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6 実戦、そして

 シトミは2匹のウサギに囲まれてわたわたしている。


「どうした! 実力を見せてみろ」

「えぇ〜、でもそんなこと言っても」

 へっぴり腰でウサギに攻撃されるがままになっている。何も持っていないので腕で叩くか絞めるかしないといけないのだが、それもできていない。だが、驚くべきはそのHP回復能力。ウサギの攻撃など全く効いていない。目に見えるスピードでHPが回復している。


 これが肉壁の実力か。頑丈のおかげか。犬がじゃれているかのように思えるほどだ。彼女に攻撃を任せるのは酷というものだ。挑発系統のスキルを覚えられれば立派な盾役となってくれるだろう。

 回復速度とHPを見るに低火力の魔法ぐらいは耐えられそうだが、そもそも俺達が戦うような相手では低火力の魔法を使ってくる相手などいない。ボスレベルの魔法なら耐えられずに一瞬で消し炭になるだろう。そしてあの敏捷なら避けられない。

 だが自爆がある。彼女のレベルが上がらないというデメリットがあるが、どっちにしろ死ぬなら同じだな。

 何とかして魔法への対策ができればよいんだが、そんなものがあればとっくのとうにゾンビという種族の不遇さは改善されているだろう。できるとしたら、それは俺の役目だ。


 さて、精神力を上げても焼け石に水だろう。ある程度耐えられるようになるまでは精神力が80は欲しい。となると必要なのは14レベルになる。14レベルを犠牲にして精神力を上げる必要があるのだろうか。確かに高いHPもあいまってそこそこの強さになるだろう。しかしそれをするなら他の種族でよい。

 魔法も受けられるタンク職ならばドワーフの重戦士の方が100倍適性がある。何とかしてステータスぶりを……しかしこのようになって陥りがちなのが、劣化上等で使ったほうが強かったというパターンだ。精神力を上げたら確かに安定感は増すが……それドワーフでよくね? って言われてしまう。



 上げるべきなのは体力だな。肉壁の補正はHPにかかっている。HPに直結する体力を上げるのが良いだろう。自己再生が固定値なのか割合なのかということも関わってくる。さすがに割合回復は強すぎるからないか。それに体力を上げてHPを上げることは自爆の威力を上げることにもつながる。


 何もわからない彼女をプロデュースするのが俺の役目とはいえ、現時点では情報が足りなさすぎる。

 いや、やはりHPは十分なのだから耐久力を上げるべきでは? 悩みどころだ。HPはありあまっているのだから他を上げるのがセオリーだが。できれば筋力をあげて戦士の真似事をさせたいが肉壁である彼女に攻撃性能は期待していけない。


 レベル4になるまでは体力に振らせようか。それがいい。

 スタミナ切れでバテているウサギを俺が軽く仕留める。


「考えていたんだが、ステータスはレベル4になるまで体力に振ってくれ」

 何やらもじもじしていたので俺が睨みつけると白状した。

「あの……器用上げちゃいました。ははは」


 一瞬で決めたな、全く考えずに直感で決めたんだろう。うーん。いや、えー。まじかよ。


 確かに盾職では器用値は重要だ。しかしそれは盾が装備できて、盾で魔法やら攻撃やらを弾く判定に器用値が関係しているからだ。しかし盾を装備できないゾンビに器用さはいらない。生産スキルもない、遠距離攻撃もない彼女に器用さか。

 銃を持たせるのも良さそうだな。


 最低限の筋力もあり、器用さも必要になる。自分の体を使って戦うのは難しいかもしれないが、引き金を引くぐらいなら彼女でもできるだろう。しかしそうなるとスキル枠が大変だな。肉壁をやりながらだとスキルの零距離射撃は欲しいところだ。

 そして問題は金だな。鉱物を使うだけあって銃弾は少々値がはる。これから稼いでいけばいい話だが。



 銃というのは筋力も魔力も関係なしに、銃と弾の性能がそのまま攻撃性能となる。そのためステータスよりも持っている金が重要と言われる武器だ。生産職でも十分な火力が発揮できるが、補正などをかけられる他の武器や魔法を使ったほうがてっとり早いため、サブとして人気の武器だ。

 もちろん当てるのには器用さがいるし、反動もあるため非力な魔法使いが扱えるような武器ではないが元々の筋力はシトミにはあるし、器用も最低限分だけあれば近距離から当てるのは難しくない。後は金の問題だ。

 というか金しか問題がない。


 金さえあれば大体の問題は解決する。このゲーム内でもそうだ。知り合いでもいれば出世払いで高性能な武器を作ってもらうっていうこともできるが、俺にはそんな知り合いがいないから今から人脈を作るか、どこかの大きなギルドに所属するしかないだろう。

 しかし、それは今考えることではない。


 俺が考えるべきなのは、あのデカブツに現時点の戦力での戦えるかどうかだ。

 シトミの性能ならば何匹のウサギがいても死にはしまい、問題は俺だ。狼化が切れれば勝ち目はない。そして狼化が切れるまでは逃げ回られることはわかった。狼化が解けた状態での戦闘を考えるべきだろう。


 もう一人アンデッドが欲しい。できることならもうちょっとマトモなゾンビ以外の……。


「あ、あ……う、後ろ」

 急にシトミが俺の後ろを指差して青い顔をさらに青くしてガタガタと震えている。


「怖がらせるのはやめろ。後ろがなんだっていうんだ」

「後ろ、後ろ」

 なんだかそんなに言われると俺も怖くなってきたな。後ろを振り向きたくない。


「やあ、怖がらせてしまったようだね」

 やっぱりただのプレイヤーじゃないか。俺を怖がらせようとしたんだな。


「すまんな。こいつはゲームになれていなく……て」

 俺の後ろには月光に照らされた骸骨が立っていた。カタカタと顎を鳴らして笑った。

「こんばんは」


「で、でたーーーーー!!」

 夜の草原に叫び声がこだました。

ありがとうございました。ゲームって面白いですね

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