第46話 神殿のヌシ
マモルとアガリオがヘルガを撃破する少し前。
「……オベロン、ティターニアか。違うな。彼らはヌシではない。ヌシはもっと別の、何か強大な、」
フルング二ルはただ1人神殿の最奥に辿り着き、2体の妖精と対峙していた。
妖精は竜のような体とで蝶のような翼を持った姿をしていた。
妖精の王オベロン、女王ティターニア。
フルング二ルは前に踏み出す。
ウォーーーーンッッ!!!!
オベロンがいなないた。
これ以上先へ進むことは許さない。警告であった。
もう一歩、前へと足を踏み出した。
オベロンが咆哮。口からは風の魔力を帯びた衝撃が放たれる。
上へ飛んで避けるフルング二ル。体を起こしたオベロンの背後の壁に、異質な雰囲気を放つ一本の剣を見つけた。
「あれが、」
オベロンが再び咆哮、ティターニアも翼をふるって風の斬撃を放つ。
フルング二ルはそれらを避け前へと進む。
「すまない、あなたたちを傷つけることはしない」
そう呟き、剣を前へと向けた。
「…光滅」
途端に空間は光に包まれた。
フルング二ルは壁の目の前までやってきた。
「これが、神殿のヌシ」
フルング二ルは壁から剣を外す。
その瞬間。神殿は音を立てて崩壊を始めたのだった。
透明な空間が発生した。
直感で悟る。
この空間はこの世界のものではない。
「ははは、なんだそれは」
ソドムは笑った。
マモルは底知れぬ憤怒の表情を向ける。
「殺す」
「はは、期待以上だ。地下の王」
マモルが吼えた。
箱状の空間はソドムに向かっていく。
触れてはまずいと悟ったソドムは真横に避ける。瞬間、空間は到達し、地面は消滅する。
「これは、」
凄まじい力だ。あれは単なる破壊ではない。衝撃などでもない。そこが知れぬ。一体、
「ぐうッッ」
マモルの意志に従うように新たな空間が生成されソドムを追う。
それを避けるソドム。
さらに空間は生成される。
避け続ける。
空間が迫る。
避ける。
迫る。
避ける。
やがて、限界を迎える。
「ぐ、ああ、」
マモルは地面に膝をついた。
「制御できない力を連続で行使し続けた結果だな」
「くぅ、」
あれの正体は見えん。ただこの世界の理に反する力であるのは間違いない。
それほどに異質、歪。
「さて、」
ソドムはマモルを見下ろし、落ちている剣を拾い上げる。
「か、えせっっ」
それはアガリオの剣であった。
「返すのは構わないが、貴様、受け止められるか?」
剣を振り上げる。
「沈むぞ?」
大地が唸る轟沈
ソドムが振り下ろした剣から轟沈の力が発動する。
「がぁッッ!!」
「何だと!?」
剣とマモルとの間に生成された空間。それが剣ごと轟沈の力を飲み込んだ。
「なぜ、お前が、アガリオの力を、、」
マモルはソドムを睨みつけて言った。
そうか、こいつの力は、、
その瞬間、地面と壁にひびが入り、崩壊が始まる。
「神殿が…。おそらく、ヌシが死んだのであろうな。この神殿は間もなく崩壊するというわけだ」
ソドムはすぐに立ち上がり、マモルの方を一瞥し部屋を去った。
「団長、ま、て、」
「まて、よ」
ヘルガとマモルは動けない。
2人はそのまま割れた地の底へと落ちていった。
神殿は、完全に崩れ落ちた。
「団長、フルング二ル団長」
「カイ。どうだ」
「俺の隊はみんな、無事に神殿から脱出しました。あとロッソの隊と、アガリオの隊も。あとはロッソとアガリオたちだけです」
「そうか、すまないなお前に全隊を任せてしまって」
「まあツートがいたんでどうにかはなりました。ロッソの馬鹿とアガリオはぶん殴ってください」
「誰が馬鹿だって、?カイ」
「ロッソ、お前生きてたか」
「当たり前だろうが!!俺様よりアガリオとあとあのマモルとかいう奴は?」
「まだ、脱出が確認できていない」
「マジか、それやばいんじゃねえのか」
「ああ、」
フルング二ルがうつむく。
「覚悟した方がいい」
そう呟いた。
「そういや、ロッソ、お前白竜の1人と戦ってたろ。そいつは?」
「ああ?神殿の崩壊が始まってすぐ逃げられちまったよ、ったく。お前こそ他の団員には会わなかったってのかよ?」
「会ってないな。固まって散策していたからか」
ドォォォオオオンンンッッ!!!!!!!
「!?」
「これは、!?」
「轟沈、まさか」
「アガリオか!!」
突然地面に空いた大穴。
騎士団は一斉に攻撃を避ける。
「おい、あれ」
全員が一方向を見つめた。
「白竜、団長」
雰囲気が変わる。
「なぜ貴様がアガリオの力を使える。答えろッッ!!!!」
ロッソが吼えた。
「俺が、」
ソドムは微笑んで答えた。
「俺が、殺した」
ーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!!!!!
全員が殺意をむき出しにする。
「貴様、この場にのこのこ現れたということは、死ぬ覚悟はできているなァ、」
「やるぞ、」
「待て、お前ら」
「止めるなァ!!団長!!」
「待てロッソ、」
この場の誰よりも強い殺気が迸る。
「私がやる」
フルング二ルが前に出た。
「2つ、質問がある。どうやってアガリオの力を奪った」
「俺自身の力で奪ったものだ」
「お前の力だと」
「世界に蔓延る饗矩。俺が触れたものは性質を半永久的に与えられるか、奪われるかする。そして奪った性質は、」
「お前が得るということか」
「そうだ」
「2つ目の質問だ。マモルはどうした。お前が殺したのか」
「マモル…。ああ、あの出来損ないか。おそらくは神殿の崩壊に巻き込まれ、潰れて醜く死んだだろうな」
「そうか、」
フルング二ルは剣を抜いた。
「お前、もう死んでいいぞ」
これは、、!!
ソドムは即座に大きく距離をとる。
「虹饗の七天逝にて超越を越えたえた先へ(オーバーザレインボウ)」
「くっ、、永翼!!!」
ソドムはとっさに翼を展開し空へと飛び立つ。
「…炎天」
フルング二ルの剣から空を焼き尽くす業火が放たれる。
業火はギリギリのところで空を逃げるソドムを捕らえた。
「がッ、、」
翼は一瞬で焼け落ちる。
「釼翼!!!」
新たな翼が生え、業火を切り裂いて飛び出す。そのままソドムは彼方へと逃げ去っていった。
「逃してしまったか。」
「くそが、、、、くそがぁぁぁぁああああああ!!!!!!」
ロッソが吼えた。
「アガリオ、マモル、」
「そんな、アガリオさん、、マモル君まで、」
カイとツートが呟いた。
他の騎士たちも動揺し、アガリオとマモルの死を嘆く。
「…ルガルクロに帰ろう。この件は早急に報告しなくてはならない」
フルング二ルがそう呟いた。
こうして、妖精の国リトートピア、フィリア神殿における作戦は結末を迎えたのだった。




