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シルバーオーヴと異世界最果ての楽園  作者: 露天浮録
【第1章】 厄災を呼ぶ妖精少女 篇
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第7話 扉の先


「何だ、これ」


マモルは目の前の光景に愕然とした。

囚人たちが惨殺されている。

闘技場のようなその場所で、騒ぎ奮い立つ者、怯える者とで半々。


「これが、処刑?」


ラタは頷いた。


「そうだ。数いる囚人の中から選ばれた何人かが見せしめに処刑される。みんな、次は自分が選ばれるんじゃないかって不安なんだよ」


「こんなこと…」


マモルは理解した。アガリオの言っていた処刑の意味を。


「向こう見てみろ」


言われた通りの方向を向く。

そこには繰り広げられる惨劇を目の前に嬉々として騒ぐ囚人たちの姿があった。


「こんなの、まともじゃねえ」


- アガリオは、俺が今日にでも処刑される可能性があると言っていた。こういうことなのか…


予定された処刑が全て終了し、囚人たちは皆それぞれのフロアへと戻った。処刑の時は、39階までの全てのフロアが闘技場に集まる。40階から下は隔離されたエリアで観戦するらしかった。


マモルは檻に戻ると、再び素振りを始めた。


- あんな風に、死んでたまるかよ


マモルはひたすらに素振りを続ける。


やがてマモルの話は21階に広がった。


ラタは自由時間にマモルのところにやって来ては、マモルの姿を見続けていた。


ラタに続き、21階の囚人の何人かが自由時間になってはマモルが素振りをする姿を見にくるようになった。



数週間後、マモルの元にアガリオがやって来た。


「やあマモル」


「アガリオか」


そう答えつつもマモルは手を止めない。


「久しぶりだね。君の話は聞いたよ。何かの練習をひたすらしているそうじゃないか。これは君がいた国の武術か何かかい?」


「ボクシングだ」


「へーボクシング、やっぱり聞いたことがないな。マモルは僕の知らないことをいっぱい知ってて面白いよ」


「俺にはこれが面白いかは正直よく分からない」


「けど、君はそれをずっと続けてきたんだろ?見ればわかるよ。」


「ああ」


「相変わらず無気力でそっけないな。しかしそんな覇気に欠ける君が続けてきたものだ。きっと魅力的なんだろうね」


アガリオは相変わらずの軽い調子だった。

そしてそのまま言った。


「処刑を、見たのかい?」


「ああ、見た」


マモルは答えた。


「中々にきついよね。あれを楽しんでるのは一部の囚人と監獄の人間、あとは公開処刑の観覧にくる一般人たち」


「それ半分以上じゃないか」


「そうだよ。ガイアロックに収監されるようか犯罪者たちのことを、誰も可哀想だなんて思わない」


「とてもまともじゃねぇ」


「それを言えるのは君がまともだからだよ」


「俺がまとも?」


「あの悪趣味な見せ物を異常だと考えているところがね。まともな人間の思考だよ」


「どうかな」


スパァァンッ!!


「この状況でまともでいれるやつこそ、まともじゃないってことかもしれないぜ」


「けど僕はそんか君をとても人間らしいと思うよ。だから僕には、君が騎士殺しの犯人とは思えない」


「それはありがたいが、証拠がなきゃ俺はここから出られないままだ」


「そうだね。騎士団でも今事件を追ってるよ。君が最初に言った通り、この件は本当に神人類(ラグナ)が絡んでいるかもしれない」


「そうなのか」


「こうも何も分からないとなるとね。それが神人類(ラグナ)の仕業だっていうなら合点が行くよ。ただ、君が巻き込まれたことは偶然とは思えない。もし本当は君が狙われていたんだとしたらなおさらね」


マモルは手を止めない。

アガリオは一通り話をして、帰っていった。

別れ際に一言、

「君はただ、ここで生き残ることだけを考えてくれ。僕は君に死んでほしくない」


そう言った。



マモルはその夜、横になって考えていた。

あの事件の真相。誰かどんな目的で起きたものなのか。自分が巻き込まれたのは偶然なのか。偶然でないのならそれは何故か。

それを突き止めれば、自分がこの世界に来た意味も分かるのではないかと思った。















「……る。もる。…」


「…て。…」


何処からか声が出て聞こえる。


「……の…。…る。」


何となく、聞き覚えがあった。


「……よ。」








「………× × は……ね…。」










ギィィイィィンンッ!!

ギィィイィィンンッッ!!


起床の鐘。

マモルは目を覚ました。


目をこすり開けると目の前には看守がいた。


- なんだ?


マモルは寝起きというのもあり、いまいち事態が飲み込めない。


「行くぞ」


そう行って看守はマモルを牢の外へ連れ出す。

そのままエレベーターに乗りこむ。

エレベーターは上へと向かって上がっていく。

エレベーターが止まり、扉が開く。

そこには薄暗い道が広がっている。


- ここは地上…なのか?


「入れ」


そう言われ、マモルは小さな部屋に入れられた。中も暗い。外から鍵をかけられる。

マモルには相変わらず何が起きているのかが分からない。

暗い部屋の中を見回すと、反対側にもう一つ扉がある。外から鍵がかけられているようだった。


「なんだ…これ」


よく見ると、その部屋には剣や槍、斧など、さまざまな武器の類が用意されている。

施錠された2つの扉。片方から入ったとなるともう片方はどこへ続くのか?


嫌な予感がした。


- これは、まさか…


と同時に、ガチャッと音がした。

反対側の扉の鍵が解錠されたらしい。


思い切って扉を開ける。





歓声が聞こえる。


期待や興奮、熱を帯びた感情を心から吐き出すかのような歓声。


扉の先には広々とした大地。


言うなれば闘技場。


マモル以外にもそこには何人かの囚人が立たずんでいる。

激しく怯える彼らの表情から、これから起こりうる最悪の未来が予測される。


嫌な予感が確信に変わる。


正面を向いた。

そこには大きな熊のような獣。見るからに獰猛そうだ。


その獣は1人の囚人の方を向くと、そちらに向かって勢いよく走りだす。


その場にいた者たちがそちらを向き、結末を迎えて歓声が上がるよりも早く、獣は囚人の頭を食いちぎっていた。


マモルは理解した。


- 始まりやがったな




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