第13話 八頭蛇は廻り裂く
「言ったはずだ。もし、俺を裏切ったら…殺すってなぁあっっ!!!」
ヘルガのオーラは鋭く形を変えてこちらに向かってくる。
アガリオは自身のオーラを一点に集中させ、右手の先を向かってくるヘルガのオーラに対し向ける。
それは盾となってヘルガの攻撃を止める。
2つのオーラが衝突し、大気が震えた。
激しい衝突の最中アガリオが言った。
「ヘルガ。君も、君たちも、いずれは全員僕ら騎士団が捕らえる」
「王国騎士団風情が…、調子に乗るな。まずはお前から殺してやる」
そう言ってヘルガは隠し持っていた刀剣を手に持った。
アガリオも腰から西洋刀と思われる刀剣を抜く。
互いに剣をかまえる。
オーラのぶつかり合う攻防から一変、刀剣同士が斬り合う戦闘に発展。
その戦い方は見事なものだった。並みの使い手ではない2人、騎士と盗賊の衝突、
騎士であるアガリオの腕は言うまでもないが、ヘルガもそれに劣らぬ剣技であった。
アガリオがヘルガの異変に気がつく。
「くるか」
ヘルガのオーラの色が変わった。さらに覇気が強まる。
「…これで逝け」
アガリオは剣をかまえ直し、受けの体勢に入る。
ヘルガの剣にオーラが集まりだした。
“ 八頭
蛇は廻り裂く(ヤマタノブレイド) ”
ヘルガはアガリオの方へと一気に駆け寄り距離を詰めて剣をふるった。
アガリオはそれを剣で受ける。
その直後、追い打ちをかけるように数発の斬撃がアガリオの剣身に繰り出される。
アガリオは斬撃を耐えるが、ヘルガはその間にも攻撃の手を緩めない。
とうとうヘルガの剣先がアガリオの左腕を捉えた。
だが、傷は浅い。かすった程度であった。
アガリオはそのまま後方へ下がり距離を取る。
と、同時にアガリオの左腕に斬撃。
今度のは完全にヒットしていた。
「…っ!!」
アガリオは苦痛で声を漏らす。
左腕からはけっこうな量の出血。
「どうだ!?騎士団の隊長さまよぉ!、」
「たしかに…、これはなかなか強力だな。あの程度のかすり傷のはずがこれだけの損傷。当たった時点で大ダメージなわけだ」
「そうだ、剣に触れた時点で終わり。俺の蛇が斬りかかる」
「蛇、それが君の能力?」
「八頭蛇は廻り裂く。剣身に当たったものへ追い討ちで8発の斬撃が展開される」
「なるほどね、だから8発の斬撃ってわけか」
離れたところから見ていたマモルは目を見開いた。
- あれがラグナ…か。そしてその能力。
たしかに人間離れしている…。
「剣と剣がぶつかり合えば、8発の斬撃。だが身体に触れれば八つ裂きは必中」
「必中の斬撃。俺の能力より便利だなぁちくしょう」
アガリオは苦笑いで答えた。
「あの一撃だけで既に左腕にも相当のダメージだろう。おまえに勝ち目はない」
「…いやいや、そうでもないよ?」
アガリオはそう言ってヘルガに剣を向ける。
「無駄だ」
「無駄じゃあない」
「おまえ1人で俺に勝てるわけがねぇよ、」
「最初から、僕1人で君には勝つことが狙いなわけじゃない」
「ほざけっ!!」
ヘルガは再度アガリオに斬りかかる。
アガリオは受け止めるが…、
- さっきよりも剣を振るう速度が落ちている。腕の痛みがひどいんだ
マモルはそれに気づいていた。もちろんアガリオに相対しているヘルガも同様。
アガリオはそのままの体勢で8発の斬撃全てを受け止め、ヘルガの剣を飛ばそうと剣を振るう。
ヘルガは剣を離さなかったものの、反応が一瞬遅れる。
今度はアガリオは剣を頭の上からふるい、ヘルガに斬りかかる。
が、ヘルガに比べ大剣のアガリオは重く斬りかかるまでの間にヘルガは自身の剣で受けの構えをとる。
「ばーか」
ヘルガはアガリオの一撃を受け止めた、が、勢いが殺せない。むしろより強くなる。耐えきることができない。
大地が唸る轟沈
「…轟沈」
ヘルガはそのまま地面に叩きつけられた。
「かっはっっ!!!」
「バカだなぁ、踏み込みすぎなんだって」
そのままヘルガは沈む。
起き上がることができない。
アガリオの能力は 大地が唸る轟沈 (ドレスガンハンク)。下方に対しての斬撃に "轟沈" という効果を与えるというものだった。
人間離れした力が刹那の戦闘の中に垣間見えた。
彼らが、神人類と呼ばれ、神により近い人間の進化ともいえる者たちであった。




