第31話 楽園。そこは禁足地
存在自体が定かではない 楽園 。
そこに行く手段が仮にあるならば、マモルが元の世界に帰る手段もある。という希望があることになる。
「王様、あなたは神がいるって、信じているんですか?」
「ああ、半信半疑といったところだがな。ここは神人類の国だ。神がいるなら、その我らの遥か上に立つ存在が神だと私はそう思っている」
「楽園に行けば、神に会えると?」
「無理だろうな。楽園が本当に神の住む場所であるなら、楽園は我らが踏み込んでいいような場所ではないはずだ」
「国中のみんなは、楽園の存在はおとぎ話みたいなものだって思ってるんですよね、」
マモルの発言を切るようにアズールは答えた。
「だが先々代の王は、楽園の存在を信じた」
マモルは黙ってその話を聞く。
「巷ではただの噂として騒がれる楽園の存在。人知れず、先々代の王は実際に騎士団を引き連れて楽園へと向かった。だが戻っては来なかった。やがて先々代の王の聖結晶石が色を失い砕けた。それは彼が亡くなったことを意味する。全滅したんだよ。結成された部隊の全員がな」
アズールは憐れみながら懐かしむように話した。
「それから騎士団の大きな編成が行われ、先々代の王の死が公表されたが、楽園については一切触れられることはなかった。そして次に選ばれた先代の王、彼は楽園に干渉することを危険だと判断し、タブーとした。国の民はもちろん何かがおかしいのには気づいていたし、それらの言及もあったが、先代の王は最後まで楽園の存在を隠しつづけた。そして、今の我もそうだ。
我も、楽園については公表せず、噂を噂のままにしてきた。だが、
今になって我は、楽園に向き合うべきなのではないかと考えている」
「王…」
フルングニルがアズールを見つめる。そして、フルングニルがマモルに向けて話を始める。
「今ルガルクロは、新たな王を決める時期で少し内状が荒れている」
- 王選ってやつか。アガリオもリザもそんなこと言ってたっけ
「けど新しい王って、普通なら王族がそのまま引き継ぐものなんじゃ」
「もちろん、王家であるストゥルグルフの血族である我が息子も王候補の1人だ。だが先程言うように、楽園について、決めかねている状況でもある。楽園の公表を反対する者も当然数多くいる。次の王選では、王候補によって楽園へのこれからの対応の姿勢が変わる」
「そういうことかー」
「王候補は四人。王家の ジーク = ストゥルグルフ 様以外の三人は楽園に対し絶対不干渉の姿勢をとっている」
おそらく王様は先祖のこともあって楽園について明らかにしたいと思っているんだろう。けど反対が多い中で個人的な判断ができない。だから王選という形を取って唯一の楽園進出姿勢の王家の血統者に新王を継がせ、正面切って楽園を暴こうとしているんだ。
「どうして、歴代の王様たちは楽園に関わることを危険だと思っていたから干渉してなかったはずだろうに。なぜあなたは」
「神の居る領域になら、おそらく我らが望むあらゆるものがあるだろう。病を完全に死滅させる薬草。文明を破壊するほどの兵器。不死になる花。厄災を止める何か」
- たしかにそれらの発見は世界を大きく変えるものだろう
「予言書には、あらゆる厄災の記録が記されている。いつこの世界が終わってしまうか、それは遠い未来ではない」
- 楽園への進出は世界を救うためってことか
「王は王選を行う為、早々に退位なさった」
フルングニルがそう言った。
「話が脱線してすまなかったな。だがこの話も君に無関係ではないと思う。いずれ、君も」
アズールが含みのある言い方をする。
「……?」
- なんだ…?
しばらく沈黙が続き、やがて
「わざわざ出向いてもらってすまなかったなマモルくん。また、会う機会があれば」
アズールから話を切り出し、別れることになった。
マモルと共にアズールも部屋を出る。
再び複数の階段を降り、王城を後にする。
その最中、
「マモル」
フルングニルがマモルに声をかけた。
「ん?」
「お前一人で、リヴァイアサンを倒したのか?」
「俺も、はっきり意識あったわけじゃないすから、けど気づいたら」
「…信じられない。予言書に記された厄災だぞ?それを一人で」
フルングニルは動揺を剥き出しにしたまま話し続ける。
「どうやって殺したんだ、?」
マモルは不確かではあるものの鮮明な瞬間の記憶を思い出す。
「手から、光が出てきて、それが大蛇の頭を包んで、爆ぜて消えた」
「な、それは、お前の意思でやったのか?」
マモルは首を横に振る。
「あの時は、ただ必死だっただけで…」
「そうか」
落ち着いたようにフルングニルが答えた。
「あの、大丈夫すか?」
「ああ、大丈夫だ。すまないな。マモルこそ、もう大丈夫なのか?」
「まだ完全にってわけじゃないですけど、痛みはほとんどないっすね。リザと騎士団の人たちが治療してくれたって聞きましたけど」
「リザ…?ああ、あの少女か。なるほど。あの子のおかげで回復がはやかったわけだ。騎士団の治癒魔法だけではそこまでの効果は得られまい。いいパートナーを持ったな」
そう言ってフルングニルはマモルの肩に手を当てた。
- なんか勘違いしてるなこの人
「あれ、フルングニルさん?」
城を出て王都を歩いていた最中、不意に声をかけられた。
「おお、オリバか。久しぶりだな」
どうやらフルングニルの知り合いらしかった。
赤髪に大きなハットを被った青年。年はおそらくマモルより上だろう。
「珍しいですね、フルングニルさんが王都歩いてるなんて。0番隊の遠征はもう終わったんですか?」
「ああ、彼らもじきに戻ってくるだろう」
「あれ、そちらの方は?」
オリバと呼ばれていた男がマモルを指して言った。
「マモルだ。うちで雇われ用心棒として雇っている」
「雇われ用心棒って、騎士団には所属してないんですか?だったらうちに入ればいいのに」
「まぁいろいろ事情もあってな、ギルドより騎士団の方が都合がいいんだ」
- ギルド?
オリバという青年とフルングニルが話をする中、マモルはその会話から気になる単語を聞き取った。
「ああ、すまなかったなマモル。紹介が遅れた。ここにいる彼はオリバ = ハウス 。ギルドのオリバ隊所属の魔法師だ」
「よろしくね、マモル」
オリバという青年が手を指しのべ、マモルと握手を交わした。




