表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シルバーオーヴと異世界最果ての楽園  作者: 露天浮録
【第1章】 厄災を呼ぶ妖精少女 篇
7/58

第6話 処刑の戦場


早朝。


ギィィイィィンンッ!!

ギィィイィィンンッッ!!


耳を塞ぎたくなるような鈍い音が、

どこまでも続いているかのように広いフロアの全体に響き渡る。

マモルはその音で目を覚ました。

それは起床の鐘だ。


フロアにいる全ての囚人が目を覚ましたであろう。


- ねみい…


マモルは目をこすりながら立ち上がった。

まだ意識は冴えない。

硬い地面に薄い布切れでは満足に就寝できるはずもない。その上、湿気もあって空気もひどいものだ。きっと劣悪な環境というのはこういった場所のことを言うのであろう。


- 俺、マジで死ぬのか?


不意にそんな考えが過ぎる。

アガリオは今日にでもマモルの刑が執行されるかもしれないと言っていた。


ふと思い出したかのようにマモルは檻の中で素振りを始めた。

それはマモルの日課であった。


マモルは一度として練習を欠かしたことはなかった。

ひたすらにそれを続けてきた。

大きな夢や目標があったわけではない。

自分を磨く、半ば義務感で続けてきたわけでもない。

それでもマモルは続けてきた。


大舞台で活躍するような目立つ選手ではなかったが、

そんな彼が弱いがはずがなかった。


シュッ、シュッ、シュシュッ

シュッ、シュシュッ


フロアに、マモルの空気を裂くパンチの音が静かに響く。



ダッ、ダッ、ダッ


もう一つ、フロアに響き渡る音が聞こえた。

少しずつ大きくなる。


- 誰か、近づいて来てるな


そう思いつつもマモルは手を休めない。


シュッ、シュッ、シュシュッ

シュッ、シュシュッ


同じリズムとスピードでパンチを刻む。


ダッ、ダッ、ダッ


足音も大きくなる。


シュッ、シュッ


ダッ、ダッ


シュシュッ、



ダッ、!



「おまえ、何やってんだ?」


足音は檻の前で止まった。

代わりに誰かの問いかける声がした。


マモルは手をようやく手を止め、そちらを向いた。

そこにいたのは見知らぬ男。まだ若い。マモルと同じくらいだろうか。

ボロボロな布切れを纏っている。

おそらくこのフロアの囚人だろう。と推測できた。


マモルが不思議そうな顔をすると男は続けて話す。


「おまえ、新しく入ってきたのか。何やってたのか知らないけど、さっさと集会いかねえと。その変な服も着替えてな」


「集会?アンタもやっぱりこのフロアの囚人なのか」


「そうに決まってんだろ。いいから早く着替えろって」


檻の中をもう一度見回すと確かに同じボロボロな布切れが用意されていた。


- これ服なのかよ…


渋々、マモルはジャージを脱ぎ布切れに着替えた。


「行くぞ」


「行くって言ったってどうやってここから出るんだ?」


「はぁ?何言ってんだ。鍵なら空いてるぞ」


男の言う通り檻の扉は解錠されていた。

マモルは檻を出て男と共に歩き出した。


男は呆れたように言う。


「おまえ、本当にここに来たばかりなんだな。上から落ちてきたのかとも思ったが。いきなり地下21階って一体何やらかしたんだ?」


- いきなり?地下21階?…もしかして、犯した罪の重さでフロアが決まるのか?


「騎士を1人殺した罪だと」


「おまえ、殺人かよ。しかも騎士殺し。21階も妥当だな」


「俺はやってねえ」


「なんだ?冤罪ってわけか。大変だなお前」


アガリオではないが、この囚人の男も中々に軽い調子で受け答えをする。


「アンタは何をしたんだ?」


「俺?俺は、盗みだよ。窃盗な。普通は窃盗なんかで21階まで落ちないんだけどな。数も分かんないくらい盗ったし、何回も捕まってって繰り返してるからな」


「まだここより深い地下があるのか?」


「あるよ。最深部は47階。そこまで行くと、もう本当にヤバいやつしかいねぇな。今みたいに、囚人が自由に檻を出て動けるのは集会の時か自由時間の時だけだ。基本的に制限もないし行きたいとこらに行ける。39階より下除いてな」


「なんだ?39階より下になんかあるのか?」


「考えるだけでも恐ろしい」


「なんだよ。危険なのか?」


「あそこにいる奴らは、危険なんてものじゃあない。俺らが生涯関わっちゃいけない化け物の集まりだ」


そう話す男は軽く身震いしていた。そうこうしてるうちにフロアの中央辺りまでやってきた。


「まだ名乗ってなかったな。俺はラタだ。ここでは795番だけどな」


男はそう言って名を名乗った。


「俺はマモル、番号は知らないな」


「まだ来たばかりだからか」


フロアで最も大きいであろう部屋とその扉。

2人は中へ入った。


中には数多くの囚人たち。とても静かだった。

2人が中へと入り少し経ってから、囚人たちの前に毛で顔の周りが覆われた大男が立ち、と同時に囚人たちの空気も変わった。

大男が深く息を吐く。


「おはよう」


一言そう言った。続けて話をする。

囚人たちは他の者と雑談をするわけでもなく黙って話を聞いていた。

しばらく話をした後、突然、

「おい、」と、マモルを呼んだ。


「前に来い」

野太い声でそう言った。

マモルは言われた通りに囚人たちの前に立つ。


「こいつは今日からこの21階で生活することになった。504番だ。良くしてやれ」


その一言でマモルは下げられた。

マモルはガイアロックの中では504番という名前になるらしかった。


大男はそのまま続けた。


「集会はこれで終わりだ。だがまだ牢屋にはもどるな。そのままエレベーターで地上へ行け」


囚人たちの表情が再び変わった。

今度は怯えているようだった。

マモルにはその原因が分からない。


囚人たちは部屋を出て、エレベーターに乗り、地上へと上がっていく。

その最中、マモルはラタに訪ねた。


「この後に何がある?こいつらは何にここまで怯えてるんだ」


エレベーターが地上について扉が開く。


ラタは一言だけ答えた。



「…処刑だよ」


開かれた扉の先、開けた地上。そこは言うなれば闘技場のようであった。


マモルは遠目からその闘技場を見ていた。


そこには数々の死体。飛び散った肉片や血の跡。


そこでマモルは見た。

3メートルはある大男が、大きな鉈のような武器で

1人の囚人の首を切り飛ばす瞬間を。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ