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(待っていた人がいたかはともかく)お待たせ!!
「くそくそくそくそくそくそ!くそが!使えねえなあのクソども。おい!もういいだろ!俺は行くからな!!」
その男はとても大きかった。
身長は2mは超えてるだろう。全身全てが筋肉で出来てるのではないかという太くて大きい体。気性が荒そうな顔。そして一番の特徴は2m近くある大剣を持っているということだ。
「全く、堪え性ってものがないなカルマ。」
筋肉マッチョの男はカルマというらしい。カルマの言葉に呆れたような顔を見せる1人の男。
「うるせぇ!早いに越したことはねえだろうが!!」
「ま、それもそうだけど…。君が行くということはこれであの女との鬼ごっこも終わるということだ。そう考えると何か来るものがないかい?」
「ねえな。俺はもう行く。アレをもってこい。」
「アレはダメだ。1つしかないアレを使わせるわけにはいかない。」
「てめぇ。俺が失敗すると思ってんのか?」
「そういう問題じゃないだろ。昔は2つあったらしいが今俺たちが持ってるアレに何かあったらどうするつもりだ?ちょっとしたことで壊れるかもしれん。お前は責任を取れるのか?そもそもあいつらがそれを許可するわけがーー」
「ちっ!分かった分かった!仕方ねえな。魔法で行ってやるよめんどくせえ。魔法使いどもの準備は出来てんのか?」
カルマを説得出来たことにホッとする男。もちろん表情には出さない。表情に出したらこの気性が荒い男が更にうるさくなるからだ。
「お前が行くだろうと予想して準備されてるってよ。」
「はっ!よく分かってんじゃねえか。んじゃ、行ってくる。」
「あ、それと1人魔法使いの後衛をつけておくからな。」
「んだと!?てめぇ俺が負けるとでもー」
「お前探索魔法使えないのにどうやってあの女を探すつもりだ?」
「…………………行ってくるぞ。」
「おう。」
★★★★★★★★★★
「………………ということで昨日学校をサボりました。公欠にしてください。」
「サボったと言っておきながらよく堂々と言えたね裕人くん!」
ユリル家出事件(華命名)が起きた日に学校をサボった裕人たち。その説明のために朝から学園長室に来ていた。
「さすがに冗談です。行こうと思えば行けましたから。」
「全く……。しかし裕人くんも大変だねー。次々と問題が起きて。これも朝霧家の運命なのかねー。」
「問題や変わった出来事が起こるたびにみんながみんな家のせいにするのやめてください。」
「はいはい。それで?私のところに来たのが公欠にしてもらうことじゃないとしたら隣にいる子が理由かなー?」
学園長が裕人の隣に座っている女を見る。
言い忘れていたが、この場に華とユリルはいない。この場にいるのは裕人と学園長、そして…
「え、エリーです!何でもするので助けてください!!」
ユリルの命を狙った魔法使い、エリーの3人だ。
「なるほどー。見知らぬ可愛い女の子がいたのは私に自慢するわけではなかったってことねー。」
「殺気を出した理由が分からなかったけどそれが理由ですか」
学園長がエリーを見た途端裕人に殺気を浴びせたのだ。その理由が予想以上に下らないことに心の中でため息をつく。
「それでエリーちゃん。何でもするって言った?」
「は、はい!エッチなことからエッチなことまで何でもします!」
「採用!!」
「やったぁー!!!」
半ば予想出来ていたやり取りをツッコまずにジト目で見る裕人。その表情からは呆れしか見えない。
「裕人くん!君のことをこれから神と崇めるね!!」
「結構です。」
そう言って退出する。
裕人が部屋から出た後、学園長室から2人の女性の喘ぎ声が聞こえたとか聞こえなかったとか。
「というわけで押し付けて来たぞ。」
「まあ学園長に押し付けたのは正解っすね。変態同士気があうはずっすよ。」
朝のHRが始まるまでの時間。華にエリーを学園長に押し付けたことを話す。
「あの女…。裕人さんを誘惑するだけでなく私のパンツまで被って………一発殴りたくなってきたっす。」
「気持ちは分かるが落ち着け。ユリルが散々殴ったろ」
恩を仇で返してきたエリーに怒る華を宥める。
言葉の通りユリルはエリーを殴りまくったのだ。それはもう顔の形が変わるほど殴った。そして命の危機じゃね?というところで魔法で治した。そしてまた殴りはじめた。これを3回ほど繰り返したところでユリルはスッキリしていた。
しかし、返り血を浴びた状態でニコっと爽やかに笑うユリルを見て、裕人と華が恐怖を感じたのは仕方ないだろう。
「あの時のユリルは怖かったっすね。ユリルだけは怒らせないようにしないとっす。」
「そうだな。」
苦笑いしながら2人は見る。少し戸惑いながらも、クラスメイトと嬉しそうに話しているユリルを。
「何よ。」
見ていたことに気づいたユリルが近づいて話しかけてくる。
「うんにゃ。あの女を学園長に押し付けたって話をしてただけだ。」
「あの女ね。学園長に迷惑じゃないかしら?」
「安心しろ。2人ともすごい喜んでたから。」
「ふーん?」
よく分からなそうに返事をするユリル。お姫様ということで教わってなかったのかユリルの性知識は見た目同様子どもだ。
「ところで裕人。」
「何だ?」
「えっと…」
ユリルは何かを思い出すような素振りをしたあと視線を変える。ユリルの視線の先には先ほどまでユリルを囲っていた数人の女子が面白そうな顔をして見ていた。
「学校が終わったら2人でホテルに行きましょ。」
『戦争だぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!』
「理不尽すぎるだろ!!」
何を言ったのか自覚していないであろうユリルの発言により、朝のHRが始まるまで裕人はクラスメイトからの攻撃を捌き続けることになったのであった。
放課後、裕人たちはホテルに行くわけなく、家に帰った。
ホテルの件は華が説明した。ユリルが顔を真っ赤にしたのは言うまでもない。
「んじゃ昨日やったのと同じ特訓するぞ。」
そう。ユリルは裕人の指導のもと特訓を始めたのだ。
特訓の内容は体力作りと攻撃を避けること。
体力作りは説明するまでもないと思うが、攻撃を避けることに関して。これは、ユリルが接近戦に弱いからだ。
ユリルが戦争に参戦していた時は遠距離から圧倒的火力によるゴリ押しをしていたらしい。が、それに比例するかのように、接近戦に関しての経験は皆無と言ってもいい。
だから、接近戦に持ち込まれても、避けれるように覚えさしている。
ちなみに、裕人と同じ特訓をする予定だったが、強くなる前に過労で死んでしまうと判断した裕人がかなり抑え目にメニューを考えた。それほど、裕人を鍛えた人の考えた特訓は異常なのである。
……ちなみに、裕人の一日は学校、特訓、家事、副業が主だ。
勉強は?と思った人。それは試験期間に入ってからのお楽しみ。
閑話休題。
ユリルと裕人。一緒に家の周りを走る2人の格好は体育服である。
「はぁ……はぁ……。」
「……いけるよな?」
「いけるに………決まってるでしょ…!なめないで……!」
少し息を切らしながらも、強気に答えるユリル。
「んじゃあと5周、行くぞ!」
たかが家の周りを5周と侮るなかれ。朝霧家の敷地は広い。1周が約300mもあるのだ。さらに、先ほどまでも5周走らせていた。
「大変そうっすね〜。」
その光景を近くで見ていた華の感想だが、ジュースを飲みながら寛いでるので煽っているようにしか見えない。
「大丈夫か?」
「ふう……………大丈夫よ。」
走り終わったユリルだが、かなり余裕そうだ。戦争を体験しただけあって運動能力と体力もそこそこある。
水分だけ摂らせたあと広い庭に移動する裕人たち。
「んじゃ避ける練習。華頼む。」
「うーっす。行くっすよユリル。」
華の言葉を合図に地面からウネウネと動く2本の触手………みたいなツタが出てくる。
ツタといっても直径5cmほどで少し太い。
その2本のツタがユリルに襲いかかる。言っておくが、これは避ける特訓である。エッチな現場ではない。
「足捌きを意識しろよー。」
裕人のアドバイスを受けながら迫り来るツタを余裕を持って避ける。
「ギアを上げるっすよ!」
「っ」
ツタを避けていたユリルだが、華が速度を上げると直撃はしないまでも無理な体勢になりバランスが崩れ始める。
「くっ!」
そしてついに右腕に直撃する。直撃したツタはユリルの腕に絡みついて離れない。
また、絡みついたツタに気を取られている隙に左腕にもツタが絡みつく。
「へっへっへ。まだまだっすよユリー」
「エッチなことをしたら削るわよ。」
「………………………。」
ユリルの言葉に、途中まで出ていた3本目のツタの動きが止まる。ついでに華の下卑た笑みとイヤラシイ動きをしていた手も止まる。
その代わりに、膨大な量の冷や汗と、どこを何で削るのかというツッコミと恐怖心が溢れ出してきたが。
「さ、先っちょだけ!先っーー」
『炎の檻』
「あっつぅぅぅぅぅぅぅう!!!!熱いっす!ちょっ!私植物!植物に火は効果バツグン!大ダメージっすから!!いやそのホント熱……………助けてぇぇぇぇぇぇ裕人さーーーーーーーん!!」
その日の特訓は、華のセクハラによって中途半端に終わったのだった。
中途半端に終わらせることだけはしないです。




