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シルバーオーヴと異世界最果ての楽園  作者: 露天浮録
【第2章】眠れる妖精郷 篇
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第37話 眠れる妖精郷



「まさかおまえを夢に見るなんてな、サカガミ」


サカガミ。それはマモルが通っていた学校で唯一親しかった関係にあった少年。

通っていた という言い方は正しくないのかもしれない。マモルは当時、いわゆる不登校というような状況にあった。

そんな中でも彼、サカガミと親しかったのには共通の話題であるボクシングが関わっていた。


生まれつき身体の弱かったサカガミはあらゆるジャンルのスポーツや格闘技、中でもボクシングに興味を注いでいた。

そしてマモルが密かにボクシングをしていることを見抜き声を掛けたのだった。

ハクリュウのこともマモルがサカガミを親しく思っていたからこそ話したのだろう。

久しく忘れていた記憶を夢に見て思い出した。


「……」


何とも言えない気分だった。


サカガミは、ある日を境に行方が分からなくなってしまったのだ。

正に 消えた ように。

原因も分からない。何かあればサカガミはマモルに相談していたはずだ。

マモルはサカガミのことをなんだかんだで信頼していたし、サカガミもそうだった。


- あいつは、何考えてたんだろうな


マモルはサカガミに信頼されていなかったのだろうか。自分が彼に対して抱いていたものを彼はマモルに抱いてなどいなかったというのか。


- それは違う


それでもマモルは分かっていた。

それだけは分かった。


顛末は知らないが、

理由は分からないが、

サカガミは本当に消えてしまったのだ。


元々、半不登校児だったマモルはそれから本当に学校に来ることはなかった。


自分の居場所であった地下の憧れは消え、

居場所ではない中に見出した拠り所の友も消え、

元々あったというわけでもなかったが


生きる理由も消えたのだった。


「マモル?寝てるの?今から夕ご飯だって、はかせが」


扉越しに部屋の外からリザの声が聞こえてきた。


「起きてるよ。先行っててくれ」


マモルは普段通りに答えた。


「分かった。すぐにきてねー」


「ああ」


声が潰え、足音が聞こえ、そのまま遠ざかる。


マモルは少しだけ安堵していた。









夕食は異世界独特の田舎くささのある古風な飯店。

昼間リザと2人で来た街にオシドを加え再び訪れていた。

日中もだったが、夜は夜で賑わっている。人も多い。

街はもちろんマモルたちの入った飯店にも客は多かった。

テーブルに並べられた様々な料理を食べ終えると3人は街へと出た。

夕食はすこしばかり豪勢であるように思えた。

きっとオシドなりのマモルを歓迎する思いの表れなのだろうとマモルは悟った。


「マモルくん。お口にはあったかな?」


「ああ、もちろんだよ博士」


「ならよかった。クセがちょいと強いのもあったがそれは避けておいたんだ。豆類もね」


「それは助かるな。俺もまだこの世界の郷土とか分かり切れてないところだし」


「けどそんなにマモルのいたところと食べ物の味の違いって違わないんだよね?」


「ほとんどな」


「リザ、おまえだって生魚は苦手だろう?好き嫌いは、まぁ無い方がいいに決まってるが有るのは仕方ない」


夜の街を歩きながら3人は言葉を交わし続けた。

向かっている先はリトートピアが妖精郷とされる所以の場所。フィリア神殿。


「懐かしいなぁ。いつ以来だろ。神殿に来るのなんて」


リザの故郷でもあるリトートピア。彼女は懐かしい思い出にふけるように呟いた。


「リザもしばらく来ていないからな。マモルくんにとっては初めてだ」


「神殿か。リトートピアって一応国なわけだよな?王様とかはいないのか?」


「いないよ。元々はいくつもの妖精族がそれぞれ生活してた場所を一つにして妖精の国として独立させたの」


「そう。そして国を治める王の代わりに、リトートピアには守神がいるんだよ」


「守神?」


「妖精王オベロンと妖精姫ティターニアのこと」


「神殿の地下にある遺跡に守神であるオベロンとティターニアが居て、私たちを見守ってくれているんだ。八界にそれぞれ属している妖精たち全てをね」


「なるほどな。妖精郷と言われるに相応しいってわけか」


お伽話のような話だった。

土地があり、守神がいて民を守る。

王が治めるわけでもなく守神が守ってくれているという言い伝え。

それは幻のような伝説なのか。現実なのか。


「オベロンとティターニアにはね、他にもまだ気になる言い伝えがあるの」


「へぇ、どんな?」


「オベロンとティターニアが神殿の地下遺跡に眠っている“ヌシ”を守ってるって話」


「ヌシ?さっきの話聞いた限りじゃリトートピアはオベロンとティターニアが絶対の神みたいな感じだったろ?そいつらを越えるような存在があるのか?」


「それが謎なの。ヌシについての逸話は一切無いの。ただ居るっていう話だけ。その正体や姿も全く。

まぁ言い伝えとかって本来はそういうのが当たり前なんだろうけど」


「リトートピアの場合は、守神であるオベロンとティターニアが国を治めてるって話は言い伝えや伝説とは解離して民によってあたりまえの事実になってる。

現にこの国はちゃんと回ってるしちゃんと活きてる。だからそこは問題じゃない、けどもしそれを越える存在が、妖精郷リトートピアのヌシが居るなら、それはいろんな意味で物凄いことだ」


「なるほど。たしかに興味深いなこの国は」


2人の説明を聞き尽くしたマモルがそう言った。


「それに、いいところだよ?」


リザが付け加える。


「ついたぞ」


そしてオシドの声。

マモルは前を向いた。


洗練された純の鉱石でつくられた壮大な建造物。見た目はもちろん、スケール、規模、あらゆる点で大きい。そして美しい。一種の聖なる大気、空間がそこに存在しており、神々しい静寂が張り巡らされている。

まさに神殿。神として崇められるに相応しい存在が存在するのに相応しい場所。


妖精郷リトートピア。フィリア神殿。



マモルは息を呑んだ。





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