第22話 震撼する大海の夜
船がルガルクロの港から出航してからおよそ5時間。
輸送船の行方不明が多発するという海域に入った。
「こっからだな」
と、スザク。余裕はあるが決して油断はしていない。周囲を警戒していた。大匡洋という大海の中、灯りもなく夜中であるため視界ははっきりしない。
「真っ暗っすね」
「そりゃあな。海だぞ海」
「船の灯りをともさないのは標的になるのを防ぐため、ですか?」
「そうだ。海には何がいるか分からない。万が一、輸送船が行方不明になってる原因が何らかの敵の襲撃とかだったらヤバいからな。格好の餌になる」
「スザクさんは、何らかの敵がいるって考えてるんすか?」
「いや、どうかな。まぁそういう可能性だってなくもないんだろうけど、海の巨大生物とかのが納得できるかも」
「鉢合わせたら戦闘っすか」
「そうなるだろうな。一応、調査って名目だけど騎士団の二隊分の作戦班だからな、マモルもいるし、申し分ねぇんじゃねーかな」
「…俺は用心棒すから、ただの」
「それ、もう騎士団みてーなもんだろ」
「やっぱ、そうなんですかね」
「団長にうまく言いくるめられた感じか」
「騎士団に正式に入らずに、雇われ用心棒として活動はともにするって感じです」
「団長の狙い通りだなそれは。けどマモルがそれでいいならいいと思うよ俺は」
「仕事っていっても、何やったらいいか分からないんでこういう方がいいかなって」
「マモルはそういうの考えるの苦手なんだろ。見た感じ不器用だしな」
「間違ってないです」
「だよな。って言ってもそれを攻めてるわけじゃねーからな?俺だって頭使うのは苦手だよ。能力にまで性格が出てるからな」
「スザクさんの能力って、確か…
マモルはガイアロックでのヘルガとの戦闘を思い出す。
…銃から火をだす、みたいな?」
「おう、まぁそうなんだけどそうじゃねーよ。
俺の能力は “ 無敵の轟銃 ” インフェルガウス
その時に最も有効な攻撃を銃が発射するんだ。」
「最も有効な攻撃?」
「まぁイメージがつきにくいとは思うよ。あの時で言えば、炎の塊が発射されたな。狭い一本道で退路も確保できない状況だったから斬撃の効かない攻撃として
炎の塊が発射されたんだ。今までにも虎とか発射されて出てきたことあるぞ」
「虎…!?」
「ああ、無茶苦茶なんだよ能力ってのは。強力だし同じ能力が他には無いってのが強みなんだけどな」
「だからラグナは強いんですね」
「そうだな。まぁ身体的な面でも強化されるし、皆訓練とかはしてるから強いわけなんだけど、能力の要因はデカいな」
ゴォォオオオオ と、突如揺れる。
突然の事態に全員が動揺した。
「しゃがめっ!!立ち上がるな!!」
カイの一言で全員がその場にしゃがみこむ。
「一体何が起きてるんだ、!?」
「船がっ…!巨大な生き物でもいるってのかよ!?」
「全然おさまんねぇぞ!!」
皆が混乱し、叫びに近い声をあげる。
- 揺れてる…船が、か?いや違う、“船”がじゃない…
「海だ…」
マモルはそう言った。マモルもこの状況下で混乱していたものの、微弱な冷静さを保っていた。
「海ごと、揺れてるな…」
隣にいたスザクもマモル同様の発言をする。
「けど海が揺れるって、一体…!?」
- 陸でもないのに地震!?か?ありえねぇぞ、おい。
いくら異世界だからってそんなことあるか、!?
揺れは止まらない。全員が未だしゃがみ込む中でスザクは立ち上がり、船の枠の手摺りにつかまる。
そこから海を見つめた。
「…!!?、これは…」
マモルもなんとかして立ち上がり、船の外を見た。
「…!!…なんだ、あれ…?…」
真夜中の大海、光もなく暗黒の中、遠くにうすらと、しかし確実に、うごめく “ 何か ” がいた。
「生きてる…、あれは生物なのか、?…」
「しかもデカい…あんな生き物がいんのか、!?」
「…おい、なんだか近づいてきてないか…、!?」
「なっ!!?」
その巨大な “ 何か ” は確かに先程よりも船に近づいていた。よりハッキリとその姿を目で捉えられた。
「…蛇っ!!?」
「引きかえすぞぉっっ!!!!」
もはや揺れがどうこうという問題ではなくなった。全員、跳ね上がるように動き始める。
船を大蛇のいる反対方向、つまり元来た道へと動かす。逃げることに必死だった。
「やばいやばい!!あんなの、全員死ぬぞ!!!」
「もっとスピード出ねぇのか!?このままだと追いつかれるぞ!?」
「いいから動かせ!!ほんとに死んじまう!!!」
「喰われたくねぇっ!!!」
「嫌だぁぁっっ!!!」
全員が恐怖に叩き潰されそうになりながら叫ぶ。
王国騎士団1番隊の隊長であり、作戦のリーダーであるカイでさえ相当焦っていた。
マモルやスザクも同様。
- まずい…!!、一体どうすれば…!??」
その直後、
グウォォォオオオオンンッッッ!!!
と、その巨大な蛇の化け物は唸り、雄叫びを上げたのだった。
まるで、獲物を前にして奮い立つ獰猛な獣のように。




