元悪役令嬢、会社に舞い戻る
「おはようございます。」
石竜子の声で目が覚めた。
「う…?おはよう。」
「朝食の準備が済んでおります。」
テーブルにセットされているのは、やはりホテルのルームサービス並みの朝食。
私は席に着く。
「朝食が終わりましたら、検査となります。」
「そんな具合悪くないんだけどね。」
「念の為ですよ。結果は夕方に出るそうです。
問題なければ、退院です。」
勿論、退院となった。
その足で会社へと向かう。
「突き落とされた?」
社長は私から話を聞いて呆然とする。
まあ、社長に洗いざらい話をした直後だから当然だ。
私が病院に運ばれた直後警察が来たがすぐに帰ったので自損事故と思っていたようだ。
「目撃証言とかは警察が来た時にでましたか?」
「いえ、特には…」
「場所柄、犯人は給湯室に隠れていたのだと思います。普段、給湯室には女性がいたので、犯人は女性5人のうちの誰かだと思います。」
「…時間は昼過ぎ…ランチで外に出ていた者もいたはずです。」
言って社長はタイムカードを漁る。
見ると犯行時刻、外に出てたのが二人。
残り三人のうち誰かか。
「…この時間、業務中なら運がよければパソコンのファイルを更新していたりするかもしれない。」
「なるほど、確認してください。」
社長の確認により、一人が容疑からはずれた。
「…と、いう事はこの二人のうちどちらか。」
「犯人の顔とかは見てないんですよね。」
「ええ。」
「ところで犯人がわかったらどうされるんですか?」
「どうするって…なんでこんな事したのかとか聞くけど。」
「犯行動機は大体わかってますし…。」
確かに!
「わが社としては犯人は自主退職させるで終わらせたいのですが。」
「…まあ、それが妥当よね…」
後は治療費の請求か?
まあ、お金はどうでもいいけど。
一言謝罪があれば満足かな。
同じ目に合わせてやる!とか思わないし。
「痛かったんだけどね…」
「蹴られた背中が一番酷いんでしたっけ?」
「そうなのよ。どんな馬鹿力なわけ?」
私は背中を振り向く。
「容赦なく蹴ったんでしょうね。」
社長の言葉に蹴られた感触を思い出す。
「あるいは男性なのかも。」
「男性…。」
給湯室の出入りは女性が中心だから犯人は女性と推理したが、決して男性が給湯室に入れない訳ではない。
即ち、男性の可能性もある。
女性はハイヒールを履いているのだから、あんなに強くは蹴れない…かもしれない。
「念の為、男性も調べますか。」
社長は調べに行った。
ランチ、仕事で外に出ていた人を、除くと3人の容疑者が浮かんできた。
「つまり、この五人のうち誰かが犯人。」
だと思うけど、決め手は無し。
とりあえず、ここまでにして家に帰るか。
私は社長室から出た。階段を降りる時は給湯室を覗いてから手すりをしっかり持ち降りた。
軽くトラウマ入ってます。
階段を降り切って一息つく。
そのまま、会社から出た。
すぐに車が目の前に現れる。
石竜子だ。
目立つから会社前での迎えは不要と伝えていたが
時間が遅くて社員がいないのと、昨日の今日という事でわざわざ来たらしい。
石竜子は車から降りて後部座席のドアを開け、
私を乗せる。
ドアを閉めて、自身は運転席に戻りすぐに発車した。
この一連を見ていた者がいたのだが、私はきづかなかった。