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黒い炎をもつ理由  作者: ロストネーム
迷いの森で
11/16

腐敗[ビッグツィ]と戦闘

ゾンビ化した[ビッグツィ]が鼻の頭の角から雷をルカインに向かって放つ。

ルカインは魔法攻撃の盾魔法シェルに頼らず、左手でそれを受け止め、頭上に方向転換させた。


ルカイン「はっ!この俺様に雷で対抗しようってのか?!糞豚の分際で!」

ルカインは楽しそうに[ビッグツィ]に言い放つ。そして何やら唱えだした。

ルカイン「命の仇花、半獣の調べに苦痛の影を落とせ。『雷龍の咆哮(らいりゅうのほうこう)』」

詠唱の途中から頭に生えた角の中央に光が集まり、唱え終えると、光から雷に変わり、龍の形をした雷が、[ビッグツィ]に向かって放たれる。


フィリルはルカインの詠唱を聴きとれ無かった。どうも魔物の言葉では無い、別の言葉の様であった。が、魔法の魔力はでかく、凄いものだというのは理解出来ていた。


 ガッ  ズッゴドォォォオオォン!

ルカインから放たれた龍の形の雷が、[ビッグツィ]に命中し、その衝撃の風圧が辺りに風吹、土埃が[ビッグツィ]が居た周辺に立つ。

土埃の中で何か動きを見せたかと思うと、白い何かが、ルカインに向かって飛んできた。

ルカインはそれを躱すが、少し遅れた様で、左足をかすめ、傷を少しばかりだが負ってしまう。

ルカイン「チッ。物理だと?!アレ食らってまだ動けんのかよ!」


ルカインが舌打ちし、何か言っているようだと、分かるが、やはり魔物の言葉でない言語だ。しかし、お怒りなのはフィリルにも分かる。


土埃が晴れ、[ビッグツィ]が見える。怪我も負っていなければ、汚れた様子もない。

リシリーが光魔法で攻撃する。 ホーリーランス という光がランスの形になって、敵に向かう攻撃だが、[ビッグツィ]に当たった瞬間、弾ける様に消えてしまう。

ギリル「フィールドを展開した。好きにやれ…と、言いたいが…」

ギリルは魔族の言葉であろう言語でルカインに言うが。

ルカイン「殺りてぇーんだけどなぁ…」

目の前の出来事にどうしようもないと言うニュアンスを含み、ルカインは次の一手を考える。


フィリルはゾンビに対しての知識は得ていたが、ルカインに尋ねる。

フィリル「ルカインさん。ゾンビ系は物理攻撃が駄目で、魔法攻撃、それもリシリーとかの光属性が有効なんですよね?」

ルカインはさん付に戸惑いながらも、魔物の言葉で答えてくれた。

ルカイン「あ、ああ。だが小虫のも効かないようじゃなぁ…」

一度、フィリルに移した視線を鼻息を更に荒くし、背中から、トゲに変わった毛をルカインに飛ばす、[ビッグツィ]を見る。

攻撃を躱された[ビッグツィ]は怒こったのか、更に牙まで飛ばしてくる。飛ばした後の牙はすぐさま生えてくるのでキリがない。

ふと、ルカインは[ビッグツィ]の身体に何か光る膜のようなものが見えた。

ルカイン「ギリル、ライブラリでコレ観察しろ。」


ライブラリ とは、生体の現状や特徴を診る水属性の魔法。

ギリルはルカインの言葉に従い、ライブラリを発動させる。するとギリルの顔色が変わった。

ギリル「はぁ、ルカイン。その腐敗物は対抗魔法攻撃の膜を纏ってるぞ。」

ルカイン「あぁ?!じゃー、まず膜壊しからやんのかよ!!」

めんどくせぇ と、ルカインが呟くが、フィリルは言葉が分からない。もぞもぞしだすと、舌打ちをしながらも、ルカインはフィリルに伝えた。


ルカイン「チビ、対抗魔法攻撃の膜ってわかるか?」

魔物の言葉で話しかけられ、フィリルはルカインを見る。

フィリル「一定量の攻撃を膜が吸収して、纏ってる対象はその間、攻撃をうけないんですよね?」

ルカイン「あぁ。アレはそれを纏ってやがる。」


フィリル『うへぇー。面倒くさいなぁ。』

フィリルは顔を歪め、ルカインと同じ感想を洩す。

この間、ルカインは軽々と[ビッグツィ]の飛んでくる攻撃を空中で躱す。


フィリル「物理って、試しに出したら駄目なんですか?」

フィリルは、単純な疑問を口に出す。知識としては、ゾンビに対して無意味で有る事は理解しているが、実際に見聞きした訳ではないので、疑心があるのだ。


これに対し、ルカインは少しばかり黙り、無言で[ビッグツィ]にフィリルを抱えてない左手で、閃光を放った。

[ビッグツィ]は避ける事もせず、閃光を受け止めた。

閃光が当たった頭の部分は、左側の額から右下の口元にかけて裂ける。裂けた部分からは腐敗した肉がただれ落ち、魔力が漏れ出した。

[ビッグツィ]はその漏れ出した魔力を使い、鼻の頭の角に魔力を貯め、初めに放った雷を繰り出した。


ルカインは再び受け止め、今度は[ビッグツィ]に向かって方向転換させる。[ビッグツィ]が放ったはずの雷は、そのまま自身に命中するが、やはり膜のおかげか、動じていない様子だった。


ルカイン「チビ。腐敗物に物理が駄目なのは、新たにできた傷口から漏れる魔力を使って、魔法攻撃してくるからだ。嬉しいことに、傷口から出た魔力は、威力を上げる仕様なんだよ。」

そうフィリルに教えながら、左手をひらひらさせている。

フィリルがその手を見ると、酷い火傷の跡みたいになっていた。


フィリル「…申し訳ない。」

フィリルが言うと、ルカインは鼻で笑い。

ルカイン「うっせぇ。たらたら聞くより、観た方がはぇーだろうが。」


ルカインなりの優しさに、フィリルがお礼を言おうとした時、[ビッグツィ]の口が開き、浮遊するルカイン目掛けて何かを吐いた。

ルカインは避けるが、範囲が広かったのか、右の翼に一部かかってしまう。

途端にルカインは地面に降下し、膝をついた。

ルカイン「クッソ、ヘドロ吐きやがって!」

吐き捨てる様にルカインが言う。 ヘドロ は、闇魔法の1つで、空中にいる目標の浮遊効果を奪う魔法。

ゾンビとなると、自動的に闇の属性もついてくる。今、目の前にいる[ビッグツィ]は、木と闇の属性持ちだ。


ギリル「ルカイン!!」

その声は少し焦りが混じる。

ルカイン「へーきだ!ほっときゃあ剥がれる。てめぇはなんか魔法撃って、アイツの膜の耐久性削れ!!」

ギリルはルカインの指示を聞き、今出来る行動をおこなう。ギリルは、尖った氷の塊を自身の周辺に6つほど出現させ、[ビッグツィ]に放つ。

リシリーも同様、ホーリーランスを撃ち、対抗魔法攻撃の膜の耐久性を削る事に専念する。


しかし、膜はいっこうに消える様子はない。それぞれ上級の威力がある魔法にもかかわらず。


[ビッグツィ]は魔法攻撃を受けているにも関わらず、突進攻撃を出そうと、前脚は何度も地面を蹴り、構えていた。


フィリルは考える。相手、腐敗した[ビッグツィ]を膜ごと燃やせないものかと、通常の魔法を使う魔力と、変化・"黒炎"を使う時の魔力は、異なる様で、フィリルは一か八か試そうと思った。


ルカインが地面に降りたことで、フィリルは彼の腕から離れていた。今がチャンスだとばかりに[ビッグツィ]に向かって走り出す。

フィリル「リシリー!アイツに結界張って!とじこめて!!」

[ビッグツィ]との距離は10メートル弱。フィリルの声に、リシリーは慌てながらも[ビッグツィ]に結界を張ろうと動く。


リシリー『もー![ビッグツィ]の位置は此処から17.5メートル。[ビッグツィ]の高さは6メートル、横・縦15メートル…』


[ビッグツィ]が動きだした。フィリルは構わず走る。

フィリルと[ビッグツィ]の距離が6メートルと迫った時、リシリーの結界魔法が発動。

[ビッグツィ]の頭は結界にぶち当たり、結界を壊そうと頭突きする。

光属性が使う結界魔法はどれも上級のもので、攻撃では無いから、膜を持った[ビッグツィ]でも破壊できない。リシリーの魔力次第だが…


それを確認して、フィリルは変化し、結界の1メートルほどで止まり、左手の人差し指を結界に挿す。


フィリル『コイツを結界の空間ごと燃やす。』


フィリルはそう強く思い描く。

すると自然と口から言葉が漏れ出てきた。


 その爪を研げ。堕胎の中で燃え上がる赤子よ。揺れる影を追い、牙は天を仰げ。灼熱の内で我に慈悲を候がいい。


フィリル「謡え(うたえ)、牛業の炎塊歌(ぎゅうごうのえんかいか)


挿した指から、黒い小さな雷の様なものが現れ、結界の中に地面から黒い稲光と炎が巻き起こり、瞬く間に腐敗した[ビッグツィ]を飲み込む。


[ビッグツィ]は断末魔を上げる。その声は、結界に響き、まるで曲の様にフィリルは感じる。


フィリル「いい謡だ。そのまま燃え尽きろ。」


その言葉のとうり、[ビッグツィ]は断末魔を上げたまま、灰にもならず燃え尽きた。



フィリルは[ビッグツィ]が燃え尽きたのを確認すると、結界に挿していた指を曲げ、結界を破壊する。

 パリィィィィィィン

結界の壊れる音が、静かな森に響きわたる。


リシリー、ルカイン、ギリルは、その光景をただ、唖然と見る事しかできない。

かなり高い耐久性があったはずの対抗魔法攻撃の膜をものともせず、腐敗した[ビッグツィ]を黒い炎が燃やしたのだ。魔力は[ビッグツィ]の方が、フィリルよりもあったのに…何故と。


結界を壊したフィリルは動かない。が異変が起きた。

フィリルが纏う闇が身体を覆い、みるみる小さくなって、ふわっと闇が晴れると同時に、人の姿のフィリルが現れ、パタリと後ろに倒れた。

リシリーはまさかと思い、急ぎフィリルの元に駆け出す。


リシリー「フィリル!無事?意識ある?!」

リシリーはフィリルの顔を覗き込む。

フィリル「うぅ、身体中が…凄く、いたい。」

リシリー「っ!バッカ!!それ魔力切れじゃん!!無茶な事するからだよ!馬鹿!アホ!!」

リシリーは、フィリルが生きている事に安堵すると同時に怒りがこみ上げ、思いつく限りで罵倒する。


フィリルは通常の魔法を使った際、魔力が少なくなると、眠気が襲ってくる。人間の魔力切れの前触れは大体コレなんだとか。

しかし、変化や"黒炎"を使い過ぎると、眠気ではなく、筋肉や骨が痛み出すのだ。

今のフィリルの症状は、"黒炎"の使いすぎによる魔力不足状態。死ぬ程までには至ってないが、ギリギリには違いなかった。


リシリーが心配で、怒るのも当然。少し間違えばフィリルは死んでいたかもしれない。それを分かっているので、フィリルは何も言えず、リシリーの 馬鹿、アホ の罵倒を受け止めていた。



そんなリシリーとフィリルの元に、正気を取り戻したルカインとギリルが近寄って来た。


ルカイン「生きてるか〜チビ?あ?生きてるな。」

ギリル「はぁ、まったく。無茶だな。ゾンビ[ビッグツィ]が燃え尽き無かったら、真っ先に死んでいたぞ。」

ルカイン「はっ、そんときゃ俺様の雷龍がコイツごとあの豚を食ってやるよ。」


どちらもフィリルの安否を確認し、思い思い言う。


フィリルはただ聞くしかできない、謝罪をしたいが、口を動かす事も辛い程、全身が激痛に見舞われている。

リシリー「はぁぁぁ。こんな状態なら、動かす事もできないよ。動けるくらいに回復するまで、此処に居るよ!ヌシには木を使って伝えとくから。」

リシリーはひどく溜息をつき、ヌシに連絡しようと地面に顔をつける。


ルカイン「なっさけねぇなぁ。っあ?ギリル、何してんだ?」

ギリルは、フィリルの右側に座ると、右手を取り、魔力を込め始めていた。

ギリル「俺たちだけでは、あの[ビッグツィ]を殺れていたかどうか、難しいところだ。この子が無理をしたおかげで、魔力をあまり使わずに済んだんだ。これくらいすべきではないか?」

ギリルはルカインに言いながらも、自身の魔力をフィリルに分け与える。

ルカイン「たくっ、てめぇは真面目過ぎんだよ!」

と、ルカインは言うが、フィリルの頭の上に座り、フィリルの口元に、左手の人差し指を当てる。

フィリル「??」

ルカイン「咥えろ。でなきゃセックスか、キスじゃねぇと分けらんn」

ルカインが言い終わらないうちに、フィリルは指を咥えた。





ぜーはーぜーはー。ギリルとルカインの荒い呼吸が煩い。

フィリルは、2人のおかげで、まだ身体はかなり痛むが、動けるくらいにはなった。

フィリル「ギリルさん、ルカインさん。有り難う御座います。それと、ご迷惑をお掛けしてすみません。」

フィリルは2人に向き合い、頭を下げた。

ギリル「いい、気にするな。」

ルカイン「がーー。俺の半分の魔力喰いやがって…」

ギリル「本当にな。人間にしては多いと思ったが、予想以上だな。」

ルカイン「以上過ぎだっての!」

2人の言葉にフィリルはいたたまれない。しゅんと落ち込んでしまう。が、気になることがあった。


フィリル「…分けて貰って失礼なんだけど、リシリー。僕って、魔族の魔力取り込んでも大丈夫だったの?」

フィリルは人間。魔力に質があるのなら、血液などの様に拒否反応が有るのではと、不安になり、リシリーに問う。

リシリー「フィリルは平気だよ。きちんと馴染んでるし、もう彼らから貰った魔力は、フィリルの…人間の魔力に変わってる。」


フィリル『うふぇ?早くない?』

フィリルはぱちぱちと目を瞬かせ、驚く。


ルカイン「あー。疲れた。戻んぞギリル。」

ルカインが立ち上がり、帰ろうとする。しかし、フィリルはルカインの服の裾を掴み、止める。

フィリル「待って下さい。怪我…」

フィリルはルカインの足と手の怪我を気にしていた。

ルカイン「あ?この程、勝手に治る。チビじゃどうにも出来ねぇだろ。」

ルカインはフィリルの手を解こうとするが、フィリルは離さない。

フィリルは服を掴んだ右手に意識を向け、集中する。


治したい。怪我をしたのは僕のせいでもある。変化して、一緒に戦っていれば、怪我をしなかったかもしれない。治したい、この怪我を…


フィリルがそう強く思い続けると、右手から、黒いが、光が立ち始める。その黒い光は、ルカインの怪我のある左手と左足に集まり、瞬く間に傷が癒えていた。

これには一同絶句。フィリル自身、リシリーに頼み、治してもらうよう方法を聞こうかとしている時の出来事で、自身で治癒魔法を使えるとは思っていなかったのだ。


リシリーはリシリーで、事の次第を理解できずにいた。フィリルは闇と火の属性。治癒や回復の魔法は光か、水の属性しか使えないからだ。

それはルカイン、ギリルも同様だった。

何故、フィリルが治癒を…それに今のは黒い光だった。


ルカイン「……っち、めんどくせえ事になったな…」


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