始まりへの兆し
「生きたいか・・・・」の声の主。誰だったのでしょう?
その空間には、紅蓮が広がっていた。
ただ燃え続けるだけの灼熱の炎がその空間に広がっていた。
「なんだよ…ここ……」
と、いきなり周りの業火が一点に集中し始めた。
いつしかその炎は「剣」のような姿へと変わり果てた。
「なんだ…これ……?」
すると突然、
「どうだ?死んだ心地は?」
「どぅえ!?剣が喋った!?ていうかさっきの声と一緒……!さっきの声の主はお前か!?」
「ああ、そうとも。確実に、絶対に、100パーセントオレだ」
「・・・・」
「お前はさっき、無残にも殺された。悪魔の手によってな。このまま天国に行くのかなあとか地獄に堕ちちゃうのかなあとか普通は思うよなあ?それがまた違うんだなあ、お前の場合は」
レイヤは「場合」という言葉の意味を一瞬不思議に思ったがすぐに感づいた。
「お前はシルブァの血を引く者。そんな簡単に死なせるわけにはいかない」
「オレを殺したアイツもそんなこと言ってたぞ。何なんだよ、シルブァって…」
「いずれ、知ることになるさ。そんな生き急ぐことはない」
「・・・・?」
「まあとにかくこの話はおいといて…お前、生き返りたくないか?生き返るつっても戦う運命からは逃れられないけどな」
「戦う……運命………?」
「ああ、お前が行く世界はこの世界とはちょっと違うぜ。まぁこの世界で言う異世界転生ってやつだな」
「その、戦うって言ってもなにと戦うんだ?」
「その世界には3つの種族が存在する。天使、悪魔、堕天使だ。この3種族は大昔権力を巡り争い始めた。オレたち神器をつかってな。ひでえ戦争だった……関係ないやつまで巻き込まれて死んでいった……何年も争い続けた挙句、なにも変わらなかった。変わったといえど死人が数え切れないぐらいでただけどな。しかも、神さんの怒りも買っちゃったわけだ。オレたち神器は封印された。こんなことが二度と起きないようにな。しかしまた、この3種族が争ってんだ。またあんなことが起きたらどうしようもない。そこでだ。生き返らせる代わりにこの争いに終止符を討って欲しいって訳なんだが……」
レイヤは息を整え、決意した表情でその「神器」をその眼差しで見つめる。
そしてーーーーーーーー
「やってやる!!」
「そ、即答!?本当にいいのか!?」
「こんな大事なチャンスを逃すほど、オレはバカじゃない。それに、その世界救って勇者様目指すってのも悪くないしな!」
「契約成立だな。オレはヤマト。よろしく頼むぜ、相棒!」
「ああ、オレはレイヤだ。頼りにしてるぞ、相棒!」
段々と周りの景気が崩れてゆく。
そして、目の前があたり一面真っ白になった。
そこには日本のものとは思えない光景が広がっていた。
レンガ造りの家々が並び、馬車が街の中を音を立てながら走り去っていく。
「うぉぉ……!!マジで来ちまったのか異世界に……!!テンション上がるな、オイ……!!ていうか、あれ?ヤマトは……?」
確かに一緒に転生したはずのヤマトはその場に見当たらなかった。
「ぅおい!!ちょっと待て!ヤマトどこいった!?オレはこれからどうしろと!?」
レイヤは完全にパニック状態へと陥った。
「おい、落ち着けよ。お前これから世界救うんだぞ?自覚あんの?」
「わ、分かってるよ!!つーかお前、今どこにいるんだよ?」
「知らん」
「ん?」
「知らん」
「ん?」
「知らん」
「・・・・」
「・・・・」
「お前がどこにいるかわかんないと始まんないじゃないか!!」
「オレも今どこにいるかわかんねぇんだよ!!オレにばっか頼るな!!この甘ちゃんが!!」
「なんだと!?誰が甘ちゃんだ!!この………」
見ると街の人から変質者を見るような冷たい視線がこちらに向けられていた。
「ま、まあとにかく落ち着こうぜ……」
「お、おう……」
ヤマトの声はレイヤ以外聞こえていないようだった。
おかげでレイヤは変な人認識されていた。
「しかし、どうやったらいいものか……」
「オレもよくわからないんだよなあ……」
「そういえば……アイツは魔法陣みたいなのを出してたな……」
アイツ
レイヤが思い当たるアイツといえば他でもない。
レイヤを殺した張本人、悪魔アザゼルである。
レイヤにとってはとても苦い思い出になってしまっていた。
あの腹をえぐりとった痛みが今でもよみがえる。
「そうだ!そいつみたいにすればいいんじゃないか?」
「なるほど、そういうことか!」
あの時の記憶をたどりアザゼルがやったのを再現した。
するとレイヤの手のひらの前方に魔法陣が現れた。
そして、その魔法陣から神器、ヤマトを取り出した。
「あ、出た」
「これからはこうすればいいんだな!よかったな!」
「便利なようで、不便だな……」
「これからどうしよう。最初からつまずくってどういうことだよ」
「これ、やばいな……ほんとにやばいな………」
予想外の話の進まなさに、途方に暮れている時だった。
「あなた…この辺りでは見ない顔だね。この街は初めて?」
話しかけてきたのは、年は同じぐらいの金髪の美少女だった。
最近、心臓がバクバクすることが多く自分の心臓が持つかレイヤは心配する。
「……ああ、そうなんだ………」
「やっぱりね、その顔見ればわかるもの。私はセフィ、あなたは?」
「オレはレイヤ、暁零夜だ。ところで……ここは?」
「ここは天界エデンズグローリー、天都ラーニウスだよ」
「天界………!?」
「レイヤはどこから来たの?魔界からだったらどうしよう……」
「いや…オレにもここにどうやって来たのかわかんないんだ………」
「そうなの……!?もしかして…記憶喪失……!?」
「いや…そんなんじゃないんだ。ただ、どうやって来たのかが……」
「困ったね……そうだ!」
セフィがなにかひらめいたように声を上げる。
「ブァルハリア学園に行ったら何かわかるかも!私、そこの学園生徒なの!案内してあげる!」
そうしてレイヤは、言われるがままブァルハリア学園へと案内された。
「ま、まだですか……もう疲れた……」
「早くぅ!もうすぐだからぁ!」
ヘトヘトになりながら弱音を吐くレイヤの手を引きながら、セフィはなおも走り続ける。
すると大きな城のようなものがそびえ立つのが見えてきた。
「もしかして……あのデカい城みたいなのが……」
「そのとーり!あれがブァルハリア学園だよ!!」
あまりのそのビッグスケールに息をのんだ。
まるで〇りー〇ッたーに出てくるアレみたいだ。
と、その時だった。
この街のどこからか、爆発音のような音が轟いた。
「な、なんだ……!?」
「おい、レイヤ!!これは嫌な予感がする……!!」
ヤマトが不吉な予感を捉え、なにやら恐怖を覚えたような声だった。
「何があったんですか……!?」
逃げ惑う人々に今、何が起きているのかを問いかける。
「悪魔だ!!悪魔の襲撃だ!!」
セフィが街の人の答えを聞いた瞬間、顔が青ざめた。
「レイヤ!!逃げるよ!!」
「ああ………」
すると次の瞬間、目の前に閃光がはしった。
「ぐっ……!大丈夫か、セフィ!?」
「うーん……何とか……」
「ウフフ……まさかあなただったとはね…」
この声にレイヤは全身が凍り付くように動けなくなった。
「まさかもう一度あなたに会えるなんて……思いもしてなかったわ……」
レイヤはあまりの恐怖に体を動かすことすらできなくなっていた。
「レイヤ!早くこっち!!」
レイヤはセフィに手を引かれその場から立ち去った。
「レイヤ…どうしたの……?さっきから様子がおかしいけど……何かあったなら聞かせて……?」
「実は…オレ……」
「レイヤ!!気をつけろ!!」
ヤマトの声と同時にレイヤたちは爆風で吹き飛ばされた。
「逃がさないわよ……」
「………ッ!!戦うしかない……!!」
セフィは手を前に掲げ魔法陣を出現させた。
「あら?私と戦うってことかしら?」
「私が……あなたを倒す……!!」
セフィの声とともに、光がセフィの片方の腕へと集まっていく。
そして、その光は神器へと姿を変えていた。
「フフッ、あなた神掌使いだったのね……さあ…じっくりと楽しみましょう……」
アザゼルは不敵な笑みを浮かべ、手にした神器でセフィに襲いかかった。
「ぐっ……!!」
セフィは間一髪アザゼルの攻撃を受け止めた。
そしてセフィは受け止めたまま、回転蹴りを浴びせた。
「フフ…あなた…いい動きをするわね……ああ……ワクワクしてきたわ……!」
「うるさい!これで終わりにしてあげるわ!!」
するとセフィの周りに光のオーブが集まり始めた。
「スターライト・エクストライザー!!」
そして、セフィはその光のオーブを一点に集中させ、極太の閃光の帯をアザゼルに放った。
閃光の帯は周り全てを一掃した。
「や、やった……やったよ……!!レイヤ、私やったんだよ……!!」
歓喜を上げるセフィにレイヤはそっと胸をなでおろした。
「いい技だったわ…でもちょっと惜しかったわね……」
ーーーーーーふと、声がした。
セフィの背後から二人に言葉を投げかけるようにーーーーーー。
そして、その矛先はセフィに向けられていた。
レイヤは自分の頭で考えるよりも先に、セフィをかばっていた。
「……ぐっ………!!」
「レ、レイヤっ……!!
セフィの悲痛な叫びがレイヤの耳に突き刺さる。
「くっ……また…死ぬのかよ……」
「あらあら、あなた自分が何をしているのかわかっているの?そんなに殺されるのが好きならもう一度、殺してあげるわ……」
神器をレイヤの方へと向けられたその時だった。
「レイヤは殺させない!!」
セフィが死に物狂いでレイヤを背後へと、かばう。
「ウフフ……いいお友達を持ったわね…じゃあ…お友達から殺そうかしら………!!」
「や、やめろぉぉぉぉ!!」
レイヤは必死に叫ぶ。
「それじゃあ……またね……」
その時、レイヤの中で何かが燃え滾ったーーーーーー。
大切なものを守りたいという決死の炎がーーーーーーーー。
そして、相棒の声が鳴り響くーーーーーー。
「行こうぜ、レイヤ!!」
「んっ………!あ、あれ?レイ……ヤ…?」
「もう安心しろ、セフィ。さあて…おっ始めようか……!!」
真紅に染まる髪、燃え盛る炎のように紅い瞳。
それはまるで、全てを終わりへと誘う炎狼の如く。
「これは……覚醒したか………」
「さあ、くたばってもらうぜ…悪魔さんよぉ!!」
「性格が……変わった……?」
セフィはレイヤの異変に感ずくも、今はそれどころじゃなかった。
目の前で戦いがくり広げられ、頭が追い付かなかった。
「ちっ、少しはやるようだな…手ごたえあった方が丁度いい!」
「あら、それは嬉しいこと言ってくれるじゃない……!」
レイヤの高速の剣技に対し、アザゼルは全く動揺しなかった。
「もうちょっと楽しんでいたいけどいたいけれど…これで終わりにしてあげるわ……」
アザゼルはその手にある禍々しい炎を神器に宿し、その妖艶に満ちた声でつぶやいた。
「シャドーネス・デスサイザー……!!」
魂をえぐりとられるような殺気に満ちた斬撃がレイヤに襲いかかっていた。
「へっ!!こんなものぉ!!」
レイヤはアザゼルが放った斬撃とつばぜり合いになった。
死に物狂いで必死にレイヤはヤマト
を構える。
「くっ……くっそぉ………!!」
「フフフ……さあ……醜い姿をもっと見せて……!」
レイヤが抗い続ける姿を見て、アザゼルは楽し気にその紫紺の瞳を輝かせていた。
「レイヤが……!!くっ………!!私だって!!」
セフィは立ち上がると神器をレイヤの方にかざした。
「スターライト・リザレクション!!」
すると、セフィが放った淡い光がレイヤを優しく包み込んだ。
「いっけーーー!!レイヤ!!」
「これは……!サンキューな、セフィ!!」
セフィの加護も受け、レイヤは渾身の一撃を放った。
たちまちアザゼルが放った斬撃は陽炎の如く、消え去った。
「な…なぜだ……!」
「さあ、次はこっちからいくぜ!!」
レイヤは仁王立ちのように立ちふさがり、その神剣を構えた。
その神剣は紅蓮に満ちた炎が吹き上がり轟音と共に燃え滾る。
レイヤはその神剣を構え、アザゼルの懐へと走った。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
アザゼルは狂いながらその凶器なる神器を向ける。
レイヤは吹き抜ける風のように避けーーーーー
「烈火・爆炎刃………!!」
アザゼルに一閃を放ち、たちまちアザゼルは煉獄へと包まれた。
「フフ……流石はシルブァの血を引く者………私を退けるなんてね……私の事忘れないでね……いつかまた………会いましょう………」
そう告げると、アザゼルは闇の中へと消えていった。
「もう、大丈-----」
レイヤはセフィのところに行こうとするも、その場に倒れ込んでしまった。
「-----っ!!レイヤ!?大丈夫!?しっかりして!!」
セフィは必死にレイヤに問いかける。
もうろうとした意識の中、再びフラッシュバックが起きた。
なんだ?
これは……戦争なのか……?
なんだ、アイツは……?
見たことあるような………?
レイヤのフラッシュバックが終わると共に、レイヤの意識も薄れていくのだったーーーーーーー。
そして今、この瞬間から暁零夜の二度目の人生の歯車が廻り始めたーーーーーー。
次回!新キャラ登場します!こうご期待!