初デート。
俺は今駅前のベンチに座ってコーヒーをのんでいる。
普段は土日外に出ることなんてないのにな・・・。
人ごみはどうも苦手だ。動けないし面倒だし。
そんな俺がココでなにをしているかというと。
「あっ、ケイちゃ〜ん!」
駅の改札から手を振りながら走って来たこの美少女を待っていた。デートのために。
それは二日前の昼休みのこと―。
「はい、あ〜ん♪」
口の中に卵焼きの味が広がる。
・・・うまい。
今俺達はいつもの屋上にいる。
この前まで一人で独占していたんだがな・・・。
屋上には青い空と白い雲、そして生徒会長こと深堂桜子
つまりは俺の彼女がいる。
そしてついでに「あ〜ん」を要求されている。
あぁ、なんで俺あのとき付き合うなんて言ったんだ。
面倒くさい・・・・。
まぁ、屋上にいれば痛い視線は飛んでこないから都合はいいんだがな・・・。
はぁ。
ため息しかでないぞ・・・。
「どうしたの?具合、悪い?膝枕してあげようか?♪」
首を横に傾げながら覗き込んでくる。
「具合は悪くない。たとえ悪くても却下する。」
「えぇ〜!」
頬をぷ〜と膨らませて不機嫌モード全開にしてみてくる。
つくづく思うが、端整な顔立ちだ。やはり、かわいい。
周囲からの目はきついし、いらぬ嫉妬も買う。
しかし、最近生活が楽しいと思うようになったな。・・・なんか俺らしくないぞ。
「あっ、そうだケイちゃん♪」
膨らませた頬を元に戻し、今度はまばゆいばかりの笑顔を向けてくる。
なにか面倒なにおいがする。俺の五感が警告音を全開にして伝えてくる。
「デートしよ♪」
「もちろん却下だ。」
普通のカップルならすぐさま計画が立てられるだろうな。
だがな、俺は却下だ。
なぜって?面倒だからに決まっている。
考えてもみろ、俺がこの超がつく美少女と歩いてみろ
妬み、恨み、その他いろいろな視線にさらされるだろ。
「ケイちゃ〜ん・・・」
いつもと違う声の感じだ・・・
桜子の顔を見ると頬を伝うしずくが・・・。
「チョット待て!なぜないている!」
「だってぇ〜ケイちゃんに嫌われたんだもん・・・」
「嫌いになったなんて言った覚えはないぞ?!」
そんなこといったらこの学校にいられなくなるしな。
「でもケイちゃんは私とデートしたくないんでしょ!?」
泣きじゃくる子供みたいだ・・・。
ん?ちょっとまて。何か不穏な視線が・・・!!!
さっきまでいなかったはずの人影、というか黒いオーラが階段の方から漏れ出している。
(会長をだまして彼女にしておいて!捨てるとは何事だ!!!)
(コロサレタイカオマエ)
あぁ〜まずい。俺、本当に殺されるかもしれない。
「わっ、わかった!デートしよう。な?」
「ねっ!どこいく?!私はケイちゃんがいるところならどこでもいいよ!」
さっきまで号泣していた桜子はどこへ行ったんだ・・・。
キラキラ笑顔でかなりのご機嫌だ・・・。
ひょっとして2重人格じゃないのか・・・?
以上が回想だ。
俺が住んでいる地域には遊戯施設がほぼ皆無のため、少し遠出をして映画を見ることになった。
「ケイちゃんごめん、待ったかな?」
「いや、大丈夫だ。待ってはいない。」
事実、10分くらいしか待っていないからな。
走ってきた桜子がチョコンと首を傾げて謝る。
そうこうしていると、さっそく周りからの視線が集まる。
「あっ・・・。」
息を整え、顔を上げた桜子を見て思わず声がもれてしまった。
雑誌から出てきたっていう表現がぴったりだろうな。
下手なタレントよりずいぶんと可愛い気がする。
普段制服しか見ないから、余計にかわいく感じるのだろう。
「どうしたの〜ケイちゃん?見とれちゃった?♪」
「まっ、まぁ・・・な」
「えっ。えぇ〜っと。えへへ、照れるな♪」
本当に照れているのだろう、顔が少し赤くなっている。
まぁそれ以上に俺の顔は真っ赤だがな。
どうしても桜子の雰囲気に慣れないんだよな・・・。
ついでに、さっきからバシバシと叩かれている背中も赤いもみじで一杯だろう。
「いっ、いくぞ!」
これ以上赤い顔を見られるのも癪だ、それにこれ以上ココにいると視線に刺し殺されそうだ。
早まる心拍数を抑えたい。一向に顔の赤さも取れそうにないな。
はぁ・・・先が思いやられる・・・。
駅から10分ほど歩いたところに大型のショッピングモールがある。
中にはゲームセンター、映画館といった娯楽施設も充実しているそうだ。
来たことないからわからんが。人多いから面倒で来る気も起きなかった。
普段から人が多く、ここら辺に住んでる奴らは週末になるとだいたいここに来て時間をつぶす。
映画館の前で見る予定になっている映画の上映時間を確認する。
まだ上映時間まですこしあるな。
「少し時間があるが、どうする?」
横にいる桜子に声を掛ける。が。
・・・?反応ねぇな。
何かに見入っている桜子の視線を追う。
追った先には「呪い髪」と書かれたタイトルの下に
長い髪を濡らして白い顔をした不健康そうな女の人が写った看板があった。
たぶん死んでるから不健康そうにみえるんだろうな。
「ねぇ、ケイちゃん!私これが見たい!!!」
爆弾発言その・・・どれくらいだ?ありすぎて数えてない。
「見た感じホラーのようだが・・・大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ〜!こう見えても心臓大きいんだぞ?触ってみる?」
「却下だ。お前はもう少し恥じらいをだな『あ!!!』」
説教をさせまいと、話に声をかぶせてきた。
「早くしないとはじまっちゃうよ!」
聴く気皆無なんだよな・・・。まぁいい。
上映時間5分前に館内に滑り込み急いでチケットを買った。
扉を開け、中に入った頃にはすでに照明が落ち、注意事項が流れていた。
それから20分後―。
最初の威勢はどこへやら。隣には涙をボロボロ流して腕にしがみついている桜子がいた。
映画も終わり、今は帰りの電車を待っている。
桜子は泣きつかれたのか寝息を立てて眠っている。俺の肩に頭を預けながら。
夕焼けに染まった桜子の顔を見ると、儚げに微笑んでいるように見える。
急に現れて、急に彼女になった桜子。
俺にもよく分からないが、桜子といるとなんだか心の真ん中が暖かい気がする。
これまで人となるべくかかわらないようにしてきたが・・・
こういうのも、いいものだな。
気がつくと俺は桜子の頭に手を置きささやいていた。
「好きだ」と。
【ユニーク数1000人突破しました!】
拙い小説をこんなにも多くの方に見ていただいてると
なんだか、申し訳なさと恥ずかしさで一杯です!
本当にありがとうございます!
さて、やっと恋人らしいことをし始めた二人です。
なかなか話が先に進みませんが、なにとぞ見守ってください。
そろそろサイドストーリーの製作にも取り掛かっていますので、これからも
ハツコイ!と作者を見守ってください!お願いします!