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黒い炎をもつ理由  作者: ロストネーム
終わり、そして始まり
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僕としての始まり














この例え方はあっているのか分からないが、あの声のようなものに答えた後、目の前が真っ白になった。

そして、長い夢を見た後のような感覚からゆっくりと意識が浮上していく錯覚になり、朧げな意識のなか

瞼を開けた。


「‼︎ うっわ!開いた!目が開いたよ‼︎ この子、やっと起きたみたい‼︎ みえる? 分かる? 聞こえる⁈」


瞼を開けた途端に ハイテンションで早口の声と、

絶対に前世には生息していないだろうファンタジックな触り心地良さそうな生物が、ドアップで視界に映った。







なんだこれ

状況……? 生まれ変われたのか?

生まれ変われたんだよな?  コレなに?

ねこ…じゃないな…

動物?が話しかけてるんだよな?  俺に⁈

応えるべき   だよな?

えーっと…




俺の中で 突然起こった視覚と聴覚の情報をまとめていると、見つめあったままで、どうもなかなか反応も、応えもしないのが焦れたのか 目の前の生物はまた喋り始めた


「もー!お目々ひん剥いてるだけじゃわかんないよー! あー とか うー とかでもいいから!子犬の方がまだ反応いいよ?目ぇ開けた途端にビクってはねるもん!」

 いや、俺 犬でないし

かなり頭の中パニック起こして ついていけないんだが…


混乱真っ只中の俺を置いて、その生物は

 鳴いてー  だの  お目々ぱちぱちしてー

だの 要求が増えていってる



何とか 目の前の生物に応えようと思い、口を開いたとき、何処からか低く そして優しそうに感じる声が聞こえてきた。


「リシリー、目覚めたばかりの人の赤子に あれこれ言うものでは無いよ。見えた物や、聞こえたものを認識し、理解仕様にも それでは出来ることも出来ないというもの。」

「‼︎ はーい。  ごめんね赤ちゃん。」


助かった。

本当に助かった! 黒 しかない所からの突然のコレ

深呼吸しても整理しきれない所だったから、この低い声の人には感謝しかない!



低い声のおかげで、目の前の生物は少し離れて嬉しそう?に俺を見ているだけになった。


俺は 生まれ変わっているのだろう

このファンタジックな生物が居て、喋る。

あの 黒い 空間でも、前世でも 経験した事ないし、聞いた事もない。

生前の世界とは、確実に異なる。いや、あれからさきの未来という可能性もあるか?


しかし、

異世界と仮定して、何故 言葉が分かる?

それにさっき、低い声は [人の赤子] と言っていなかったか?  ???


駄目だ 分からない。



あー も うー も言わないが、顔は変わっていたらしく 目の前の生物がキャッキャと楽しそうに俺の表情を指摘してくれた。

「ヌシ! この子の顔 苦虫食ったみたいに渋い顔つきになってるよ! 面白い!」

…………………楽しそうで何よりです。


何も分からないが 先ずは この生物の言葉が分かる理由が知りたい。

生物が人の言葉をしゃべること自体謎だが、

異世界だとしたら、生前いた世界 日本の言葉である可能性は極めて薄いはず。

なら何故 異世界の言語を生まれ変わったばかりの俺が理解出来ているのか


戸惑いながらも、生物に話しかけてみた。



「あ   っ な んで、お ぇこっ  と ば、わかる の?」


生物は俺の問いに、何故かキョトンとした様子だった


こちらの言葉は通じないのだろうか

はたまた 意味が伝わってないのだろうか


もう一度 聞こうとしたとき

「それはおそらく、リシリーが3年間 毎日其方に話しかけ続けたおかげかもしれぬな。」

低い声が答えた。

思わず声の元を探し、頭上を仰ぎ見た。


それは リシリーと呼ばれた生物より遥かに巨大で、リシリーと呼ばれた生物に似ている様で違う

目の前の生物は愛らしい見た目。だが 今仰ぎ見た低い声の主は美しいが獣の恐ろしさがある。

その見目に見惚れていると さらに説明してくれた。


俺は 人の子で、産まれたばかりの状態でこの森にすてられていたこと

ここは森の中心で、この森はこの巨大で美しい獣が仕切っている事

リシリーが俺を見つけ、獣の餌になろうとしていた所を助け、ここ(森の中心)に連れて来てくれたこと

それから3年間 眠り続ける俺に、話しかけてくれた事

リシリーやこの巨大で美しい獣が話している言葉は"魔物"の言葉である事など


ゆっくりと丁寧に説明してくれたおかげで、今の状況を理解することが出来た。

捨てられ、餌になる所を助けてもらい、"魔物"の言葉ではあるが、潜在意識に認識させてくれたおかげで、意識疎通が可能になるようしてくれたのだ。

ただ 感謝しかない

感謝の気持ちを伝えたくて言葉を紡ぐが、

起きたばかりのせいか、上手く言えない

つたない「有難うございます」の言葉を繰り返す俺に

ヨシヨシ と優しく言ってくれる2人が暖かくて、感謝を伝えながらいつしか泣いていた。


ファンタジックな生物…リシリーは、始め混乱するくらいのハイテンションだったのに、俺に寄り添い優しく 「やっと起きてくれたんだもん。少しずつで良いから、いっぱい遊ぼうね」と言ってくれる

巨大で美しい獣…ヌシは

「生きている それだけで良い。」と言ってくれる

嬉しくて、感謝しかなくて

生まれ変わったこのカラダが男か女かどうでもいいほどに   ただ今は この2人にお礼を伝えるので精一杯だった。

















目覚めてから数週間が過ぎ

よちよちながら、二足歩行が出来る様になった


もちろん 身体の確認もした


男だ      良かったー

心底ほっとした

でも、不細工かどうかは分からない

鏡も無いし、鏡の替わりになるものが無い


人の親に捨てられた不幸はあっても、リシリーとヌシに出逢って幸せな事が今は多い。


俺は人生をやり直したい

その為に 前世で己に呪いをかけながら死に

あの 黒 しかない空間でも足掻いた

手に入れた新たな命   後悔しないよう生きたい


2人に名前を貰った

ある名高い人の名の一部だという

この名に恥じぬよう生きよう


俺として、この世界に生まれた新たな自分として



僕は 『フィリル』 迷いの森に捨てられて

そのヌシとリシリーに拾われた 人の子



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