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パンドラの箱

なんとかお茶を出し終えて一息ついた。

危ない、怒られるところだった。

私は席につき、他の仕事を始める。

その様子を、女の人にちやほやされながらも見守る石竜子。

すごい、違和感感じる…。


犯人は男性なのだろうか?

私が好きな犯人はどこかで石竜子と一緒にいる所をみかけて、逆上、犯行?

いや、ないな。

誰かに惚れて貰えるような外見や性格じゃないもの。

寧ろ、石竜子に惚れてる男性の怒りをかって犯行に及んだ…の方がしっくりくる。

しっくりきすぎる。

ちょっと腐った思考が頭をめぐる。

落ち着け、自分。

石竜子は無関係だ。

第一、犯人が石竜子をどこかで見かけた保証はない。

探偵モードな彼女が見かけたのが偶然なのだから。

というか、犯人は見つかるのかな?

このままでは見つからない気もする。

体は子供頭脳は大人な探偵や有名探偵の孫のような閃きや推理力など皆無なのだから。

電話メモをぐりぐり書きながら悶々と悩む。

「良美さん、そろそろ上がる時間だよ。」

誰かが声をかける。

石竜子がいるからか私をちょっと呼ばわりする人がいない。

「あ、はい、では失礼します。」

私は荷物を持って頭をさげる。

石竜子も私の後に続く。

「石竜子さん、明日も来てくださいね!」

「明日は私の淹れたコーヒー飲んでください!」

私の挨拶に返す言葉はないが、石竜子には声がバンバンかかる。

羨ましいな。

挨拶しなくてもにこやかにしてもらえて。

ここらへん、悪役補正かかってないか?

私達は駐車場へと向かう。

停まっている一台の車の前に立つ。

「お嬢様、助手席に座ります?」

「…?」

「先程、お嬢様と話していた方が後部座席に座るお嬢様を目撃して我々の関係を看破しました。

いずれ、他の方も目撃する事もあるかと思います。」

「石竜子、聞いていたんだ。」

通りでタイミングよく入って来た訳だ。

「私も驚いたわ。」

たかが車のどこに座るかで二人の関係を見抜くって偶然でもすごい。

「そうね、助手席に乗ろうかしら。」

「かしこまりました。」

石竜子は助手席に私を誘う。

石竜子は運転席に座る。

いつもと違う位置と距離に心がざわめく。

車が滑るように動く。

私は石竜子をちらりと見る。

柔らかい黒髪が揺れる。

真っ直ぐ前を見つめる瞳。

長い指はハンドルを軽く握っている。

長い足がアクセルを踏み込む。

いずれも運転席に座れば当たり前の行為だが、見惚れてしまうほどに様になっていた。

「そんなに見つめると事故を起こしそうになるのですが…」

「み、見てない!」

私は慌てて視線を前にうつす。

「そうですか?」

「そうよ、なんで私が石竜子を見るのよ?」

「…さあ?なんででしょう?」

声に楽しそうな色をのせてこたえる。

なんでそんな楽しそうなんだ。

普段通り無表情でいこうよ。

私は俯く。

でも、いつまでと俯いてはいられなくて、結局またちらちらと石竜子を見てしまう。

石竜子を見るのを止められない。

何故か…ってそう!

ほら、いつもと違う位置から見てるから珍しいのよ!

だから、見ちゃう!

しょうがない!!


そうこうしているうちに車は家に着いた。

車は門前に停まる。

石竜子は運転席から出て助手席側のドアを開けるために移動する。

その移動時間、僅か10秒。

この10秒を私は大人しくしていなかったので、見てしまった。


何故かと問われれば応えようがない。

特に目立っていた訳でも、手癖が悪い訳でもない。

強いて言い訳するなら、これこそゲーム補正だったのではないだろうか。

本当に、理由なく、まるで導かれるままに、私の手は動きダッシュボードを開けてしまった。


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