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元悪役令嬢、推理する

夢の中で誰かが囁いた。

「君さ、いつまでも自分が可愛いと思ってる?

そのうち、醜くなって誰からも嫌われるんだよ。」

「え?嘘?ううん、事実。君はこれから醜くなる。嗚呼、泣かないで。大丈夫。

例え、世界中の誰からも嫌われたとしても、私だけは君の事好きでいてあげる。」

「嗚呼、約束するよ。その代わり、君も僕の事好きになってね?約束だよ。」

「僕は君に…」

夢か幻かそれとも現実であった事なのか。

最早思い出す事も出来ないけれど、

確かに私は…。





覚醒。




知らない場所にいた。

ここは…病院?

寝ていた体を起こそうとして、痛みがはしる。

頭、腕、足、背中。

あ、顔も痛い。

「顔!」

私は叫んだ。

顔を見なくちゃ!

私は周囲を見回して…

「お気づきになりましたか?」

石竜子が横にいた事に気づく。

「顔!鏡!!」

「最初に言うのがそれですか?」

石竜子は半ばあきれ顔で私に手鏡を渡す。

手鏡を既に持っていたという事は、私がそう言い出すとわかっていたという事。

さすが、石竜子だ。

鏡を見る。

頬に擦り傷。

おでこに痣。

案外軽傷だ。

ほっと一息。

「顔面の傷は見たとおりで、手首足首を捻挫、背中の打撲、頭部の強打。 以上が怪我の全容です。

頭部を強か打っているので検査入院が必要ですが、それに問題がなければ全治1カ月といったところとの事です。」

石竜子は淡々と言う。

「結構痛かったけど、案外大した事ないのね。」

「大した事ない?」

石竜子の声が震える。

「え?だって、ほら、1カ月で治るならね?」

「そうですね。」

「!」

石竜子が私の顔の傷に触れる。

顔が近い!

彼の少し痛み気味の髪が目の前で揺れる。

「もっと…」

「え?」

「いえ、なんでも。私はとても心配しました。

それなのに、大した事ないはないかと?」

「…心配したんだ?」

「とても。」

無表情で言われてもね。

「アランは?」

「呼ぶ必要あります?」

って事は知らせてないんだね。

「一応婚約者候補なんだけど。」

「所詮候補ですからね。」

「…」

私、結婚出来るのかな?

ふと、不安になる。

この人が側にいる限りどんな縁談もぶっ壊されそうだ。

「石竜子って執事の枠を簡単に超えるよね。」

「何か問題でも?」

いや、あるだろう。

「良美様は旦那様よりお預かりした大切なお嬢様です。お守りする為なら執事としての枠など捨て置きます。」

それにしたってね…

石竜子は色々やらかしているのだ。

大切なんて思ってないと私は確信している。

「それより犯人ですが。」

「わかったの?」

「いえ、警察が捜査中です。

間も無く、警察が事情を聴きにくるでしょう。」

「…石竜子、言わなくてもわかるよね?」

「…かしこまりました。手配致します。」

言って石竜子は珍しく微笑みながら去る。

警察?

そんなものが土足で踏み込むな。

背中がずきりと痛む。

思いっきり蹴られた。

全部で30段。

学校の階段くらいの段数だ。

極々普通の階段だから死なないとでも?

打ち所が悪ければ死ぬから。

ごめんで済ますつもりはないよ。

私は自分の手で犯人を捜す。

私は階段での出来事を思い出そうとこめかみを押さえた。

途中、夢の中で誰かが囁いた言葉が蘇るが、

頭を振って追い出す。


そう、私はいつも通り会社に来ていた。

少し違うのはいつもより早めだった事。

と、言っても30分程度の話。

社内に入ると同時に挨拶をするも会釈のみで終わる。

席に荷物を置くと、社長の席に向かう。

話があるからだ。

結局、現状打破の糸口はこの社長の行動を止める事しかないと判断した私は社長と話し合う事にしたのだ。

社長室に入ると途端に口調が敬語になる。

大人ってすごいと思う瞬間だ。

「実はですね…」

私は現状を社長に洗いざらい話す。

その原因も話す。

社長は神妙に聞いていた。

勿論、彼は私の現状を知らなかった。

原因が自分だと知ると酷く狼狽し、謝罪をしてくれた。

元々は気のいいおっさんだ。

寧ろなんでこんな事をしたのかと言えば、

会社の現状にあった。

この会社は零細企業だ。

収支トントン。

銀行の借金は借りては返し、返しては借りるの自転車状態。

今の景気なら潰れはしないが飛躍もないだろう。そんなレベルの会社だ。

そこにやってきたのが私だ。

社長はチャンスだと思った。

私が社長を引いてはこの会社を気に入れば、北帝との取引が増えるのではと。

今は北帝の下請けの下請け程度だが、私に気に入られれば、直接取引が可能かも。

それが無理でも、どこか良い取引先を紹介してもらえるかも。

でも、普通にしていたら多分気に入っては貰えない。お嬢様の目に止まるような会社じゃないのだから。

なんとかしなくては。

なんとか。

今より良いお給料を社員に出せたら。

ボーナスとかだせたら。

そこで、社長は考えた。

少しでも出来る社長、社員、会社に見せるには。

部下を叱責した。

成績表も出した。

昨年度より良い成績を出して欲しくて。

顧客満足度を高めたかった。

だから、営業事務の女の子に少し無理を言ったかもしれない。

でも、決してパフォーマンスではない。

私がいてもいなくても、どうやら厳しくしていたらしい。

私がいないと社長は社長室にこもり仕事をしていたらしい。

結果静かで一見私が来る前の日常そのものだったろう。

社長の考えは社員に直接伝えられない。

それを話せば私が北帝だとバレるから。

社員から見ればある日突然社長が乱心したとしか思えなかったろう。

結果、社員は私を敵視するようになった。

そこまで頭が回らなかった彼は決して悪くない。

私だってそこまで考えてなかったもの。

お菓子を配らないとか挨拶しないはスルーできる。

けど、これ以上は困ります。

少し目を光らせてください。


まあ、概ねこんな話し合いをした。

社長は部下のフォローをすると約束してくれた。

自分のやり方もまずかったと反省し、社員の気持ちを第一に考えていきたいと言った。

とりあえず、様子を見ていこう。

そう思い席に戻る途中、階下にある自販機でお茶を買おうと思い階段を降りようとしたら、突き落とされた。

その時、私は一人だった。

階段の横には給湯室。

犯人は給湯室にいたに違いない。

犯人はきっと女性だ。

この会社に女性は5人。

誰が犯人だ?



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