ちになった。
「あ、あと、ストーリーを大幅に変えようとする奴がいたらバグの可能性が高い」
「ストーリー?」
神はゲームの筋書きをソロモンに伝え、更によくあるパターンとして転生悪役令嬢や転生ヒロインが筋書きを変える可能性があるが、それらの変化は基本的に世界の滅亡へ導くものではないと説明した。
そして、ソロモンはマルバスという偽名を使ってアビントン王国の王宮に入り込み、鬼(=バグ)を探し始めた。
*****
あまりの話に私はミアと視線を交わした。ゲームプログラマーというか、まさにクリエイターと交信したのね。この人は・・・。
クリエイターが作るストーリーの中の時間と現実の時間は一致しないだろう。例えば、クリエイターは何十年にも及ぶストーリーを1時間で作ることもできる。ソロモンにとっては大昔の交信から時間が経っていたとしても、前回も今回も同じクリエイターチームと交信したに違いない。
そして、あまりに膨大な情報量を必死に処理しながら、私は一つのことに気がついていた。
多分レオもミアも気づいていて、何も言えずにいる。
つまり、今の話を聞く限りクリスは・・・・クリスの本当の父親は・・・
私は彼の方を見ることが出来なかった。彼の気持ちを考えると何と言葉を掛けたら良いかも分からない。
「・・・僕の父親はリッチモンド公爵ではなく、魔術師マルバスだったということですね」
クリスの落ち着いた声が部屋に響いた。
「そうだな。お前は母親似だが、右目の緑はマルバスの瞳の色だ。フラウの子供は巻き込まれて死んだと思っていたが生きていたんだな」
ソロモンの言葉を聞いて、クリスはくるりと私たちから背を向けた。
「少し・・・一人にして下さい」
そう言うとクリスは部屋から出て行った。
私たちは溜息をついた。彼の気持ちを考えると胸が痛い。
気まずい雰囲気のまま、私たちは部屋に取り残された。
しばらくの沈黙の後、私はずっと抱えていた疑問をソロモンにぶつけてみた。
「ソロモンはどうして王妃の下で働いていたの?どうして令嬢達に媚薬をバラまいたの?」
「俺は最初あの王妃の中に鬼が隠れているんじゃないかと疑ってたんだ。鬼は欲深い人間が好きらしいからな。でも、違った。ただ、イザベル王妃は俺の顔を大層気に入ってな。王宮で働かないかと誘われたんだ。俺も渡りに船だった。王宮の女たちの中から鬼を見つけるには王宮にいないといけない」
「媚薬を口実に使って?いかがわしいことをしてたんでしょ?最低」
というミアの言葉にソロモンの顔色が変わった。珍しく動揺しているようだ。
「ち、ちがう!媚薬は全部偽薬だ。大体砂糖か蜂蜜か、化粧品に混ぜたのは適当に色をつけた水だな。全く何の効能もない。幻惑の魔法を使って多少誤魔化しただけだ。ただ、媚薬だと思い込んだせいで大胆な行動を取れた娘もいたようだ。俺は媚薬を配っていることを大っぴらにしていた。その方が女たちを集めやすい。男たちも媚薬の噂は聞いていただろう。令嬢から媚薬(実際は偽薬だが)を貰いたい男は喜んで食べて上手くいったろうし、嫌な者は食べずに終わっただろう。俺はただ女たちに直接会って鬼が憑りついていないか確認したかったんだ」
「・・・偽薬?」
私たちは完全に拍子抜けした。
「俺はそもそもポーションマスターではないし、ポーションマスターになる必要もない。便利だから王宮ではそう名乗っていただけだ」
ソロモンの言葉に毒気を抜かれたらしいレオは
「ポーションマスターではない?じゃあ、俺に盛った毒は?」
と尋ねた。
「お前に盛った毒は俺が用意したものじゃない。俺だったらしくじるはずがないだろう。王妃から頼まれはしたが・・・。やはり偽薬を毒だと言って渡した。全く効果がないので、他の薬師から毒を買ってお前に盛ったのだろうよ」
なるほど。でも、レオの命が狙われているのを知っているんだったら、助けてあげて欲しかった。今更言っても仕方ないけど。ソロモンは規格外過ぎて、普通の人間としての感覚を求めても無駄なのかもしれない。
「最初はアビントン王国を国ごと全部消してしまおうかと思ったんだ。そうしたら必然的に鬼も消えるだろう?しかし、神はそれだと結局世界ごと消し去ることになると言われてな。出来るだけゲームの筋書きを守りながら、鬼だけ退治して欲しいなどという勝手なことを抜かしやがった」
うん、やっぱりソロモンの感覚は普通じゃない。
「筋書きを大きく変えるようなキャラクターには注目しろと神に言われたんだ。それで・・・ああ、あのレオとソフィアの婚約発表の日だな。王宮に行ったら、高官の一人がソフィアの両親と結婚式の打ち合わせをするというじゃないか。しかも、ソフィアの希望で魔法学院に入学する前に結婚式を挙げるという。これは明らかに筋書きから外れている。だから、ソフィアに鬼が憑いていないかどうか、一応確認することにしたんだ。まさか神の世界から転生してきたとは予想できなかったが・・・」
ああ、なるほどね。それであの日私は初めてソロモンと遭遇したのか。
「何故マルバスって名乗ったの?」
つい素朴な疑問が浮かんだ。
「ああ、マルバスが魔法陣で鬼を呼び出したから、マルバスを名乗っていたら鬼が近づいて来るかと思ったんだが・・。そんな簡単には行かないな。一度リッチモンド公爵からジロジロ見られたことがあったが特に何も言われなかった。まぁ、名前に深い意味はない」
あっけらかんとソロモンは言った。リッチモンド公爵は当然マルバスのことを知っていただろうが・・・同姓同名の別人とでも考えたのかもしれない。
「ノーフォーク子爵家に憑りついた黒い靄が鬼なのよね?」
「そうだ。ソフィアに初めて会った時、神の世界から来た悪役令嬢と異世界から来た鬼は関係があるかもしれないと思ったんだ。だから、念のためソフィアの危機に連動して発動するように魔法を設定した。魔法が発動したのを感じて、すぐに転移したが間に合わなかった。鬼がそこに居たことはすぐに分かったんだが、奴は逃げ足が異常に速い。いつも残り香だけ置いて姿をくらましてしまう」
ソロモンは悔しそうだ。
「あの黒い靄は私の体と意識を乗っ取ろうとしたの。それは、やっぱり私が悪役令嬢として戦争を引き起こすことを狙ってのことかしら?」
「分からん。いずれにしても俺は戦争など起こす気はない。ただ、一方的に我が国に攻め込んできた場合は別だ。国を防衛するために戦うことは辞さない」
ソロモンははぁっと息を吐いた。
「史上最強の魔術師ソロモンと戦って、全てを破壊して殲滅することが鬼の目的なのかもしれないわね」
ミアが真剣な顔で鬼にまつわる“わらべうた”を口遊んだ。日本人なら誰でも聞いたことがあるメロディだ。
「『おにばなし』っていうゲームでは、この歌で鬼を惹きつけるのよ。とにかくダークでホラーな話で、人間が心の闇に囚われて戦闘本能しかない鬼になるの。ヒロインを巡って鬼が血みどろになって闘い最後は誰も残らないっていう・・・。最終的には全てを破壊して終わるバッドエンドのゲーム・・・」
へぇ、そんなゲームがあるんだ。怖・・・。
「ああ、そうか、ミアも転生者だからな。神の国のゲームには詳しいのか」
ソロモンは心なしかミアに対しては表情が柔らかくなる。
「・・詳しいっていうか、他にやることなかったしね。・・って、あんたはもう知ってるでしょ!」
とミアがソロモンを睨みつけると、彼は苦笑いをして
「確かにな・・・あれは本当に俺が悪かった」
と、ちゃんと頭を下げて謝った。
「まぁ、いいわよ。今まで人に見せたことがない部分だったから驚いたけどさ」
ミアは投げやりに言うが、多少機嫌が良くなったような気がしないでもない。
どことなく二人の間だけに通じる微妙な雰囲気を感じるなぁ。やっぱりソロモンがミアの心の奥深くまで覗いたせいだろうか?
その時、レオが真面目な顔で
「俺はアビントン王国に戻ることにする」
と宣言した。
「黒い靄・・いや・・鬼か。鬼がどこに隠れているか探るつもりだ。ノアやジェフリーが頻繁に連絡をくれるが、父上の様子も王宮で何が起こっているのかも分からない。気がついたら、エドワードを中心に主戦派が王宮を支配している。エドワードは昔から話が通じないが、今は更に状況が悪い。あいつが国王で全権を握っているからな・・・。このままだと本当に戦争が始まってしまう」
と悔しそうに歯がみするレオにソロモンが頷いた。
「そうだな。それがいいだろう。参考までに言うと、エドワードは前王のように鬼に操られてはいない・・と思う。前王は鬼のせいで様子がおかしくなっても、俺が王宮に行くとすぐに元に戻った。周辺の人間も同様だ。鬼の気配は微かに感じていたが、近づくとすぐに消えてしまう。まるでいたちごっこだった」
ソロモンがうんざりしたように頭を振り、言葉を続けた。
「しかし、今回は違う。エドワードが国王になってから王宮に行ったんだが、あいつの態度は変わらなかった。ただ、俺はお払い箱になった。イザベルとエドワードから次に王宮に足を踏み入れたら殺すと脅されたよ。まぁ、殺されるつもりはないが、無用な騒ぎを起こしたくはない。王宮で調べるとしたらレオが適任だろう」
「僕も一緒に戻る」
と部屋に入って来たのはクリスだ。
「父上に直接会って聞きたいことが山ほどある」
結局、レオとクリスがアビントン王国に戻り、私とミアはここに残ることになった。
「・・・ごめんな。せっかくソフィアと一緒に居られて、すげー、幸せだったんだけど・・。でも、必ずソフィアのところに戻ってくるから」
ここを離れる前夜、レオは私の頬を両手で包みながらそう告げた。
「大丈夫。どうか気をつけて。無茶はしないって約束してね。私は・・レオが居ない世界で生きていく自信がないから・・」
情けない本音を漏らすと、レオが嬉しそうに私に口づけをした。ゆっくりと私の唇を味わうような口づけに、心臓が跳ねる。レオの舌を感じて、私も不器用なりに必死で返そうと頑張っているうちに、二人で夢中になってお互いを貪り合っていた。
「・・・ああ、離れたくない。ソフィアに触れると離れたくなくなる。抱きしめて、そのまま腕の中に閉じ込めたくなって・・・」
息を荒くしたレオだったが、気合を入れるように自分の両頬をビタンと叩いた。
「・・・俺たちが将来幸せに暮らすためにも戦争を起こしてはいけない。俺たちの子供が安心して暮らせる世界を作ろう!」
と自分に言い聞かせるように宣言した。
こ・・こども。まさかレオがそこまで考えているなんて思わなかった。でも、そうだ。彼はいつも私のことを一生懸命考えてくれている。
「レオ、どうか気をつけて。無事に戻って来てくれるのを待ってるから」
寂しい気持ちを押し殺して笑顔で言った。
レオとクリスは残していく私たちのことを心配したけれど、ソロモンが私たちの身の安全を保証してくれて、二人はアビントン王国に戻っていった。




