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朝霧家の日常  作者: ピルリンガ
2/11

1-1

朝霧裕人あさぎりゆうとはかなり特殊な男子高校生だ。

裕人自身も普通とはかけ離れたスペックを持つが、何より特殊なのは裕人の周りの環境である。

その特殊な環境の一つとして、裕人の父親、考古科学者の朝霧ガブリエルが挙げられる。いじめられていたとしか思えない名前、考古学者としての能力、そして、どれだけ変人かということで、考古学者の間だけではなく、世間的にもかなりの有名人でもある。

そんな裕人の父親は、仕事柄の関係か色々な物を家に送ってくる。幸運を招く壺、呪いの仮面、必ず洗脳できる提灯などそれはもう怪しさオンパレードの物ばかりである。

しかし、その中でも、特に面倒な送りものがある。

「はぁ……。」

学校から家に帰り着き、リビングに辿り着いた時、裕人はため息をついた。

(くっそ…あのアホ親父…。送るときは連絡しろってあれほど言ったろ…。)

心の中で悪態をつく裕人。視界に、親父からの特に面倒な送りものが入ったからだ。

その送りものは眠っていた。身長は140cm程度。お姫様が来てそうな、見るからに豪華なピンク色のドレスに、腰まであるウェーブのかかったピンクの髪。そして、ものすごい美少女である……のだが、なぜか縄で縛られていた。

ここまで説明すれば分かるだろう。特に面倒な送りもの。そう…。


人間である。


★★★★★★★★★★★


このまま放置するのもアレだから起こすことにする裕人。

「おーい起きろー。」

「すぅ…すぅ…。」

声をかけてみるが全く反応しない。

「おーい。起きろー。」

今度は揺さぶってみるが結果は変わらず。全くの無反応だ。

「おーい。」

「ん……。にゃに……?」

今度は反応があった。頰をペシペシ叩きながら呼びかけた甲斐があったものだ。

「起きたな。今どんな状況か分かるか?」

「……強姦?」

「なんでだよ!!!!!!!」

縄で縛られた状態で、起きた先には見知らぬ男がいた。たしかに、強姦と間違えられてもおかしくない状況である。

「キャーーーーーーーーーーーー!!!!」

眠そうにしていた少女だが、意識がハッキリした途端、悲鳴をあげはじめた。

「助けてーーーーー!!!襲われーーーーーー!!!!」

「ちょ、おま……誤解だ!」

「何が誤解よ!!縄で縛ってる時点で説得力0よ!!誰かー!!」

裕人としては誤解としか言いようがないのだが、少女は聞く耳を持たず、悲鳴をあげつづける。

そんな状況が五分くらい続いた。

「はぁ……はぁ……。なんで………助けが来ないの……?」

五分間ずっと叫び続けていたので少女は息を切らしていた。

「この家かなり広いしなぁ…。近所に聞こえてないんだろ。」

「くっ!縄で縛ってるといい準備万端じゃない。よく誤解なんて言えたわね!」

キッと目つきを鋭くして睨んでくる少女に、裕人は困惑する。少女が何と言おうと、裕人にそんなことをする気はないのだから。

「落ち着けってーの。俺はお前に何かをするつもりはない。するつもりならとっくにしてる。」

「………………………それじゃあ、何で私はこんなことになってんのよ。」

裕人の言葉に、少しだけ納得したような顔を見せた。少しだけだが。

「知るか。俺が帰ってきたらそんな格好だったぞお前。逆にここに来るまでのことを覚えてないのか?」

「ここに来るまで……。」

そう言って少女は考えこむ。縄で縛られながら。

「…………ないわ。」

「え?」

少女は暗い表情で答えた。


「ユリル・フェミナス。名前以外、何も、覚えてないわ。」


少女の言葉を聞き、裕人は思い出す。父親からの送りものによって起こった出来事を。

(何事もない………なんてこと、あるわけないよなぁ。)

これからどんな問題が起きるのか。それを想像した裕人はため息をつくのであった。




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