第2話 紡いで繋がった糸よりは絆
「どこって、神の国、ルガルクロ王国。よ?」
少女はこちらに、不思議、というか不審そうな顔を向けて答えた。
「知らない」
聞いたこともない国だった。
そもそもそんな国があるはずがなかった。
「ルガルクロのこと知らないって、うそ、東方の最大の大陸にある名高い大国なのよ?」
「聞いたことねえ」
「聞いたことないってそんな、ほんとに、?
じゃ、じゃああなたの名前は?」
「俺は六道 護。」
「りくどおまもる…外の国の人でも聞いたことのない雰囲気の名前ね。なんだかちょっと可笑しな感じ」
出会って間もない相手にさりげなく自分の名前をdisられたのがなんだか刺さった。
しかしそれによって冷静になり、少し落ち着きを取り戻す。
「…え、ああ馬鹿にしてるわけじゃないのよ!?そんな顔しないで!」
どうやら顔に全て出ていたらしい。
おほん!と、誤魔化すように咳払いをする。
ふと、彼女の手の指が出血しているのに気がついた。
「なぁおまえ、その手」
少女は自身の手を見る。
「あ、血が。気づかないうちに切ってしまってたのね。大丈夫よ。これくらい!放っておけばすぐ治るんだから」
少女はこちらに手を振って見せて自分は平気だとアピールする。
たしかに大した怪我ではなかった。
普段から怪我の多かったマモルにとっては尚更。
しかしそれはマモルに限った話である。
「これ、貼っとけよ」
受けた親切に親切で応えるべく、マモルはジャージのポケットに入っていた絆創膏を差し出した。
「ん、なに、これ?干物?」
少女は再度、不思議そうな顔をする。
- こいつ馬鹿なのか
「絆創膏だよ。バンソーコー」
「バンソーコー?」
「知らないのか?」
少女がウンウンと頷く。
「ほらよ」
少女の手を取って絆創膏を出血している指の箇所に貼ってあげた。
「…これで傷が治るの?」
「そうだ」
「マモル?よね?ありがとう。こんなの初めて見た。マモルがその、ところから来たっていう話、本当みたいね」
「ああ」
「力になってあげたいけど、私本当に何も知らないの」
さらに続ける。
「この先を行って森を抜けると王都に出るの。王都なら誰かがマモルの国のこと、知ってるかもしれないわ」
「ルガルクロの王都か?」
「そうよ。けど…」
少女は躊躇って何かを言いかける。
マモルが首を傾げた。
王都に何か問題があるのだろうか。
「行けば分かるわ。私にできるのはここまで。
さよならマモル。またどこかで会えたらいいわね」
「ああ」
彼女にも彼女の事情があるのだろうと悟ったマモルは、
それ以上は何も言わなかった。
少女と別れ、言われた通りに王都へ向かって歩いた。
動揺はあるものの、マモルは今自分がいる世界が元の世界と違うと徐々に理解し始めていた。
あの時、事故に遭った自分は確かに死んだはずだ。
しかし今、確かに生きている。
分からないことだらけだが、これは単なる夢ではないと、
それだけがはっきり分かった。
マモルはやがて森を抜けた。
少女の言ったように王都が見える。
彼は再び歩きだした。




