犯人の独白
全ては予定調和。
全ては私の掌での出来事。
私は床に伏す彼女を見て笑う。
本当は情けなく蹲る彼女をもっともっと上から見ていたいが、間も無く人が来るだろう。
残念だが、裏階段から一度逃げなくては。
途中、数人の社員とすれ違ったが誰も私を気にかけない。
この服のおかげで、私が部外者だとは夢にも思わないのだろう。
私は自販機補充員の制服によく似た服を着ていた。
あくまで似ているだけで偽物だ。
わざわざ今日のために用意したのだ。
面白いようにこの身を疑われず社内に入り込めて内心笑いが止まらない。
私は無事に社外へと脱出をはかり、車の中で一息つく。
この服はもういらない。
私はすぐさま脱ぎ、普段の衣装に身を包む。
やはり、こちらの方がいい。
今頃、彼女が倒れている事に気付き救急車や警察を呼んでいる事だろう。
予定では警察は彼女の手により介入出来なくなるから放っておこう。
でも、怪我はそれなりにしたはずだから救急車は早めに来るといいな。
まあ、絶対に死なないのだから焦る必要はない。
そう、彼女は絶対に死なない。
死んだら終わりなのだから。
「それにしても…」
私は彼女に蹴りを入れた瞬間を思い出す。
なんて軽い身だったのだろう。
思い出すだけで、この身が歓喜で打ち震える。
誰にも屈さない強い彼女を一瞬とは言え地面に縫い付けてやったのだ。
心の奥にある支配欲を満たすのには充分だった。
彼女は私の顔を見たのだろうか?
多分、見てないだろうが、念の為の用意はしていたのだが…必要なかったかな。
私は用意していたものを手で弄んだ後、ダッシュボードの中にしまう。
最初から計画していたのだ。
彼女が出社したのを見届けた後補充員の制服に着替えて社内に潜入。
給湯室に隠れて時間を潰し、彼女が階段の所に来たと同時に突き落とす。
計画は滞りなく実行された。
もし、この事故が起こらなかったら…いや、考えるのはよそう。
事故が起きなかった場合に起きる事象はもう起こらない。
私が阻止した。
大丈夫。
私には彼奴にはないアドバンテージがある。
私は天才。
このアドバンテージを上手く使って絶対に確実に獲物を狩ってやる。
ここからは…いや、今までもだが…絶対に失敗はできない。
私の犯行が判明するタイミングも私が誘導するのだから、暫くは社員の誰かが犯人と思って貰わなくては困る。
彼女の行動全てを私は予想し誘導し、私にとって理想の道へと進ませてみせる。
大丈夫、失敗はしない。
彼女を手に入れる為の布石如きで失敗等するはずもない。
味方はこの世界だけ。
この世界は私に厳しくもあるが優しくもある。
大丈夫。
大丈夫。
大丈夫。
絶対に上手くいく。
上手くいく
上手くいく…。
あと少し。
もう一年切った。
あと少しで終わる。
終わる、
終わらせる。
私にとっての理想の姿で。




