第12話 出る杭は打ち返す
「それで、決行はいつだ?」
「…今夜だ。」
- …へ、!!?
マモルは予想外の返事にかなり驚いた。
「…今夜、か?」
「ああ、」
「ちょっと、それは急すぎないか」
「そんなことはない。前にも言ったが既に脱獄の手段を知っている。行くと決まれば早急に決行する」
「…」
マモルはどうするべきか分からなかった。
- どうする。これじゃアガリオに計画を伝えられない…。
「このまま、自由時間が終わるまで檻の外で待つんだ」
ヘルガはそう言った。彼は既に脱獄に向けて動いていた。
「……」
「何だ?何か問題か?」
「…アンタはガイアロックの構造を知ってるのか?」
それを聞いたヘルガはマモルの顔をじっと見る。
「…おまえ、ガイアロックの構造が脱獄のカギになると気づいたのか?」
「ああ、この建物は全体的に何かがおかしい。多分その違和感の正体がガイアロックを最強の監獄にしているんだと思う。」
「…その通りだ。ガイアロックは複雑な構造から成り立つ監獄。正直、俺も詳しいことは知らないが、ただ上に47階を目指すよう言われた」
「47階、どうすれば行けるんだ?」
「エレベーターだ。隠されたもう一つのな」
マモルはその言葉に食いつく。先程まで、それを探して監獄内を歩き回っていたのだ。
「一体どこに、そのエレベーターがある?」
マモルがそう言った時、ガチャッガチャッと音がした。その音はフロア全体に響きわたる。自由時間が終了し、全ての檻が施錠されたのだった。
音が静まり、再びフロアに静寂が訪れる。
「これを、待っていた。」
ヘルガは答えた。
そのまま話を続ける。
「消灯時間。つまり自由時間が終了し就寝に入るこのタイミングで檻は施錠される。そして同時に、ある檻が解錠される。ここがそうだ」
そう言ってヘルガは目の前の檻を開ける。
本当に鍵はかかっていなかった。
扉が開く。
ヘルガは檻の中へと入り壁を押すように触れた。
すると、壁は二つに裂け静かに横へと動く。
そこにエレベーターが出現した。
「行くぞ」
ヘルガがエレベーターに乗り込み、マモルもそれに続く。扉が閉まった。
ヘルガは47階のボタンを押す。
ゴォォンと音を立て、エレベーターは動き始めた。
そのままおよそ3分が経ち、エレベーターは止まった。扉が開く。
2人はエレベーターを降りた。細く、先の見えない真っ暗な道が伸びていた。
「ここが47階なのか」
「ああ、そして外へつながる道のはずだ」
2人は真っ暗な道を歩き続ける。
先は見えない。
道はひたすらに続いていた。
「俺は、自らガイアロックに入った」
不意にヘルガが口を開いた。
マモルはアガリオに言われたことを思い出す。
できる限り多くの情報を聞き出すこと。
「どういうことだ?」
「白龍を、知っているか?」
- 白龍…。
アガリオの言っていた盗賊集団の名だった。
「名前くらいは」
「俺は、白龍の一員だ」
ヘルガはそう言った。
そのまま話を続ける。
「俺たちは、ある目的のために人手が要る。
おまえのような猛者を集める必要があった」
「ある目的ってのは、?」
「……楽園だ。」
ヘルガは答えた。
「…楽園?って、何だ?」
「…神々が存在する超常の場所だ。伝説のような話だが人智を超越したあらゆる資源や生物が存在するらしい」
その時、2人の目の前に壁が現れた。
道はそこで行き止まりだった。
「どういうことだ。47階は地上につながる道だと、そう聞いたんだ。どうして…、」
「残念だったね、ヘルガ」
突然、背後から声がした。マモルとヘルガは後ろを振り返った。
「君の言う通り、たしかに47階は地上につながる道だ。けど、条件が揃わない限りは絶対に外には出られない」
暗闇から声の主が姿を現した。
「君はここで終わりだ」
- アガリオ、なんでここに、!?…
唐突な脱獄でアガリオに情報を伝えられなかったマモルはアガリオが監獄へ来ていたこと、そして行く先で待ち構えていたことに驚いた、
ヘルガは唇を噛みしめる。盗賊であるヘルガにとって騎士団は紛れもなく敵だ。
「王国騎士団…か」
「ぼくは王国騎士団6番隊隊長、アガリオ。
マモル、間に合って良かったよ」
「…そうか、そういうことか」
ヘルガは呟いた。
殺気を放っている。
マモルはヘルガから離れ、構える。
「俺は最初から、誘い込まれていたわけか…」
ヘルガは黒いオーラを放つ。
「マモル、下がって」
「ムカつくなぁ…。マモル、おまえもそっち側の奴だったってことだなぁ」
アガリオは、ヘルガと対照的な白いオーラを放つ。
「ラグナの戦闘に、力をもたない人間が加わればたとえ君でも死ぬよ」
マモルは言われた通りに2人から距離をとる。
マモルも、何かの異変には気づいていた。
怒り満ちた声でヘルガは言った。
「言ったはずだ。もし俺を裏切ったら…
ヘルガのオーラは形を変える。
「殺すってなぁあっっ!!!」




