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純文学

おねぇ

作者: 幸田遥

これは『なろうラジオ大賞2』参加作品です。


 我輩はおねぇである。ち○こはまだある。




 我輩は、男として生まれて来て以来、『バナナ』が大好物だ。



 安くて美味い。


 全てはその一言に尽きる。



 バナナの叩き売りの実演販売の、威勢良く声を上げるガタイのいい売り子に憧れたものだ。我輩もいつか、バナナを叩いて売りたい、と。



 あのバナナを、ついつい買ってしまう主婦の気持ちもよくわかる。すごく美味しそうに見えるのだ。



 そう。我輩も買ってしまった。3日ほど前のことだ。





 今、我輩の手元には、バナナが一本ある。


 そして、我輩は、今からこのバナナを食べる。




 先端に突出した果柄をペキリと折る。すると、白く柔らかなバナナの実がコンニチワした。


 我輩はそれを見て、ゴクリと喉を鳴らす。

 半ズボンの男子小学生が、三角座りをする時にチラリと見せる真っ白なブリーフ。それを見てしまったような、そんな気分だ。



 思い起こせば、我輩が男子小学生の時には、あのラッキーブリーフにドキドキしたものだ。あの時は言えなかったが、今なら言える。我輩はブリーフが大好物だ、と。




 果柄を摘まみながら、バナナの皮をスルリと剥いてゆく。しかし、丁寧に、焦らず、ゆっくりと剥かねばならない。それは、男子小学生が、ブリーフの上から海水パンツを穿き、後に白いブリーフを抜く、『抜きパン』を彷彿させる。


 そう、決して焦ってはならない。



 思い起こせば、我輩が男子小学生の時には、友人の着替えシーンをドキドキしながら横目で見ていたものだ。あの時は言えなかったが、今なら言える。我輩は『抜きパン』が大好物だ、と。もちろん、アクシデントも大歓迎だ!



 我輩は、真っ白な実を曝け出したバナナの一面に、もう一度ゴクリと喉を鳴らす。やはり白いブリーフというものはいいものだ、と白いバナナの実を見て想う。


 この感情はきっと、正常であろう。



 我輩は、親指と人差し指で、先端に残った皮を摘まむ。そして、横の皮を剥いてゆく。


 次第に露わになってゆく真っ白なバナナの実に、我輩は、何故か背徳感を感じていた。



 皮に守られなくなった果肉。

 柔らかな質感。

 洗い立てのブリーフのような白さ。


 目の前でズル剥けにされたバナナを眺め、我輩は涎を拭う。




 我輩は、バナナのツンと尖った先端を覆うようにして口に咥える。そして、下唇をバナナに添わせ、ゆっくりと力を加えた。




 ホロリ


 バナナは先端付近で折れ、その欠片が口の中に落ちる。




 我輩は、舌の上で、それを優しく受け止めた。


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― 新着の感想 ―
うわぁ。とっても面白かったです。 最初から爆笑してしまいました。 笑いすぎてお腹痛いです。  ラジオで聞いてみたいですね! 楽しく拝読させていただきました。 ありがとうございました(^^)v みこと…
[気になる点] 色々すごいグルメ短編ですね。 [一言] ひとつの果物に絡む憧憬を覚えた頃の回想。三島由紀夫の何かを読んだ時を思い出しました。( ˘ω˘ )
[良い点] バナナを食べているだけなのに、なんでしょう、この妖しい魅力は……。 「おねぇ」と「バナナ」のふたつで、これだけ独特な世界を構築できること。凄いの一言に尽きます。 頭を殴られたような衝撃…
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