第5話 最強の監獄 ガイアロック
- ここは、牢屋か?けどさっきとは違う場所だ。
なんとなく、さっきよりも深い。深い所にいる。
「やあ」
碧眼の騎士の声がした。マモルは振り向く。
「まだ、檻の中か」
「そう、しょうがないよ。さっきも言ったけど証拠がないからね。簡単には解放されないさ」
「このままだと、俺はどうなる?」
「んー、犯人が見つかるか、君が犯人じゃない証拠が見つかるまでは出られないだろうし。けど、このフロアの階長ホデバグさんだからなあ、ちょっとやばいかも」
「フロア?って、ここ…」
碧眼の騎士が大きく頷く。
「そうだよ。ここはルガルクロ最大、 ってよりも最強の監獄、ガイアロック」
「最強…?」
もう一度大きく頷く。
「そう、文字通り最強。このガイアロックから脱獄を果たした囚人は未だかつてただの1人もいないからね」
「囚人て…、俺がまだ犯人って決まったわけでもないのにかよ」
「しょうがないっちゃしょうがないよ。王国騎士が殺されたわけだからね。それに時期が悪かった」
「時期って?」
「王の退位だよ。少し前に国王が王座から降りて新しい王が生まれるって発表があってね。王都はお祭り騒ぎだけど王城はけっこうピリついてる状況だから、そんな時に騎士殺しなんて国家天賦を目論むテロか何かって疑われるに決まってる」
- 国王の代替えで影響で国全体が騒がしいってわけか。
そしてその最中、マモルは騎士殺しの疑いをかけられ、王国最強の監獄に収監されてしまったわけだった。
「…俺かなりやばくね?」
「うんうん、むちゃくちゃやばいよ。死ぬかも」
碧眼の騎士は相変わらず軽い調子のまま話した。
危なく大事な発言を聞き逃すところだった。
「マジかよ」
一度死んだはずのマモルに再度起ころうとしている死の機会。あまりの情報量にマモルは死への正しい恐怖を抱けなかった。
「俺以外に犯人の疑いがある奴とか、なんか見つかってないのか?」
「そーだね。今のところは」
碧眼の騎士は答える。
「この国のケーサツはポンコツか」
「おいおい、そのケーサツってものを僕は知らないけど多分それこっちでいう王国騎士団のことだよね?」
碧眼の騎士は不満げな表情だ。
軽い調子の喋りは変わらないが。
「けどよ、」
と、マモル。
「魔法とかそういう異能力の類いが、人が簡単に殺されるくらい強力ならそういう事件とか事故って多いはずだろ。その度それで証拠が見つかんねえってなるのか?」
「んー」
少し考え込む碧眼の騎士。
「中々ら着眼点は素晴らしい。けど、魔法ってのは君が思ってるような便利なものじゃないんだよ?」
マモルの正面に向き直り続ける。
「さっき魔法は誰にでも使えるとは言ったけど、高等な魔法になれば高度な技術や鍛錬が求められる。人を、騎士を殺せる魔法となれば使える人物は当然限られてくる。
それにね、魔法に限らず異能の力を使えば普通はある程度その痕跡が残るものなんだ」
「その痕跡が見つからない今は、俺が犯人って説が有力になるわけだ」
「そういうこと。まああとは、君が言ったように本当に神人類が関わってる可能性がある」
「神人類か」
「うん。神人類の力は術者によって性質が全然変わってくるからね。ほとんどが系統に分類できるようなものでもないし」
「……」
マモルは碧眼の騎士の話に聞き入っていた。
「まぁとりあえず犯人探しは騎士団に任せて、君はガイアロックの中で生き残ることだけ考えればいい」
マモルの意識の対象がまた切り替わる。
「生き残るって、ここは監獄だろ?」
碧眼の騎士は首を横に振った。
「最強の、監獄ね。君が犯人と決まったわけじゃなくても、今の君は仮にもここの囚人だ。他の囚人と同じ扱いを受けるのは覚悟しておくんだ」
「……」
「運が悪かったら、君明日あたりに処刑されるかも」
- 俺まだ犯人って決まってないんだが
「そういえば君、名前は?」
思い出したかのように碧眼の騎士は言った。
「六道 護だ」
「マモルか。変わった名前だ。覚えておくよ。僕はアガリオ。君も覚えといて」
「ああ」
「じゃあまた。マモル」
そう言ってアガリオは去っていった。
今が何時なのか正確には分からないが、体感で夜だと分かる。
身体が気怠くなってきた。
- そういえば、俺はどうやって王城の地下からガイアロックに移動した?
床に横たわり、薄い布を被って就寝の体勢に入る。
困惑を残しつつも、マモルは今日あった出来事を整理する。
- どうやったのかは全く分からないが、間違いなくあのカリファとか呼ばれてた女の力だな。もしかしてあの女、神人類だったんじゃ…
そのまま、いつの間にか眠りに落ちていた。




