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更新が遅いくせに文字数はそこまでない!
毎日更新してる人半端ないですね!!
モフモフ
「…」
モフモフ
「……………」
モフモフ
「………………………ふふ。」
「……大丈夫っすかユリル。」
ビクッ!!!
「華!?いつからいたの!?」
「いや一緒に帰ってた人に対する言葉っすかそれ!?どんだけトリップしてたんすか!!」
ユリルが来てから1週間が過ぎようとしていた日の帰り道。ユリルはそれに出逢った。
そう、ポメラニアンと呼ばれる犬に。
出会ってから10分間、ずっとユリルはポメラニアンをモフモフし続けていた。
「まあ可愛いのは分かるっすけどね。それよりユリルばっかズルイっす。私にも触れさせてほしいっす。」
ちなみに裕人は用事があるのでいない。ユリルと華の2人だけである。
「この世界にはこんな可愛いのがいるのね。」
「ユリルのとこにはなかったんすか?」
「ないわ。魔物のみ。似たような存在に獣人族はいるけどここまで可愛い存在ではなかったわ。」
2人は喋りながらもポメラニアンをモフモフし続ける。
「んー……。この子、佐藤さんが飼ってるポメラニアンっすね。脱走でもしたんすかねー。」
「飼えるの!?」
華のセリフにユリルが目キラキラとを輝かせながら聞いてくる。
「まあ………ちゃんと世話するなら裕人さんも許可してくれるかもしれないっすね。」
「分かった。お願いすればいいのね。」
2人がモフモフし続けてると、犬がある方向を向いて吠え始めた。
「きゅ、急にどうしたの!?」
「んー。佐藤さんっすかね?」
華の考え通り、犬が吠えた先から飼い主と思われるおじいさん(佐藤さん)が現れた。
「おお。華ちゃん。華ちゃんが見ていてくれたのかい。」
「そうっす。それにしても可愛いっすね。なんて名前なんすか?」
「可愛いじゃろ?名前はブラックじゃ。」
「白色なのに!?反骨精神強すぎじゃないっすか!?」
佐藤さんはポメラニアンと触れ合い続けるユリルを見た。
「お嬢さん。君は犬が。」
「ユリルよ。」
「ユリルくんだね。……………ユリル?ああ、そうか。君が裕人くんの………。なるほどなるほど。」
おじいさんは少し考えた素振りを見せた後、話を続ける。
「ユリルくんは犬が大好きなのかね?」
「………………まあそうね。好きよ。」
かなりの間が空く。好きという言葉を言いづらかったのだろう。
「ほほ。そうかい。だったらちょくちょく私の家に来てこの子と遊んでくれないかい?体がキツくて私じゃこの子についていけないんだ。」
「…し、仕方ないわね。そういうことなら行ってあげなくもないわよ。」
「なんていう言い方をしてるけど心の中では喜びまくってるっすから。」
「うるさいわよ華!」
「ほほ。いつでも来ていいからの。それじゃあ帰るぞブラック。」
「さよならっす。」
華に続き、ユリルも別れの挨拶を、
「なっ!?」
告げることはなかった。
ユリルを探す、敵の捜索魔法を感知したからだ。
「華。あっちから敵が来るわ。」
「うげっ。このタイミングでっすか!?とりあえず家に戻るっすよ!」
裕人に電話をかけながら走って家に向かう。
『もしもし。どうした華?』
「裕人さん!敵っす!すぐ家に帰ってほしいっす!!」
『っ分かった!すぐ向かう!!』
電話を切る音が聞こえる。華はホッとしたのも束の間、すぐに気を引き締める。
「ホント。私は戦闘系じゃないっていうのに……。ユリル。敵はあとどれくらいで来るっすか?」
「この速度ならあと30分ぐらいね。時間的にはかなり余裕が…………………………はぁ!?」
突如、ユリルの表情が唖然としたものに変わる。
「急に速度が変わったわ!あと3分もせずに来る!!」
「はぁ!?どんな速さっすかそれ!とりあえず家に戻るっす!」
息を少し乱しながら、2人は家に帰り着く。
そして、家に帰り着いてから1分も経たないうちに………
「はははははははははははは!!!!!待たせたな!!殺す!殺す!殺してやるぞ!あいつらのように殺して殺して!殺した後に殺してやるさ!!」
★★★★★★★★★★
「ちっ!よりによってこいつだなんて………!」
「誰っすか…?」
「カルマ。戦闘狂であり、味方も殺す殺人狂よ。にも関わらずそれが許されたほどの実力者。」
「俺のおかげで戦争に勝てたようなもんだからなぁ。」
カルマの台詞に、ユリルは自然と目つきを鋭くする。
「おいおいー。なんだその目はよー。おかしなこーー」
『見えざる千の閃光!!』
見ることも叶わない、千本の光の矢がカルマに突き刺さる。
その光景を見ていた華は少し呆れた顔をする。
「これほどまでにない不意打ちっすね……。」
「そんなこと言ってる場合じゃない!華も早く攻撃お願い!!」
「え?今ので倒したんじゃ……。」
「倒してない!あいつがあの程度で死ぬわけがーーー!」
ユリルの言葉は途切れる。すぐそこに、ユリルの首を切断しようと鉄の塊が迫っーー
「〜〜〜〜〜〜〜!!」
「おめえが今のを避けれるとはなぁ!!」
迫ってきた大剣を少ししゃがむことで避ける。しかし、避けた先にカルマの太い右足が襲いかかる。
「やらせないっすよ!!」
カルマの右足に、千切れることはない強度なツタが絡みつく。
「んだぁこれはぁ!!」
一瞬動きが止まるもの、ツタを千切りながらユリルに蹴りを入れる。
「くっ。」
後ろに飛びながらガードし、絡みついたツタのせいで威力が落ちたにも関わらず、ガードした腕に痛みが走る。
「な、なんでっすか!?なんで今のを千切れるんすか!?」
千切れるはずのないツタを千切り、威力が落ちながらも無理やりユリルに蹴りを入れたという事実に、華が驚きの声をあげる。
「落ち着きなさい華。あいつはああいう奴なのよ。」
ガードしたことで痛めた腕を、無詠唱による治癒魔法で治しつつ華に説明をする。
「あの男は見た目通りの筋肉だけじゃなく、強化魔法によって尋常じゃないほどの身体能力を持ってるわ。」
「強化魔法………。ユリルは使えないんすか?」
「使えないことはないけど苦手ね。相性があるのよ。」
話を続けながらも、視線はカルマに注ぎつづける。
「とにかく気をつけなさい。あの男は素手でドラゴンを殺したこともあるらしいわ。一発でも攻撃がまともに当たれば死ぬわよ。」
「ドラゴンがどれだけ強いのかは知らないけど分かったっす。足止めするからユリルはどんどん攻撃をお願いするっす。」
「ええ。…気をつけなさいよ。」
「ヒヒヒヒヒ!作戦会議は終わったかぁ?」
「待っててくれたんすか?優しいっすねぇ。」
「んなわけねえだろぉ?無抵抗なガキを殺すのも面白えが、お前らと戦うのは面白ろそうだからなぁ。足に絡みついたツタのおめえだろ?俺を楽しませてくれよなぁ!!」
「お前は私の嫌いなやつランキングベスト3に入るっすよ!!」
華は、カルマを囲むように、当たるとタダでは済まない木々を触手のように攻撃している。運動能力と今までの経験によるものなのか、カルマには一度も攻撃は当たらないが、足止めとしてはしっかり役目を果たしている。
『グラビティ・コア!!』
ユリルの両手をかざしながらの詠唱により、カルマの体に10倍もの重力が加わる。100kgは超えてる体重が千kg………1トン以上になる。
「ぐっ………上級魔法を術名だけで発動とは、さすがじゃねえかぁ!!」
にも関わらず、動きがかなり鈍るだけで済むカルマ。普通なら体重を支えきれずに体が潰れるところだ。
それでも、動きが鈍ることで華の攻撃を避けることが出来なくなる。
『雷の雨!!』
間髪入れず、魔法を発動する。名前の通り、カルマに向け雷の雨が降り注ぐ。
華の攻撃を避けることさえ出来ない状態で、雷の雨を避けるなんてことができるはずがなく、全て直撃する。
「ぐぅぅぅぅぅぅぅうう!!!」
大量の雷に、カルマの顔が苦痛で歪む。
それを見て、トドメを刺すチャンスと思ったユリルは先日、テレビで見た技法を思い出す。
(水を圧縮して、鉄を切断しているところをイメージ………。)
今更だが、魔法は起こしたい事象をイメージし、そのために必要な魔力を制御する。この二つが成り立って、ようやく発動するのだ。
簡単な魔法はイメージと制御がしやすく、強力な魔法はイメージと制御が難しくなる。
詠唱が行われる理由は、起こる事象のイメージがしやすくなるということに加え、詠唱することで魔力が制御しやすくなるからだ(原因は知られていないが)。魔法の才能があるものは無詠唱、または術名だけでもイメージと制御を行うことができる。
『ファイアーボール』などの簡単な魔法ならともかく、ユリルの『雷の雨』などは、普通なら1分以上詠唱しても発動するか分からないほどの魔法なのだ。
長々と説明をしたが、何を言いたいかというと、
『アクアカッター』
水圧で鉄を切ることが出来るという事象を見たからと言って、新しい魔法を生み出すのも、救世主と呼ばれていたユリルだからこそ出来ることだということだ。
スパァン!
「なっ………!?」
カルマは、目を大きく見開く。左腕の肘から先が無くなっていたからだ。
(初めて使う魔法だから狙いがズレた!けど、腕を切断された状況にまだついていけてないのか隙だらけ!)
『アクーー』
2度目の、今度は上半身と下半身を切断するよう狙いを定めた『アクアカッター』が発動することはなかった。
ユリルに、迫っていた『ウィンドーカッター』を避けたためだ。
「新手っすか!?」
足止めという大切な役目を果たしていたが、空気と化していた華の声があがる。
『ウィンドーカッター』が来た方向には、小さい女の子が立っていた。
(そういえばカルマ、身体強化以外の魔法を使えないのに私の場所が分かったことに気づかなかったわ。魔法使いがいることぐらい少し考えたら分かるのに………。)
後悔に似た考え事をしつつも、再度『アクアカッター』を放つ。魔法使いの攻撃にも注意しながら。
「……………ヒヒ。」
しかし、足止めの役割を果たしていた木々を切りながら避けられてしまう。気色の悪い、その不気味な笑みを浮かべながら。
その笑みは、とても嬉しそうな笑みだ。
「『ウィンドーカッター』に似てるが威力が段違いだなぁ。『ウィンドーカッター』じゃあユリルでも深い傷跡を残すのが精一杯だもんなぁ。」
カルマは、肘から先が無くなった、左腕を見せびらかすように動かす。筋肉で締め付けてるからなのか血は全く出ていない。
「俺の攻撃を避けれたのも、俺の前に派遣された剣士どもを倒したのも、俺が知ってるユリルじゃ無理だなぁ。接近戦がクソみてえに雑魚だったお前じゃあ。」
そしてカルマは、首だけを動かす。華の方に。そして、華に先程とは違った笑みを見せる。
「……………………………お前かぁ?」
「ひっ……………!!」
その笑みは、まるで面白い玩具を見つけたかのような笑みだった。その笑みに、華は悲鳴をあげながら後ずさりしてしまう。
「あんた何する気!?『アクアカッター』!!」
「攻撃力は高いが速さは普通だなぁ。同じ攻撃を何度もするとかバカなのかてめえはぁ!!」
ユリルの『アクアカッター』をスウェーで簡単に避けた後、華の方へ歩いて向かう。
「く、来るなっす!」
華の攻撃を食らうが、気にも留めずに歩く。まるで、急に防御力が上がったかのように。
(まさかさっきまで身体強化をしていなかったっていうの!?)
『見えざる千の閃光!」
焦りを顔に出しながら魔法を放つが、やはり気にも留めないで華に向かう。
「待ちなさーーあうっ!」
カルマを追おうとしたところに、背中と足に熱の塊が直撃し、倒れる。魔法使いの女の子による『ファイアーボール』だ。
「やめなさい………華に何する気よカルマ!!」
「あいつの師匠はお前か?」
ユリルの言葉を無視し、華の命を1秒もかからずに刈り取れる場所に立っていた。
「……残念ながら。頭も運動能力も大してよくない、朝霧家最弱の存在に教師の真似事が出来るわけないっすよ。」
「はっ!お前が最弱とはおもしれぇ!あいつを育てたのはお前より殺しがいのあるやつってことか……ヒヒヒヒ。」
カルマは口角をさらに上げる。
「何を考えっっ!!」
カルマのボディーブローに、華が体をくの字に曲げて倒れこむ。
「ゲホッ!ゲホッ!ふっ…!ふぐぅっ……………!!」
「今ので気絶しねえとはなぁ!」
お腹を抑え、涙目になりつつも立ち上がり、気丈にカルマを睨む華。
「はぁ…はぁ…………!お、女の子に手を出すとはホントのクズっすね………!女の子の日が来なくなったらどうしてくれるんすか………?」
「知るかよ!!」
「かはっ!」
「っ華!!」
2度目のボディーブローに、華の体はくの字に曲がったまま動かなくなる。
「一発目で気絶しとけばよかったのにな!ホント女ってやつはバカばっかだぜ!!」
「カルマァァァァァァァァァア!!!」
大切な友達に対する、無残な仕打ちに、ユリルの表情が怒りで歪む。
「うるせえよ!」
「あぁぁぁ!!」
倒れていたユリルの足を踏みつける。骨が折れる音が聞こえたが、それでもユリルの顔は怒りで満たされていた。
「殺す………!あんただけは……絶対殺すわ…!!」
「ヒャハハハ!!ホント女ってバカだなぁ!バカバカバカバカバカ!!おい!この女を助けたかったらお前の師匠も連れてこいよ!呼ばなくてもいいが…………。そん時はお前だけじゃなく、この女も殺すぜぇ?」
そして、カルマは小さい女の子と一緒に、華を連れて去っていく。
「華……。華……。…………華ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」
夕焼けの空に、1人の少女の悲しげな声が響き渡る。
……裕人が帰り着いた時に見たのは、ボロボロにされて、気絶していたユリルの姿だけだった。
ぶっちゃけこのユリル編は設定かなり曖昧です。異世界や魔法についても曖昧です。
ということでツッコミどころ満載だと思うので指摘お願いしますね!!
許せるレベルなら無視してね!!