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未来へ

作者: Bi₂O₃

 これは、未来に向けたメッセージだ。このメッセージをいつ、誰が見つけるかはわからないし、誰一人として見つけることはないのかもしれない。もし見つけたとして、未来が変わる保証はない。だが、誰かが見つけ、そして読んでくれることを祈ってこのメッセージを遺す。同じ過ちを、二度と繰り返さないように。

 結論から言うと、世界は滅亡した。というより、君達から見れば世界は滅亡する予定だ。君達自身の手によって。


 これを読んでいる者達の文明レベルがどれ程のものかはわからないが、我々の文明は非常に発展していた。人間の記憶をデータ化することもできたし、人体の健康は体内に埋め込まれたナノロボットによって制御されていたし、休日には他の惑星へキャンプに行くのもよくあることだった。アンドロイドの個人制作が小学生の夏休みの自由研究の定番だった。それくらい発展した文明だったが、ある日あっさりと崩壊した。


 私はかつて、人工的にビッグバンを再現する研究に携わっていた。ビッグバンとは、宇宙が生まれる際に起こった大爆発。即ち、宇宙の誕生を再現していたということだ。勿論、そんなことをすれば宇宙全体に影響が及ぶことくらい誰だってわかる。だから、我々は宇宙の外にある何もない空間でビッグバンの再現をしていた。ビッグバンは、物質や宇宙を創り出すだけでなく、物理法則そのものを創り出すものだ。そのため、別の宇宙ではこことは物理法則が違う。そして、宇宙外の何もない空間には物理法則も存在しない。だが、我々は何もない空間に干渉する方法を見つけだしていた。君達の文明レベルが未知数であるためその方法についての記述は控えるが、それによって我々は宇宙外でのビッグバン実験が可能になったのだ。

 その研究の中で、我々はこの宇宙と全く同じ物理法則を持つ宇宙を誕生させることに成功した。我々はその宇宙を「フューチャー」と名付けた。全く同じ物理法則の宇宙であれば、外側からの干渉がなければ我々のいるこの宇宙と全く同じ歴史を刻むこととなると考えられた。このフューチャーこそ、君達が生きる宇宙のことだ。


 フューチャーが創られてから3年程経った頃、我々は失敗をしてしまった。第38回目のビッグバン実験の時だった。この宇宙には質量を制御する粒子が存在するのだが、この粒子が発生するエネルギー場が実験の際に破壊されてしまったのだ。

 このエネルギー場が破壊されると、宇宙中のあらゆる物質が持つ質量が崩壊し、物理法則が崩れてしまう。物理法則が崩れるということは、それ即ち宇宙そのものの崩壊を意味する。つまり、我々は文字通り世界を滅亡させてしまったのだ。

 物理法則が崩壊する直前、専用の船に乗り込み宇宙外への脱出に成功したが、我々の宇宙は一瞬の内に消滅してしまった。綺麗に砕け散るでもなく、本当に一瞬で消えてしまったのだ。そうして我々は、君達が生きる宇宙、フューチャーにこのメッセージを遺した。


 我々の仮説が正しければ、フューチャーには太陽が生まれ、地球が生まれ、その地球に生命が生まれ、人類が誕生するはずだ。そして、人類はまたいつか全く同じ過ちを犯すだろう。

 だが、先程も述べたように、それは外側からの干渉がなければの話だ。我々が遺したこのメッセージが、未来を変えるかもしれない。これを覚え、そして伝えて欲しい。第38回ビッグバン再現実験の際、決して質量のデータ化をしてはならない。それが、全ての破壊に繋がる。

 これを読む君達に託した。伝えてくれ。未来へ。

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