星に願いを
島はそんなに広くはない。
馬でゆっくり散策して二時間程度で一周できる程度だ。
海辺を散策し、森の中へと入る。
「花がある場所へ案内するよ。」
アランが先頭切って道案内をする。
「おや、場所を教えてくれるのですか?」
「勝負は公平に、だよ。」
「後悔しますよ?」
石竜子がアランと並ぶ。
一歩遅れて私とノエルは続く。
「…居心地悪いな」
「…本当に。」
勝負は3日後。
満月が昇る時に始まる。
つまり、勝負がつくまでこの空気。
自分の事とはいえ、なんかい辛いわぁ。
やがて、森がひらけ、滝を持った泉が現れる。
さして大きくない泉の中央にこんもりとした土があり、そこに一輪の花の蕾があった。
滝は意外と高い所から落ちてきて神秘的な音を辺りに響かせている。
満月の時はさぞや幻想的だろう。
これぞゲームといった雰囲気だ。
「お嬢様、あの花は私がお持ちしますので、満月の夜は楽しみにしていてください。」
「持っていくのは僕だけど、ね?」
夕飯の時間になった。
石竜子とノエルがせっせとバーベキューの準備をしている。
私とアラン?
早々に戦力外通告されて蚊帳の外ですが?
私達は椅子に座りジュースを飲みながら話す。
「なんでも出来そうなのに、意外だねぇ」
「あはは。」
アランは指10本中8本に包帯を巻いている。
何のことはない、野菜を切るときに包丁で切ったのだ。
どうやったらそこまで怪我するのか疑問である。
「良美はドジっ子だったんだねー」
「あはは」
お皿を大量に割ったことを言われてしまい笑ってごまかす。
「石竜子とノエルがいてよかったわ。」
石竜子は機材のセット、ノエルは野菜と肉のカッティングをハイペースで行っている。
彼らがいなければ夕飯は抜きだった。
「もう少し暗くなれば星空が綺麗なんです。」
「そうなんだ」
私は空を見上げる。
「夜、見に行きませんか?」
「…え?」
「今夜、10時あの泉に二人でみにいきませんか?満月の時程ではありませんが美しいですよ。」
「アラン…」
「そこ、あまりベタベタしない。」
石竜子の声がすぐ近くでした。
石竜子とアランの視線がぶつかり合う。
「婚約者と仲良くして何が悪い?」
「候補です。いい加減覚えてください」
私は席をそっと外す事にする。
「良美!」
くっ!
見つかった!!
アランの声に振り返る。
「玄関で待ってます。」
「…」
私は返事をせずにノエルの所へ向かった。
ジュー
ジュー
お肉が野菜が焼けていく。
どさくさに紛れて何故か秋刀魚も焼かれてる。
こら、誰だ焼いたやつ。
「お嬢様、お肉が焼けました。」
石竜子が私の皿にほいっとお肉が置かれる。
「良美、野菜も焼けたよ。
この野菜は採れたてだから美味しいよ!」
アランが私のお皿の上に乗るお肉の上に野菜をどさっと置く。
「秋刀魚だ。」
べしっ。
ノエルが更に秋刀魚を置く。
私の皿はカオスだ。
てか、ノエル貴様か、秋刀魚を焼いたの。
ジト目でノエルを見るが気にせず網におにぎりを置いている。
何故、焼きおにぎりを作ろうとしているのだ。
いや、食べるけど。
私は秋刀魚を齧りながらノエルを見る。
視界の端ではアランと石竜子がお肉の取り合いをしている。
私が置いただの、裏返したのは僕だの低次元の争いをしている。
…平和だなぁ。
私は秋刀魚の骨をよけつつ野菜を食べる。
あ、本当に美味しい。
どちらかを選ぶとか、階段から突き落とされたとかなんか夢の話な気がしてきた。
考えるのも面倒だ。
このまま時間が止まればいいのになぁ。
それか、時間がループすればよい。
明日目が覚めたらまた、今日ならいいのにな。
私はありえない事を夢想しながらお肉を食べる。
和牛だった。
夜10時になった。
私はカーディガンを羽織り、玄関へ向かう。
石竜子の邪魔が入るかと思ったがなかった。
アランが既にそこにいた。
白馬が玄関前にいる。
アランは白馬にまたがって手綱を握っていた。
私を見つけると蕩けるような笑顔を向ける。
「良美!きてくれたんだね」
「まぁね。」
アランは馬上から右手を差し出す。
私はその手をとりアランの後ろに跨る。
「じゃあ、走らせるから、しっかりつかまって!」
アランが言うので腰に手を回しぎゅっとする。
アランが一瞬びくっとする。
くすぐったかったかな?
「い、いくよ!」
アランは手綱を操り馬を走らせる。海辺を疾走し、森へ入り、風を切って進むとあっと言う間に昼間の泉に到着した。
「綺麗…」
思わず、声が漏れる。
星空は言うだけあって素晴らしいものがあった。
天の川が煌めいている。
星座に詳しければもっと楽しめるのだろう。
さらに泉に夜空が映り、湖面がキラキラしている。
満月にはおそらくあの蕾に月光が降り注ぎ花が咲くのだろう。
「どうしても、この景色を見せたかった。」
星空を眺めがらアランが言う。
「3日後、僕はあの花を持って正式に結婚を申し込む。返事を貰うから、考えておいてね。」
「アラン….」
「彼奴には渡さない」
普段のアランとは思えない力強い声が耳元でした。




