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シルバーオーヴと異世界最果ての楽園  作者: 露天浮録
【第1章】 厄災を呼ぶ妖精少女 篇
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第9話 最深部の囚人


「協力って、何だ?。」


「脱獄だ。」


男はそう答えた。


「…脱獄だと、?」


「あぁ、」


ヘルガと名乗った男は淡々と答えた。

目つきが不気味だ。

マモルは思いもしなかった唐突な発言に動揺する。


- 脱獄って、こいつ本気で言ってるのか?


「なぜ俺を誘う?俺はあんたのことを知らない。」


ヘルガは微笑して答える。


「昼間の処刑を見た。お前のな。」


それを聞いたマモルは何となくヘルガの考えを察した。


「俺を脱獄に利用する気か?」


ヘルガはさらに笑って答える。


「少し、違うな。俺の目的は脱獄で手を借りることじゃない。脱獄した後にある」


「…後、?」


「あぁ、まだ詳しくは言えないが。

お前は、並みの人間じゃない。あの戦い方を見れば分かる。

お前のことを買ってるんだ、俺は」


マモルには男の意図が読めなかった。


- この男、何を企んでる?


「これはただの誘いだ。お前にその気があれば、俺の話に乗ってくればいい」


男はマモルとは反対の方向を向き、やや振り返る。


「…また来る」


「……」


男は闇の中へ消えていく。


「あぁ、そうだ、」


今度は振り向かず、去り際に男は言った。


「この監獄は通常では絶対に突破できない。だが、俺はその手段を知っている。もう一度よく考えろ。」


そう言い残して男は完全に去った。


- 何だったんだ、あの男…



マモルは再び床に横になった。

寝入るまでの間、ずっとヘルガと名乗った男のことを

考えていた。


マモルにも分かっていた。



- あの男は、只者じゃない。









翌朝。


ギィィイィィンンッ!!

ギィィイィィンンッッ!!


いつもの如く、起床の鐘が鳴った。

嫌なことは嫌だが、いい加減慣れたものだった。


マモルは起き上がり素振りから入り、壁を殴るトレーニングを始める。


正午過ぎ。マモルは昼食を終えた後、珍しく、というか始めて自由時間に檻を出た。そのまま21階を歩き、エレベーターへ向かった。

道中、数々の檻の前を通っていたわけだが、マモルは公開処刑のことがあって一目置かれていた。

囚人たちは歩いているマモルを義務であるかのように見つめる。


- 何か、慣れないな。それに落ち着かない。


マモルは足を止める。エレベーターに到着した。扉が開かれ中に入る。ボタンが1階から、2階、3階、4階と、47階までずらっと縦に並ぶ。


マモルは43階のボタンを押す。

しかしエレベーターは動かない。


- 動かない、行けないってことか?


「何やってんだ??」


不意に背後から聞こえた声。その主は容易に想像ができた。ラタである。


「よ。」


「おまえ、こんなとこで何やってんだ?」


「それは俺の台詞だっての!おまえがエレベーターの方に向かってったから追いかけたんだよ。」


と、ラタは答えた。いつもの軽い調子であったが心中ではマモルを心配していた。昨日の公開処刑の件を気にしていたのだ。


「ってか、おまえが自分の檻から出るなんてめずらしーよな。いつもなんか素振りみたいなのやってるから。どっか行きてーのか?」


マモルは指で階数の書かれたボタンを示す。


「43階」


「43階、!?」


ラタは声を上げた。


「うるさいおまえ」


「おまえが43階に行きたいなんて言うからだよ!

行けるわけねぇだろ」


「やっぱり行けないのか?」


「当たり前だろ。前にも言ったろ?39階より下は化け物の囚人ばっかだから隔離されてんだよ。39階以上の囚人と干渉させねーよーにな」


「…行く方法ないのか?」


「俺が知るわけねぇだろ。まぁ多分、俺たち囚人には無理だな。階長とか、監獄長とか、監獄側の奴らがどうやって行ってるのかすら分からねぇからな。エレベーターはここの一本だけだしな」


「他の階に、別のエレベーターとかはないか?」


「無い。断言してやるよ。俺たちが自由時間に移動できる範囲には、この全ての階につながってるエレベーターが一本だけだ」


「なんでそれが分かる?」


「なんでも何も、ねぇんだよ。見りゃ分かる。」


マモルは黙り込む。


「まぁ、おまえがなんで43階なんて行きたがってるかは知んないけどよ。やめとけ。行けっこねぇ」


マモルは考えた。

そして、妙な不信感を抱く。


- 何か、違和感がある。何かは分からないが、どこかが絶対に変だ。


マモルはそのままエレベーターを出て自分の檻へと戻る。


「あ、おいマモル!」


ラタも後を追った。








その夜。就寝前。


マモルは昼間の話について考えながらトレーニングをしていた。


- 分からねぇ。絶対にどこかおかしい。間違い無いんだ。それは一体何だ?


マモルは妙な不信感が引っかかっていた。


「マモル」


人の気配はなかったはずだが背後から声がした。

マモルは思わず手を止め、声がした方を向く。


「久しぶり」


アガリオだった。


「…アガリオ」


「…聞いたよ。処刑、されかけたんだってね」


「…あぁ。まさか、おまえの言う通りこんなに早く選ばれるとは思わなかった」


「けどよかった。よかったって言っていいのか分からないけど。すごいよ、君は本当に処刑から生き延びたんだ。こっちもかなり進展があったよ」


マモルはアガリオの話に食いつく。


「何か分かったのか?」


「ああ、実は… と、アガリオは話し始める。


「例の兵隊殺しの事件、君がその容疑者であるという線はほぼ完全に外された」


「え、」


マモルはそれを聞いて驚愕する。


「ってことは、俺はもうここから出られるのか?」


アガリオは頷く。


「そうなるね」


マモルは声を上げずに拳をにぎる。

監獄内で一度死にかけ、それを乗り越えてようやく解放されるのだ。



アガリオは、さらに話を続ける。


「そして…マモル。実はその上で君にお願いがある」


「お願い…?」


「あぁ、」


アガリオは申し訳なさそうに言った。




「僕に…、騎士団に協力して、もう少し監獄にいてほしいんだ」








「……え、?」


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