第3話 神人類の王国にて
にぎやかに荷車や人が行き交う街中。
少し遠くに王城が見え、ファンタジーな世界観の光景。雰囲気はいかにも王国といった感じだ。
マモルはルガルクロの王都に辿り着いた。
「すっげえ…」
マモルは素直な心中を呟いた。
ゲームの中にいるかのような感覚の最中、しばらく呆然としていると
「オラ邪魔邪魔!道に突っ立ってんじゃねーぞ!」
背後から男の太いの声と車輪が勢いよく回転し、迫ってくる音が聞こえた。
マモルは咄嗟に車道から退き激突を回避する。
- 危ねえ。また突っ込まれて死ぬ所だった
「なぁ、アンタ」
荷車を避けたところで不意に誰かに話しかけられた。
声がした方向を向く。商人らしき男が立っていた。
マモルもそちらに向き直す。
「アンタ、変わった身なりをしているが、他所者か?」
「ああ」
と、マモルは一言。
男はさらに続ける。
「最近は多いな。けどさっきみたいなのは気をつけろよ。行商人や観光客、ルガルクロは忙しない所だからな。今はただでさえでかいイベントの時期だ。土地に不慣れな他所者に気を遣ってる余裕はないのさ。」
-なるほど渋谷みたいな所か。
マモルは男に尋ねた。
「俺はこの国のことも人のことも、何も知らない。俺は日本って国から来たんだ。あんた何か知らないか?」
「日本?いや、知らねぇな。聞いたこともねえ名前だ」
「…そうか」
「なんだ、アンタもてっきり観光客だと思ったが違うのか」
「いや、俺はただ元の国に帰りたいだけだ」
「はーん。まあ、帰る前にアンタも少しはこの国で楽しんでいけよな」
「そういえば、さっきでかいイベントがどうとか言ってたが」
「なんだそんなことも知らないのか?今ルガルクロじゃあ、王様が王座を降りるっつって、もうすぐ新しい王様が生まれるって大騒ぎだよ。数十年に一度の祭りみてえなもんだからな」
「新しい王様か…」
自分がいた現代日本とは全く異なる文化を目の当たりにし、
いよいよ本当に異国に舞い込んでしまったと再び理解させられる。
「なあ、1個聞いていいか?」
「あん、なんだ?」
「神人類って知ってるか?」
「…」
「…」
「…」
「…え」
- なんなんだこの空気
「逆に聞くが、アンタ、神人類を知らないのか?」
商人は驚き呆れた様子で聞き返す。
マモルは森で出会った少女のことを思い出した。
- そんな知ってて当然みたいな感じで来られても…
驚き呆れる商人は答える。
「いいか?このルガルクロは神の国って言われてる王国だ。ルガルクロを統制しているのが神人類だからだ。そんで、神人類ってのは人間を超えた特別な力を持つ人間だ。神により近しい存在だって言われてるよ」
「特別な力?」
「そうだ。それが神人類と俺らとの違いだ。まあ一応、神人類も俺たちも、神が産み落とし神の下に位置するっていう同じ括りにあるわけなんだが」
- 神に、神人類か…
「ルガルクロは神人類が沢山いるんだよ。強力な奴らが国を守っている。だからここまで大きくなった。」
「なるほどな」
現実では信じがたいことだが、今の現実はここだ。
- その神人類なら、俺のことや世界のことを知っているかもしれない
マモルは商人にもう一度向き直って言った。
「神人類に会いたいんだが、どこに行けばいいんだ?」
「神人類に会いたいって言ってもな…」
「なんだ、知り合いとかにいないのか」
「馬鹿野郎そんな当たり前みてえにそこかしこにいてたまるかよ。言っとくがこの辺のやつらほとんどただの人間だからな」
そう言って商人は周りを指す。
行商人、道を行き交う無数の人々。成程確かに文化は違えど特殊な人物がいるようには思えなかった。
「ルガルクロには神人類が多いって言ったが、それでも、だ。奴らは少数だし貴重なんだよ。大体が役職についてたり騎士団で王国騎士やってたりだ。それこそ王族とかだな」
「なら城にいけばいいのか」
「馬鹿か会えるわけねえだろ。時期も時期だ。
今は王様の退位と新王の即位の声明発表で大騒ぎだって言ったろうが」
「そんなん行ってみないとわかんねえだろ。とにかく俺は行くぜ」
「そうかよ。まあ精々気をつけな。王座周りや騎士団はピリついてるからな。余所者のアンタじゃ何しでかすかわかんねえ」
「忠告どうもな」
そうと決まれば、次に目指すべきは王城だ。
商人と別れ、マモルは王城へと向かった。
道中、王都の様子を見ていた。
髪色や容姿、格好はマモルの知る現代のものではなく生活や文化も大分異なるようだった。
しかし、こちらの世界の者からすればマモルの方がむしろ異端なのだろう。
この中にもしかしたら神人類がいるかもしれない等と考えているうちに、王城の前に辿り着いた。
これより先に進んでいいのか分からず王城の前で彷徨う。
イメージしていた警備等も特に見当たらない。
- 城って実際誰でも入れるもんなのか全然わかんねえな。気にしたこともなかった
当然だ。
やがて、城に入るだけならと、意を決して王城の門へと続く大階段を上る。
門の手前まで来たところで後ろから「おい、」と、声をかけられた。驚いて振り返る。
「君、王城に何か用か?」
おそらく騎士であろう人物がマモルの背後に立っていた。
警備の兵だろうか。怒られるだろうか。
「ああ、城に入りたくて、もしかして駄目だったか?」
と、マモルは答える。
「城に?何故だ?」
- え、
どう答えて良いか分からない。
「ちょっと、会いたい奴がいるんだが」
騎士の表情をうかがう。
騎士は少し変な顔をした。
「君、なんだか怪し……っっ、」
そう言いかけて騎士は突然倒れた。
そのまま騎士の身体は大階段を転がっていく。
- ヤバい。一体何が、
「おいあんた!!」
マモルはすぐに大階段を駆け下り、転がり落ちる騎士の身体を受け止める。
大階段の途中で何とか食い止め、騎士の状態を確認する。
騎士の身体は腹部から大量に出血していた。
- 血?こんな大量に、
動揺しながらもマモルは騎士に呼びかける。
「おいあんた一体どうし…」
しかし騎士の目に生気はなく、既に彼は死んでいたのだった。




