第33話 王都外にて
「ただいま」
「おかえり。マモル」
マモルは王都から戻り、森のツリーハウスにたどり着いた。
リヴァイアサンとの戦闘時に負った傷がまだ完全に癒えていない上、ルガルクロの王と対面したマモルは疲労でその場にへたり込む。
「大丈夫?」
「まぁ、な。さすがに疲れたよ…」
「そうよね、何かあったの?」
「王様に会ったよ」
「王様って、え、ストゥルグルフ家の?」
「そんな名前だったなたしか」
「え、ま、まぁそうよね。マモルがしたことは間違いなく王都を救ったわけだし」
「けど、もう王じゃなくなるらしいな」
「うん。王選ね」
「そう、それ」
「今のルガルクロは王選でバタバタしてるの。って話は前にもしたのよね?」
「ああ。俺ってヤバいのかな?」
「ヤバい…って?」
「あんまよくない状況なのかなーって」
「ガイアロックに捕まったりリヴァイアサンを倒しちゃったりしてるマモルは今、王都でもかなり目立ってるとは思うけど…」
「俺だって望んで足突っ込んでるわけじゃないからな」
「そんなの分かってるけど、しょうがないでしょ」
「…まぁそんな状況でそんな奴が急に現れたら目立たないわけないよな」
さらに疲れが増したような気がしてマモルはへたれ込んでいた体勢から潰れたような体勢になる。
「けど、べつに悪いことしてるわけじゃないし、」
「目立ちたくねーんだよ」
「マモルはルガルクロを守ったんだし、私は胸を張っていいと思うけど。ガイアロックに捕まったのだって間違いだって分かって今はこうして外に出れてるんだから」
「何度も死にかけたど」
「すぐそういうこと言う」
リザはマモルの頭を軽く撫でる。
「これでも私はすごく感謝してるんだから」
リザの手がマモルの髪に触れる。なんとなく温かい熱が互いに伝わっているような気がした。
すぐに手を頭から離す。
リザは赤面してマモルから目をそらした。
- 何やってんだこいつ…?
「おい、リザ?」
「な、なに!」
「え、なにって、どうしたの急に?」
「いや、いいの!もう、何でもない!」
赤面したままリザはマモルから目をそらす。
マモルには何が起きたのか理解できなかった。
「あ、そーいえば…」と、リザ。
「ん?」
「マモル、しばらく王都に呼ばれる用とかはない?」
「ああ、とくに無いな」
「そう、ならよかった」
「何かあるのか?」
「うん。行きたいところがあるの」
「行きたいところって、ルガルクロの外に出るのか?」
「そうよ。リトートピアって国」
「べつにいいけど」
「やった!じゃあ明日出発ね!」
「ねぇ俺の身体まだ死んでるんだけど!?」
潰れていたマモルがすっと立ち上がった。
「ほら、もう元気じゃない」
「元気じゃねーよ」
「うそうそ、冗談だって」
リザが笑って答える。マモルは再びしおれながら答えた。
「まぁ駄目ってことねーけど、」
「そーいうとこ!マモル甘いよねー」
さらに笑って答えた。
マモルは完全に根っこからしおれて潰れた。
- なんか、結局いいようにやられたな…
そのままマモルは眠ってしまった。
リザは寝ていたマモルの頭にもう一度触れる。
そのまま静かに頭を撫ではじめた。
「ほんとに疲れてたわよね。おやすみ」
そう言ってマモルに毛布をかけ、リザも部屋を出る。
扉に手をかけ閉め切る直前、そのわずかな隙間から再び部屋の中を見つめる。
「ほんとにありがとうね、マモル」
そのまま、扉は音を立てて閉じた。
翌朝。
「…起きてマモル」
「…」
「ねぇ起きて」
「…」
「マモル起きてって」
「…ぐぅ」
「起きろーっ!!」
「うわぁ、なんだよ!」
「ようやく起きたわね。おはようマモル」
「おはようじゃねーよ馬鹿」
「マモルが全然起きないからでしょ」
起床してすぐに言い争いをおっぱじめる。
つい最近までいろいろな出来事に巻き込まれていたことを考えれば平和になった方だと思った。
「マモル、もう準備できた?」
「ああ」
「もうすぐ竜車が来るから、それまで待ってて」
やがて、竜車と呼ばれる乗り物がやって来た。
馬車のようなものだろうか。馬の代わりにトカゲのような竜がそこにいた。手綱を握った青年も。
「おはようございます。よろしくお願いしますね」
「うん、よろしくお願いします」
竜車の運転者であろう青年とリザが挨拶を交わし、マモルもリザに続いて軽く会釈し、竜車に乗り込む。
竜車が走り出した。
森の中を一気に駆け抜ける。
- おお、速いな。
竜車の想像以上の速度に関心させられた。乗用車よりも遥かに速い。
「えーっと、リトートピアまで、でいいんですよね?」
「ええ」
「承知しました。けっこう距離があるので飛ばしますね!」
青年はそう言って手綱を再度、握りしめる。
竜車の速度が上がった。先ほどよりも速く周りの景色が到来し、過ぎ去っていく。
あっという間に森を抜けた。
そのまま王都とは別方向に竜車は走る。
そこはルガルクロの外側、果てしなく続く峡谷があった。




