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4 転機

 青い空と時計台が見える。

 俺は広場に仰向けで倒れていた。


「俺は……死んだのか?」

 俺がここを出たときと同じように町の広場は人でにぎわっていた。


「立てるか……少年?」

 先行プレイヤーらしき男が俺に手を差し伸べてくれた。俺は手は取らずに自分で立ち上がった。


「酷い顔をしているな。……気に病むことはない。死を経験して……強くなればそれでよい」

「おい、ワイズ。さっさと行こうぜー」

「……では、強くなったらまた会うこともあるだろう」

 強くなったら……か。


 最初の一撃で仕留められなかった。そこからは危険を感じた大ウサギは他のウサギを盾にするように逃げられ、狼化も切れ、ゾンビ達も倒れた。たくさんのウサギになすすべもなく、俺は負けた。


「ちくしょう」

 あのタバコを吸っていた男は俺があの穴から出てこなかったのを笑っているのだろうか。


 一刻も早くリベンジをしたいが、ステータスにペナルティーがかかっている。器用値以外が全て半分になっている。時間経過で治るだろう。



「俺ならやれる。必要なのはコマと戦術だ。あのデカウサギを仕留めなければ」

 ふつふつと湧いてくるウサギへの怒りを深呼吸することで腹の中に抑える。


「情報に頼りすぎていたのも敗因の一つだな。他人の感想などあてにならない。舐めていた」

 俺の方が速かったが、一撃をもらった後の大ウサギの反応を考えていなかったのが問題だ。連携して俺を阻んでくるとは思わなかった。逃げられないように足を止めないとまた同じことになる。

 どこかにNPCの死体でも転がっていないだろうか。


「そういえばスケルトンも作れるんだったな」

 スケルトンについての情報は特にない。


 そうと決まれば善は急げだ。ウサギを狩りに行こう。今の俺は一文無しな上に素材も何も持っていない。


 ウサギと相対してみると楽勝というほどではなかった。威嚇後の突進へのカウンターが決められなく、普通に殴り合って勝った。さすがに狼化もあるので負けることはない。

 そして死体を前にして俺は気づいた。

 刃物もなしにどうやって骨を引き出そう。


 刃物を買うにしても俺には金はない。ウサギの死骸はゾンビにすることを考えたら簡単には売れない。


「死霊魔法が不人気なわけだ」

 死体はアンデッドにするから売れない。死体を売れないのでパーティープレイもできない。ボスを除くモンスターは死体を売って生計をたてるのがほとんどのプレイヤーだ。

 結果、死霊魔術師は死霊魔法以外の魔法を使わざるおえなくなる。


 ここが修羅の道か。


 倒したモンスターをアンデッドにしても文句を言わずに俺に物を買ってくれるパーティーはいないだろうか。いないか。



 とりあえずウサギ狩りだ。レベル上げと同時に戦力も増える。




《種族レベルが上がりました。ステータスを振り分けてください》

《職業レベルが上がりました。スキルポイントを1獲得しました》

《【死霊魔法】がレベルアップしました》

《[ストレングスアンデッド]を取得しました》

《【魔法装】がレベルアップしました》

《【直感】がレベルアップしました》

《【精神力強化】がレベルアップしました》


 名前:ダイチ

 種族:人狼 Lv.7

 職業:死霊術師 Lv.7

 体力 :50

 筋力 :50

 耐久力:40

 魔力 :50

 精神力:85(+19)(+10)

 敏捷 :50

 器用 :60



スキル

【死霊魔法Lv.6】【魔法装Lv.5】【直感Lv.3】【精神力強化Lv.4】【キープアンデッドLv.1】

アクションスキル

[狼化][魔法装][クリエイトアンデッド][ストレングスアンデッド]



 一体何の呪文かと思えば、アンデッドを強化する呪文だ。強化する呪文をだすぐらいなら初めからゾンビの能力を強めに設定してくれたって何の問題もないと思うんだが。


 ストレングスアンデッドの効果を確認するついでに、次に覚える呪文をチラ見してしまったのだが、どうやらそれもサポートに属する呪文らしい。


 確かにイメージとして死霊魔術師は攻撃をアンデッドに一任しているイメージがあるが、そんなサポートばかりの呪文を覚えても、という感じである。俺としては死体を使わなくても攻撃できるような呪文が欲しい。

 序盤は苦労するが、このままレベルを上げていたら死体問題も解決するのだろうか。

 ゾンビのやたら控えめな性能といい、運営は一体何を考えているんだ。



 しばらく考え、答えがでた。運営は死霊魔術師とその他アンデッド種族が組むことを考えているのだろう。ストレングスアンデッドやその他、アンデッドをサポートする呪文があるのだし、他の5人をアンデッドで揃えれば無類の強さを発揮するだろう。クリエイトアンデッドはあくまでもフレーバー。他の呪文も習得してアンデッド用のバッファーとして運用するのが正しいのではないだろうか。

 絶滅危惧種並みにプレイヤー数が少ない死霊魔術師。そして人気のないアンデッド種族。パーティーを組める確率はどのぐらいだ?


 アンデッド種族はマミーとゾンビとスケルトンとレイスだったはずだ。

 レイスはクセが強い。スケルトンは見た目が怖いのと特殊なステータスをしている。ゾンビは弱い。マミーは唯一、使いやすく見た目も包帯が巻かれているだけで人気がないわけではない、と思うのだがやはり使っている人は少ない。


 さっきまではパーティーを組む気なんて毛頭なかったが、アンデッドだけは別だ。アンデッドを見つけたら必ずパーティーを組もう。この職業はそういう場所でこそ輝く職業だ。今のところはそう感じられる。



 そんなことを考えている間に日がずいぶんと下がっていた。

 草原の全てがオレンジ色に染まっている様子は壮観だ。ウサギを狩るのも忘れてしばらくこの光景を眺めていた。太陽がスッと消えた後、急に冷たい風は吹いてきた。


「月がでれば狩れるか?」

 わずかに町の明かりが見える。しばらく狩りをして、夜になって狩れなくほど暗くなるのならば一度町に帰ろう。



 日が沈んでしばらくのち、月が煌々と輝き始めた。

 運が良いのか、それともこの世界の月は明るいのか。


 目も慣れたし、とりあえず問題はなく狩りはできる。

 このままウサギを狩り続けるとしよう。

ありがとうございます。

総火演を見に東京に行くので次回更新は遅れるかと思います。

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