第26話 忌むべき存在
「マモル。ごめんね」
「まさか、この声…」
- さっきの大蛇か…!?
マモルはリザに迫る。
「なぁリザ!教えてくれ今の声は何だ?何が向かってきてる!?」
リザは別人のようだった。今の彼女からは持ち前の明るさのかけらも感じられない。
- 一体何が…、何がリザをこんなに…
リザは口を開く。
「何なのかは、私にも分からない。…ただあの化け物は私が呼んでしまったもの」
「…リザが、?」
- リザは、俺に話したいことがあると言っていた。それに王都との関係もよく分からないがあまりよくないらしい。リザには、何か秘密があったんだ。
「…マモル、実はね、私は “忌み子” なの」
「忌み子、?」
「忌み子は、厄災をもたらすと言われる存在」
「厄災をもたらす…リザが、か?」
リザは頷いた。
「だから、周りの人は私を嫌うの。私を避けるの。私を恐れるの」
「なんで…リザが忌み子って分かるんだよ、?」
「…予言」
「予言って、?」
「ルガルクロにある予言書。そこに、厄災をもたらす忌み子が現れると記されていたの」
「馬鹿な…」
「本当よ。予言書に記される出来事は必ず当たるの。現に私は、今までたくさんの人を巻き込んで不幸にしてきた」
「親とか、」
「親の顔も、知らないわ。物心ついた頃から私は一人だったの」
「…だから、この森に住んでいたってことか」
「そう、私の能力は自然と通じるものだった」
「……、」
「ここにしか、居場所がなかった」
「リザ……」
「けどね、マモルがこの森に来たとき、私と出会ったとき、私は生まれて初めて、人に優しくしてもらったの。それが本当に嬉しかった」
マモルは黙り込む。
「だからマモルに恩返しをしようとしたの。けど結局、巻き込んじゃった…。最悪だよね。」
マモルは何も言わなかった。
「だから、ごめんね。マモル」
「……あやまるな」
「え、。?」
「ここから先は王都だ。王城があって、街があって、人もたくさんいる」
「マ、モル、?」
「…止めないと」
そう言ってマモルは走り出した。
「…マモル!!!」
リザは叫んだ。
マモルは走り去りながら言い残す。
「おまえは大きな勘違いをしてる。俺が、絶対にそれを正してやるから、待ってろ」
マモルは視界が歪む森の中へと消えていった。
- あれだけの大きさの化け物だ。騒ぎになってないはずがない。騎士団も絶対に来る。だからそれまでは、奴が王都に到達しないよう止めないと。
しばらく走り続け、マモルは森を抜けた。
「……やっぱりかよ」
森を抜けた先、少し遠くに海が見える。港ではなく崖だ。そこを越え、陸地に進出した大蛇がこちらに向かって向かって来ていた。
マモルは辺りに切り倒され放置された倒木を一本、両手でつかみ持ち上げる。それを向かって来る大蛇に向けた。
距離は次第に縮まる。
「…ふぅ、……ふぅ、」
- 落ちつけ、船のときと同じように、仕留めにいくのではなく足止めを狙うんだ。
「…ふぅ、……ふぅ、」
大蛇は、もうすぐそこまで来ていた。
「…ふぅっ…ふぅっ…ふぅっ…!!」
グォォォオオオオオンンンッッッッ!!!!
とうとう目の前。大蛇は口を大きく開けて雄叫びを上げ、マモルを飲み込もうとする。
「うらぁぁぁぁっっっ!!!!」
マモルも自身を奮い立たせそのまま大蛇へと突っ込んで行く。
持っていた倒木の先を大蛇の舌へ突き刺す。
グォォォヲヲヲヲヲヲヲンンン!!!!?!
苦痛による雄叫びを無視し、突き刺した倒木の反対側を大蛇の上顎に当てる。
マモルの狙いは成功。大蛇は口の中の倒木に突っかかえその場で暴れ回る。
「よしっっ!!!」
マモルは後退する。
まだ大蛇は森にすら到達していない。
- さて、ここからどうするか…
マモルはノープランだった。
- やがて倒木も外れ、再び進行は始まるだろう。それまでに次の手を打たねーと…
グォォォオオオオオワワワワンンンッッッッ!!!!
大蛇は倒木を噛み砕いた。
- 早っっ!!
興奮し、怒り狂った大蛇が再び突っ込んでくる。
- くっそ…、何か、何かねーのか!?
マモルは辺りを見回す。
「全く、無茶をする」
背後から近づいていくる声。聞き覚えがあった。
「スザクさんっっ!!」
マモルの声を受け、現れたスザクは銃をかまえる。
「はいよ!!」
銃から大岩が発射された。
「インフェルガウスッ!!!」
正面から大岩を食らった大蛇は再び進行を強制的に中断させられる。
「マモルッ!」
「スザクさん!助かりました」
「安心するのはまだはえーぞ」
「他の騎士団の部隊は!?」
「今向かってるが、まだ到着はしてねぇよ。緊急事態だ。まだ王都の混乱は起き始めたばかりだ」
「あの化け物を、王都まで到達させるわけにはいきません」
「ああ、もちろんだ。分かってるよ。他の部隊の到着もそこまで期待はできない。マモル。俺とおまえの二人でやつを止めるんだ」
「はいっ……!!」
「来るぞ…、!!!」




