第4話 兵隊殺し
マモルは騎士の身体を起こそうとするが既に騎士に命はない。
- ついさっきまで普通に話してただろうが。一体何がどうなった。まさか、攻撃か?
大階段の中腹、辺りを見渡すもすぐ近くにそれらしき人物はいない。
- この出血の量は異常だ。そもそも転げ落ちる前に攻撃を受けたようだった。おかしい。まるで何かで斬られたみたいな…
大階段にいたのはマモルと騎士の2人。
マモルは騎士が倒れた瞬間を見ていたが、特に誰かが騎士を攻撃した様子は確認出来なかった。
状況で言えば、急に目の前で騎士が倒れただけだ。
何がどうなっているのか、マモルは状況を呑み込めず混乱していた。
「おい!どうした!!」
別の騎士が複数人駆けつけてきた。
倒れている騎士を見て困惑する。
「これは、!?」
「貴様か!!?」
- …へ?
駆けつけた複数人の騎士にマモルが取り押さえられる。
「ちがっ、俺じゃねえって!」
マモルが潔白を訴えるが、騎士たちは構わずマモルを抑え込む。
さらに応援が駆けつけてきた。
「抑えろ!!城内の牢へ運べ!」
「だから違うってっ」
「かまうな!どんな攻撃をしてくるか分からん!気絶させろ!気絶させて運べ!」
「おい待てっ……て、
ガッッ!! と、頭に重い打撃が入る。
衝撃でマモルは気絶し、意識を失った。
マモルはとうとう捕まり、城の地下にある牢屋へ拘束された。
…気がつくと、
そこは牢屋の中だった。
じめじめした気持ち悪い空気と臭いがする。
頗る居心地が悪かった。
「…気がついた?」
目の前には鉄格子を通して男が1人、鎧はなかったがこれもおそらくは騎士であろう人物が立っている。
碧眼の騎士だ。
「…ここは、城の中か?」
頭を押さえてマモルが言った。
まだ打撃を受けた頭がずきずきと痛む。
「そー。やっぱり、城の中に入りたかったのか。一体何が目的?? 何で兵隊殺したの?」
「俺が殺したんじゃない…。ただ話をしていただけだ。そしたらあの騎士がいきなり倒れて」
「ふーん、そうなんだ」
と、やけに軽い調子で答える碧眼の騎士。
「んー、ま、君の言うことが仮に本当なら十中八九それは異能の類だね」
マモルは碧眼の騎士が言った、能力という言葉に食いつく。
「能力って、神人類の力のことか?」
「え?あーそうだね。確かに神人類の力は特殊な能力だし、その可能性がないわけじゃ勿論ないんだけど」
碧眼の騎士は不思議そうに、そして少し面白がるように微笑んだ。
「けど神人類なんてその辺にそうそういるものじゃないでしょ。普通、魔法とかって選択肢を真っ先に思いつくものじゃない?」
- 知らねええよ…
「君、ちょっとおもしろいなぁ。変わった格好してるし、もしかして遠くの国から来たのかい?」
「ああ、そうだ。俺は日本って国から来たんだ」
「にほん?聞いたことないな。どこにあるの?」
「どこって…分からない」
「え、分からないって、君がいた国だよ?」
「マジで分からないんだって。この国のことも、神人類のことも俺は知らない。聞いたこともねえ。そもそも俺がいた国、ってよりも、俺がいた世界とここが同じ世界とは思えない」
「それ、ほんと?」
「本当だ。嘘言ってるように見えるかよ」
「いやいや、正直僕には君が嘘をついてるとは思えない。この状況でそんな嘘をつくのは頭が悪過ぎるよ。命が惜しくなければ無理だね」
「お前、俺のこと馬鹿にしてるだろ」
「してないって。僕は君が馬鹿じゃない方だって信じてるよ。まあかといって、君の話ははいはいって素直に信じられるようなものではないけど」
「俺だって信じられねえよ。まさか異世界に来たなんて」
「ふむ、じゃあ君はどうやって、君が言うこっちの異世界にやって来たのかな?」
「多分、死んだから」
「え、死んでこっちに来たの?じゃあ何、ここは天国ってことになるのかな」
「俺もそうかもとは思ったよ。けど今は、とてもここが死後の世界だとか極楽だとか言われる場所には思えない」
「うん、それは間違いないと思うよ。ここは君がやって来る遥か昔からある国で、数百数千年の歴史があって、人々が当たり前に暮らしている世界だからね。第一、君みたいに死んでこの世界に来たなんて人は僕は1人も知らないよ」
「…神人類って奴らだったら何か分かるんじゃないかと思ったんだが」
「それで王城に来たってわけか。なるほどね。君の話をすぐに信じるわけにはいかないけど、ひとまず事情は分かった。君が言う通り、確かに王城や騎士団には強い力を持ってる神人類が何人もいる」
マモルは騎士をじっと見上げた。
騎士は微笑したままさらに続ける。
「それと、君が怪しいのは間違いないんだけど、君じゃない別の誰かが騎士を殺したって可能性も全然あるから。神人類の力と違って、魔法は言ってしまえば誰にでも使えてしまうわけだしね」
「とにかくやったのは俺じゃねえ」
「うん。僕もそう思いたいし、はやく本当の犯人を捕まえる。ひいては君の無罪を証明するために頑張るよ」
碧眼の騎士は笑って答えた。
「あ、ちょっと待っててね。すぐ戻ってくるから」
そう言って碧眼の騎士はどこかへ走って行ってしまった。
- 変な奴だったな。あの騎士。俺の話を少なからず信じてるみたいだったし、それに神人類についても詳しく知ってそうだった。
マモルは騎士から聞いた話を踏まえ考えた。
- あの騎士は明らかに何かしらの攻撃を食らって死んだ。もしあれが魔法なら、俺が認識してない遠距離からでも攻撃できたわけだ。
けどなんであの騎士を殺した?それとも俺が狙われていたのか?
だとしたらなんでだ?誰も俺を知らないはずだろ
考えることがより増え、悩みはより大きくなった。
「わけわっかんねぇ…」
王城地下の牢屋の中でマモルはそう呟いた。
と、同時に碧眼の騎士が戻ってきた。
「おまたせ」
そう言ってガチャ と、牢屋の扉を開ける。
「ついてきて」
マモルは言われるがままに牢屋を出て碧眼の騎士の後をたどって歩く。
地下の暗い道を歩き、しばらくたったところでとある部屋の前で止まった。
碧眼の騎士が扉を開け、部屋の中に入る。
中は相変わらず暗いが所々に橙の明かりが灯っており、そこがそれなりに広い空間であると分かった。
そしてそこには、薄暗い部屋に紛れるような黒いコートを着た女性がいた。
「カリファさんこの人です。お願いします」
碧眼の騎士が女性にそう言った。
女性も答える。
「その子ね、分かったわ」
女性がこちらに近づいてきた。
「動かないでね」
と、マモルに言った。
マモルはじっとしたまま立っている。
「まぁとりあえず、君の処分が決まったんだ」
碧眼の騎士が笑ってマモルに言った。
「まだ、君がやったという証拠も、やっていないという証拠も何も見つかっていない。けど素性もよく分からない君が怪しいのは間違いないし…」
女性がマモルの手に触れる。
瞬間、マモルの視界が歪む。
歪んでいく視界と同調するように意識も遠のいたり近づいたりする感覚に陥る。
妙な気分だ。
そう思った次の瞬間、
マモルは再び、牢屋の中にいた。
しかしそこは先程いた王城の地下の牢屋とは違う。
鉄格子の牢屋というよりは、
そこは監獄だった。




