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Zoom Out

作者: 狭門潜り

内容が少々煩雑かつ難解ですが、是非最後まで追って見てください。

幸か不幸か、私(我々、は不確かなので適当でない)は思索を許された存在であるようだ。それを許しているのが、私の思索を超えた、神のような超存在なのか、はたまた自分自身、他の自分なのかはさて置いて、以上の事は紛れもなく、私にとって事実である。

さて、ここからは私の生い立ちについて、語ろうと思う。私は、おそらく他の生物もほとんどがそうだと思うのだが、生まれた時の記憶を持ち合わせていない。気付いたら、家族という少人数の共同体で、同じ家に住み、同じ釜の飯を食らい、共同体全員で、年長の男性が父、その男性と仲睦まじげな年長の女性が母、そして、これが非常に癇に障るのだが、私よりたった一つ年上なだけ(年子と言うらしい)で偉そうな女性が姉という役割をそれぞれ演じている。癇に障るというのは何故か分からないが、とにかくこの姉は癪なのだ(これは理由に説明がつかない。学問なる体系では、無いところからは何も出てこないというが、何も無いところから、沸沸と感情が立ち上ってくる)。

また、共同体の在り方は多種多様で、社会とかいう、私と同じ生物の殆どが所属する巨大で不自由で、汚れた共同体から、私と同世代の、ステレオタイプに拠れば未熟らしい、子供と呼ばれる面々が、先程私の感情を説明できなかった学問とやらを学ぶ学校なる共同体まで、選り取りみどりのなし崩しである。

そんな共同体から共同体への移り身を今日も今日とて、私は巧妙に(驕って聞こえてしまうが巧妙と言う他ない)こなしている。ところで、我々は思春期なる過程を今経験しているそうだが、すると、抗い難いものにこそ、反抗したくなる心の働きが生じるようだ。例えば社会だとか、大人だとか、そういった類にである。

私が思うに、彼等は嘘吐きだ。思春期にいる彼等が嘘吐きなのか、その心の働きの説明が嘘吐きなのか、はたまた共になのか(これもまた共同体と言ってやまないだろう)、何れにせよ、抗い難いものに抗うのであれば、既知に抗うのは半端者のする事だ。未知に抗わなければ、彼等は到底、学問だとか、論理だとかに顔向け敵わない筈である。

話を戻そう。と言っても戻らない。なぜならきっと、私を弄ぶ物書きは、そろそろ私に答えを教えようとしているらしいからである。私の冷めた、最早凍えそうなまでの客観視は現実を伴ってきている。まだ、手記の途中で、折合いが悪いことなどお構い無しである。ここまで来て、先程の私の愚考も、単にどうやらいるらしい物書きのシナリオ通りであるようだと分かる。分かるというのは、私がその前の事を踏まえて思考したからなのか。それとも分かるというシナリオが存在するからなのか。この問は終わらない。だから私は、これが他の存在による思考の映り込みでしかない、鏡でしかないと知って尚、こうするより他にないのである。

「きっとお前も、鏡でしかない!」


































と、まあこんな所だろうか。私は満足しながら、原稿を眺め、その一行目に予てから決めてあった、「Zoom Out」と題名を記した。

それは、物語の登場人物が、作者に気付き、囁かに刃向かう不思議な話。これを書いたのには、一抹の不安とも、期待とも言える、未知への信頼があるからだ。

それから、椅子から立ち上がって自分もこうしてみるのだ。

「きっとお前も、鏡でしかない!」

皆様も、もしかしたら誰か、何かの思考にすぎないのかもしれない。若しくは、私の望みが勝手に私に皆様という存在を見せているだけ??或いは…………

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