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シルバーオーヴと異世界最果ての楽園  作者: 露天浮録
【第2章】眠れる妖精郷 篇
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第43話 迷宮


地に伏したまま上目遣いで、暗く離れた空を睨みつける。

その目は明確な殺意と憎悪に満ちていた。



「…おまえは、おまえだけは…っ」


「許さない。か?」


男は目にかかる長さの白髪を右手でかきあげる。

より鮮明に男の表情が視認できた。

髪に習うように白い肌と黄色い瞳。

その目はとても静かだった。


「…立てよ。許さないんだろ?俺を」


「ぐっ……」


身体中に生じる痛みと疲弊。体力てきにも限界に近い。それらを何とかこらえ、ふらつきながら立ち上がる。


「よし、立ったな」


男はそのまま踏み込んで距離を詰めてくる。

目で追うが揺れ動く意識からか思考がそれに追いつけない。


「っかっっはぁ…!」


鈍痛。瞬間身体は後方に吹き飛び再び地に倒れた。


「……こんなものか」


「はぁ…はぁ」


限界はもはや分からない。それをまともに考えることすら文字通りぼろぼろの身体では許されなかった。


「力を使え」


「…はぁ、はぁ」


「おまえの勝機は今、それしかない」


「はぁはぁ、」


「…使え」


「はぁ、はぁ、」


「使え」


「……うるせぇ、んだよ」



立ち上がり、拳を握る。


そして、


本能的に

その握った拳を突き出すように解放した。




瞬間、眩い光が一閃。


世界はほんのわずかに時間を止める。


刹那が終わり現実の軌道へと戻ったときそこには理を逸脱した存在が生じていた。



白。というよりも銀世界のような、












否、それは 透明 な破壊の始原であった。




「……シルバーオーヴ 」




































「行こう」


静寂を破るように放たれた一言。

それがこの場にいた全ての者の背中を押した。


大きく口を開けた虚無の門に、引き込まれていくような感覚だった。


「気をつけて。マモルくん」


オシドが舌を噛んでそう言った。

自分が力になれないことを悔しく思っているのだろう。


「ああ、行ってくる」


マモルは一言だけ答えた。




一歩目を踏み出す。


未だ嘗て誰も踏み入ったことの無い地下に。




総勢およそ40名。と言ったところだろうか。

ルガルクロの騎士団三隊に、団長フルングニルとマモルを加えた面子がこの作戦に参加するのであった。


- そういえば、まだ団長の戦闘は見たことなかったな


騎士団団長フルングニル。彼はその名の通りルガルクロ王国の騎士団の団長を務める人物であり、優れた才やずば抜けた実力を持つのは間違いないだろう。


- …あとは、


マモルは巨躯の男を見る。

ルガルクロ王国騎士団5番隊隊長と名乗っていたロッソという人物。


「ああ、?なんだ?」


ロッソがマモルに気づき見返す。


「あんたも、ラグナなのか?」


マモルはそう尋ねた。


「…けっ、俺様がラグナかどうかなんて、てめぇには関係ねぇ話だろうが。第一に、俺様はまだおまえのことを信用したわけじゃねぇかんな」


「なんでてめぇはそう当たりが強いんだよロッソ。マモルは俺たち騎士団で雇われてる兵士なんだぞ」


「だったらギルドにでも行けばいいんだ」


「あのなぁ、こいつにだって事情があるだろうが」


「カイさん、あんたらはもうこいつのこと知ってたみてぇだけどよ、俺様はついさっき顔を合わせたばかりなんだぜ?絆を深めるほど喧嘩しあったわけでも語り合った仲でもねぇ。俺様の知らないところで勝手に騎士団に取り入ったモブ野郎にしか思えねぇんだよ」


ロッソはマモルに対し快い感情を向けない。むしろ真逆。得体の知れない人物に敵対心を一切隠すことなくぶつける


「悪いなマモル、こいつ馬鹿なんだよ」


「俺様は馬鹿力だが別に馬鹿じゃあねぇ」


「その発言が物語ってんだよ」


「そうですよロッソ。初対面の相手ならなおさら丁寧な対応と言葉遣いを心掛けないと」


「うるせぇなツート、今日はてめぇまで来てんのか」


「当たり前でしょう。僕は1番対副隊長なんですから」



「おまえたち」


フルングニルが列を静止させる。

そこは開けた空間であった。

列はそのまま中へと入る。

暗闇から水晶による光に照らされた幻想的な世界へと変わった。



「…これは、天然の空間なのか?」


それにしてはあまりに綺麗で複雑な作りをしていた。

明らかに、何者かの手が加わってできている。

来た道を除けば先へと進む穴がいくつかあった。

そのどれが正しい道なのかは分からない。


マモルが中央の床に足を踏み入れた瞬間。

床が脆く崩れ落ち、マモルも落下に巻き込まれる。


「…!!、まずいっ!!」


遅かった。


マモル以外の騎士たちはマモルが落ちたことで退き落下を免れたがマモルだけは間に合わない。


叫び声も届かぬまま底への暗闇にマモルは引きずりこまれるように落ちていく。


ただ1人、退いた騎士たちとは対照的に、というより反射的に飛び出した者がいた。







落下は随分と長く続き、














続き、












続き、














やがて、落ちた。










バチャーーンッッ!!!



水のあるところへ落下したため、本来ならば落下による絶命を免れないところまで来ていたがなんとか命が繋がる。



「ぷっ…はぁっっ!!はぁ、はぁはぁ、」


水面から顔を出し、岩に手をかけた。


「…はぁ、助かった、のか」


水中から上がり、必死に酸素を吸い込み呼吸を促す。


直後、落下して来た何かが着水し、激しく水飛沫を上げる。


「……馬鹿だろ絶対」


マモルは水面に手を伸ばす。


水面から伸びた手がその手を掴んだ。


マモルはそれを引き上げる。



「ぷはぁ、はぁ、死ぬかと思った、はぁ」



アガリオである。


「2人仲良く、死ぬところだったな」


マモルがそう言った。

アガリオが笑って答える。


「何言ってるんだ、こっからだろ」





「いや、ここまでだ」


突如、奥から声がした。



落ちた空間。そこは先程いた部屋よりも大きく、明るく、何かを祀ってあるようであった。



聞き覚えのある声だった。





その声は陰の奥から言い放つように告げた。




「おまえらは、ここで俺に殺されて終わる」



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