第20話 何でも屋、始めました
「私がルガルクロ王国騎士団団長。
フルングニル = クルオゼフ だ。」
そう言ってマモルに手を差し出した。
「リクドウ マモルです。」
マモルも手を差し出し、二人は握手を交わした。
「君がマモルくんか。たしかに勇ましいな。だが死んだような目をしている」
- 初対面でそんなこと言うのかこの人。
「大丈夫です生きてます」
「失礼なことを言ってしまったかな。褒めたつもりだったんだが。」
- 死んでるのに、!?
「団長、死んだような目は褒め言葉じゃありませんよ」
と、ユーシア。
- あたりまえだ。
と、マモルも思った。
「いやいや、死んだような目だ。死んだように静かで澄んでいる。猛者の証だ。我々とは違う環境だが、間違いなく厳しい努力と鍛練を積んでいる」
マモルは少し驚いた。
「たしかに、強いと思いますよマモルは。直接見たわけではありませんがガイアロックの処刑を生き延びた人間ですから」
ユーシアもフルングニルの意見に賛同した。
「それよりも、君に礼を言わなければな。マモルくん、ガイアロックの件は本当に世話になった。そしてとても申し訳ないことをした。罪の無い一般人を監獄に叩き込み、挙句利用までさせてしまった」
フルングニルはマモルに頭を下げた。
「…信じてもらえるとは思いませんが、実は、俺は別の世界からこの世界に来ました。だからこの国のこともよく分かりません。少しでも情報がほしくて協力しました」
「…なるほど。たしかに信じられない話だが、我々の恩人の話だ。信じよう」
「俺は、日本という国から来ました。何か知っていることはありませんか」
「にほん……。いや、聞いたこともない国だ。それが君の故郷か。力になれなくてすまない」
「そうですか。分かりました」
- また、駄目だったか。王国騎士団の団長でも知らないとなると、もう知ってるやつなんていないのかもな。
「他に何か困ったことがあれば言ってくれ。力になろう。」
「じゃあ、仕事紹介してください。」
「仕事って、働きたいってこと?まぁそうか。マモルはお金もないだろうし。」
「仕事か。何か希望はあるか?」
「…何がいいんですかね。」
「騎士団に入るのはどうかな?マモルの実力なら申し分ないだろう」
「私としてはそれでも構わないが…」
「…いえ、それは嫌です。それ以外でお願いします」
「そうかー。ぼくはいいと思ったんだけど。にしても嫌って傷つくなぁ」
「マモル本人が言うならしょうがない。私としても少々残念なところではあるが。…まぁ、そうだな。
雇われ用心棒とかがいいんじゃないか?」
「雇われ用心棒…?」
「いわゆる何でも屋みたいなものだ。依頼を受けて行動する。」
「しかし団長、それでは安定した収入は得られないのでは?」
「雇われ用心棒として騎士団におくんだ。収入も我々騎士団が保証しよう。」
「それでは騎士団に入るのと変わりはないと思うのですが…」
「いや、騎士団には所属しなくていい。だから任務に無理矢理参加することもない。騎士団が、君を雇おう。君の意思を最大限尊重でき、我々騎士団にも利がある。どうだ?」
「…分かりました。ではそうさせてもらいます」
マモルは承諾した。
「ならとりあえずこれを、」
フルングニルはマモルに包みを渡した。
「これは、?」
「祝い金だ。君の雇われ用心棒としての、な。あとガイアロックの件の分もある」
包みにはかなり多くの紙幣が入っているらしかった。
- 服くらい余裕で買えそうだ。
「ありがとうございます。フルングニル団長」
「ああ、君のことは騎士団の仲間のつもりでいることにするよ。ごくろうだった」
「はい。では失礼します、」
マモルがそう言いかけたとき、
「…では、マモル。早速君に仕事を依頼したい」
- いきなりかよ。
「何でしょうか?」
「…実はな、最近ある事故が頻発しているんだ」
「事故?」
「もしかして輸送船のですか?」
「そう、ユーシアの言う通りだ。ルガルクロの南の港側、大境洋の沖の海域で輸送船が消える事故が頻発している。」
「消えるって、消えるんですか?」
「詳しいことは分かっていないが、物資や乗組員もろとも輸送船が行方不明になっている。痕跡はなく、消えたとしか考えられないらしい。」
「噂は本当だったんですね。」
「その事故自体はな。事故と言っていいのか悩むところだが。」
「俺に、その海域へ行けと?」
マモルはフルングニルに尋ねた。
「ああ、そうだ。こちらでも捜査班を結成してある、彼らと共にその海域を調査してほしい。」
「最近、物資の流通にかなり大きな影響が出てますからね。大きな問題ですよ。」
「…いきなりですね。随分と」
「急を要するからな。それに君の実力がどれほどのものか知っておきたい。頼めるな?」
「…分かりました」
しぶしぶ、マモルは返事をした。
「では、明日の夜。ルガルクロの南港に集合してくれ。」
マモルは本部を後にし、王都を歩いて森へと戻る。
- あ、服買わねーと




