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シルバーオーヴと異世界最果ての楽園  作者: 露天浮録
【第1章】 厄災を呼ぶ妖精少女 篇
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第8話 地下の絶対王者


熊のような獣が1人の囚人の身体をを喰い千切る。


- 始まった、。


唐突に始まった公開処刑。マモルは動揺した。


闘技場の客席にいたラタ、21階の囚人たちもマモルが

闘技場の大地に立っていることを知る。


「あいつっ!いねぇと思ったら…今日の処刑の対象に選ばれちまったのかよ!!」


マモルと他の囚人たちは闘技場の中を走って逃げ回るが熊も囚人を追いかける。喰い千切られる者もいれば腹に穴を開けられるものもいる。

1人、また1人と処刑が執行される。


観衆は囚人が熊に殺される度、湧き上がる。


「くそが…、」


逃げ回る囚人たちは必死だ。


ガルァァッ!!


また1人、囚人が熊につかまる。囚人たちの残りも数人となった。


ガルァァッ!ガルァァァッ!!


マモル以外の囚人はまとめて熊の腕で吹き飛ばされる。

体は上半身が千切れ、血と臓物が宙を舞い飛び散る。

再び観衆の歓声が上がる。


マモルにも熊が追いつきそうだ。


- くっ!!


マモルは後ろを振り返る。


その時、既に熊の振りかざした腕はマモルの頭に向かって到達しかけていた。


「ふっ!!」


間一髪、熊の一撃を避けた。

体勢を立て直そうとするが、囚人の死体の腸に足をとられ転倒。

身体を起こしたが間に合わない。


ズガッッッ !!


「ぐふぇっ!!」


熊の大振りを懐に食らう。そのまま真横に吹き飛ぶ。闘技場を囲う壁に激突した。



「……うっ…、」


かろうじて致命傷を避けた。

だが立ち上がれない。


- やべぇ…っっ…意識が…、





わぁぁああああっ!! と、歓声が聞こえる。

決まりきった運命の直前。


もう間も無くの決着に湧き上がるオーディエンスの雄叫びと目を当てたくなる感情をあらわにする叫びが沸点に達し入り混じって場内に伝染し続き、止まない。



なんだか懐かしい感じがした。


- これは、あの時の…





マモルはずっと、地下のリングの舞台で戦っていた。

いわゆる地下闘技場。表に出ることのない、勝った者が上に立つことが許される文字通りのアンダーグラウンドの世界。

常識やルールは捻じ曲がり、ただ力がぶつかり合い、潰し合う。階級も何もかもが滅茶苦茶だった。


マモルはその地下で、揺るぐことのないチャンピオンだった。


口数は少なく無気力な性格で目立たない選手ではあったが、驚異的なスピードで相手の全てのパンチを見切る、本物の実力を持った男だった。


決勝戦、開始直後に対戦相手はマモルの顔面に直撃即死のパンチを放ったが、彼はそれを避けパンチを決め、一撃で勝利を収めた。



- あの時の、感覚を、



- …思い出せ。



- 研ぎ澄ませろ。











マモルは立ち上がった。



そして目を閉じる。









まずは、深呼吸。極限まで集中する。

心臓の音を聞きリズムを整え、刻む。



- 集中しろ。




「ふーっ、ふーっ、」


マモルは完全に自分の世界に入る…


人々の歓声。処刑される囚人の叫び。

獣の吠える声。


全て、意識の外。


熊が囚人たちを食い尽くしたところでマモルの存在に気がつく。


マモルは、目を閉じている。


「何やってんだ!逃げろ!死ぬぞ!!」


オーディエンスの歓声の中、ラタはマモルの身を案じて叫んだ。

熊はマモルに向かって突進する。

大きく口を開き、喰い千切りにいく体勢であることが見て分かった。


「逃げろっ!!!」


熊がマモルに迫る。


闘技場にいる者たちは皆、次の瞬間に起こる最後の囚人の未来を悟る。


吹き出しそうになるほど興奮が溜まっている者。

惨たらしい光景に目を覆う者。


そして、熊がマモルに飛びついた。



マモルは目を開ける。




- ああ。


「…見える。」


次の瞬間、マモルは自身に飛びついてきた熊の顎に右手から放たれた拳打を打ち込んだ。


熊は軸を失いそのまま地面に墜落。

グルァッッ !!と、獣の声で悲痛な叫び。



…右ストレート。



わぁぁぁぁあああああっっ!!!!と、観衆たちは湧き上がる。


「あいつやべぇぞ!!あの大熊をパンチ一発で吹っ飛ばしやがった!!」


ラタは呆然とする。


「あいつ、」


熊は地面に倒れたまま立ち上がれない。


グルァッグルァッッ!!


マモルは熊の方に向き直り再び構える。

左手を差し出すように伸ばし指先を向け、こいこい、と、挑発するように動かした。



…どうした?


「立てよ」



グッガルァァッッ!!!


熊は奮い立つように雄叫びをあげ、マモルに全力で飛びかかる。


グガルガァァァァッッッ!!!!


マモルは避けない。そのまま熊の懐に入り腹にパンチを打ち込んだ。


熊はバランスを崩す。マモルはその隙を見逃さない。


脇腹、頭、腹、鼻、そして顎。

最後にもう一度、腹。


熊は倒れる。そのまま動けない。


地に伏す熊に向かってマモルは言った。



「おまえはもう立てない」



グガッルガァ…ガァァ…

熊は大人しくなり、やがて意識を失った。


わぁぁぁああああっっ!!!!

わぁぁぁああああっっ!!!!


観衆は再び湧き上がり、マモルの勝利を祝福する。

マモルはそのままぼんやりしていた。



ゴォォオオオンンッッ !!


闘技場中に鐘の音と声が響く。


「504番の処刑は中止する!!本日の全ての処刑が終了した!速やかに退場!!」


観衆は散り、闘技場を後にする。騒がしさが失せ、辺りは静まる。



マモルの処刑は保留になった。





その夜。マモルは自分の檻に戻り、早々に寝入った。


- …生き延びた、のか。


マモルは線が切れたように安堵する。

1日の疲れがどっとマモルを襲った。


そのまま、眠りに落ちた。












どこからか、声が聞こえる。





「……の…た…お…。」


「…に…な……る。」


コツ、コツ、


「…けが……ろ……。」


コツ、



それとは別の音も、





- …また、この夢か?…


コツ、 コツ、 コツ


コツコツ、コツ


「…て…を…た…、


コツ、コツ


音は次第に大きくなり、声をかきけす。



コツ、コツ、コツ、コツ


コツ、コツ、コツコツ、コツ







コツッ、



マモルは目を覚ました。


- …、足音?。


まだ朝ではない。にもかかわらず足音はたしかに聞こえてくる。夢でもない。


- 何か来る。


マモルは身構える。音の聞こえる方をじっと見つめる。


やがて音はハッキリと聞こえるようになり、足音だとわかった。暗闇の中から、何かが近づいてくる。


それはマモルの檻の前で止まった。


その正体は人だった。


「よぉ、504番、だな?」


黒いコートをまとった男がマモルに話しかけた。その雰囲気、見るからに只者でないと分かった。


「あんた誰だ?囚人、なのか?」


マモルは警戒したまま男に尋ねる。


「俺はヘルガ、43階の囚人だ。」


「43階、だと。?」


ガイアロックの39階より下のフロアは、特に危険な囚人たちが収監されている。まず出る手段がないはずだった。


「ああ、おまえに会いにきた。」


「俺に、? 一体何で?。」


男は声を潜めて言った。


「俺に協力する気はないか?」


「協力、って?」


男は檻に近き、さらに声を潜めて言った。





「脱獄だ。」





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