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北帝の限界?

「これ、いつ撮った写真!?」

私は思わずアルバムの表紙を見る。

「今年初めに撮った写真よ。」

紅茶を優雅に飲みつつ答えたのは自称私の親友英里佳様だ。

ここは英里佳様の自宅。

何故、こんなところでアルバムを開いているかというと、小松さん関係である。

彼女が通っていた中学聖マニアンヌ女学院中等部の卒業生が英里佳様なのだ。

彼女に小松さんについて聞いてみたのだ。

学年が違うのでたいした情報は得られないだろうとタカをくくっていたら、この卒業アルバムを見せられた。

「彼女を知らない子はあの学校にいなかったわ。」

ふんっ!と言った感じで英里佳様は言う。

「確かにこれは目立つわ。」

私は頷いた。

最初わからなかった。

今の小松さんとあまりに違うから。

「私は学院で赤薔薇姫と呼ばれてますが、彼女は青薔薇の王子と呼ばれておりましたの。」

英里佳様は言った。

改めて写真を見た。

髪はベリーショート。

目つきもなんだか悪い。

彼女は平均的な女子身長より少し高いくらいだが、女子校なら充分王子だろう。

てかさ。

「ミニ石竜子…?」

そう、石竜子に似てるのだ。

特にこの目つきの悪さ!

ちょっと眼鏡かけてよ、と言いたい。

「ええ、憎らしい程によく似てますわ!」

忌々しいと言わんばかりに英里佳様は言う。

「でもさ、王子なんでしょ?チヤホヤ要員じゃないの?」

言われてにっこり微笑む英里佳様。

「私があの男に似た人間を放っておくと?」

ちょっとまて。

ま、さ、か、

「ねぇ?英里佳、まさかとは思うけど、彼女をいじめた?」

「まあ、人聞きが悪い!」

さも驚いたと言わんばかりに言う。

「私はただ、自分の側には寄るなと言っただけですわ。」

英里佳様は極度の男嫌い。

特に何故かは知らないが石竜子が大嫌い!

なので、例え女子でも石竜子そっくりのボーイッシュな子を近づけたくなかったのだろう。

英里佳様を知る私には分かる。

でもさ、上級生で赤薔薇姫だっけ?って言われている彼女が毛嫌いしたら、虐められるよね。上が虐めれば、下も虐める。

もしかしたら、彼女は学内に味方が誰もいない状態だったのではないだろうか。

その状況で高等部には上がれないからうちの高校に来て、私を見つけて反射で敵認定したんだろう。

「彼女がどうしましたの?」

「いや、なんでもない。」

言うとややこしいから黙る。

「まさか、新しい友達ですの?」

目を細めて問うてくる。

「違うよ。ただ、学校で目立っていたからきになってね。」

「目立つ?どういう風に?

確かに女子校では男の子ぽくて目立ってましたが、共学のそちらでは特に気になる程ではないような?」

チッ!

無駄に鋭いな。

「匠にまとわりついてるのよ。」

「へぇ。」

あれ?

なんか、ちょっと空気変わりましたよ?

でも、嘘はついてない。

小松さんは匠やヒロインにまとわりついて事あるごとに私の悪口を吹聴している。

ふたりとも相手にしてないけどね。

「英里佳、ありがとう。助かったわ。」

私は英里佳様に礼を言う。

英里佳様は頬を赤く染めていた。


「と、いう訳で、原因の一部に英里佳様が関わっていたわ。」

「あの女、ほんとロクな事しないわね。」

教室で、ヒロインと話す。

「事情はわかったけど、やっぱり良美は関係ないよね。何も悪い事してないしー!」

プリプリ言う様子は凄く可愛い。

「機会を作って話し合うべきなんじゃない?」

「でも、お嬢様恐怖症とでも名付けるか、な小松さんは私とは正常な判断能力をもって話せないと思うのよ。」

「なら、間に人を挟めば?」

「誰を?」

適任者なんている?

中立に立ち、私の名に怯えない、そんな都合のよい…。





ここは第三実験室。

私と小松さんは後藤先生を間に挟み対峙した。

「なんで、俺が…」

凄く、面倒くさそうだ。

彼は腐っても教師。

生徒にとっては中立。

学内限定だが、理事長の孫という後ろ盾があるので北帝に対抗可能。

この人しか、思いつかなかったわ。

意外と役に立つ男だ。

「場所も提供してやったんだ。勝手に話せ。」

彼はやる気がないようだ。

「ねぇ、小松さん、私は貴方に何かしたかしら?」

「今!北帝の名前で謝罪を要求されてます!」

「謝罪?私に悪い点があれば改めるし、謝罪もするわ。それは貴方にも言える事でなくて?」

「ほら、先生聞きました!?私に謝罪を要求してきました!」

「いや、悪い方が謝ろうって北帝は言っただけだろう。」

後藤先生は否定する。

「先生まで北帝の名前に怯えてるんですね?」

「は?俺はこの学校限定だが、北帝に対抗する術を、もってる。別に怯えてなんかないぞ?」

「学校から出たら何されるかわからないってことですか!?」

「あ?俺が外に出るとでも?」

「…」

小松さんは一瞬ひるむ。

この人、引きこもりだからね。

学校から出ない人に学校から出たらの話しは無意味だ。

「話を戻して。とにかく、私の悪い点を教えて欲しいの」

「北帝の名前で、学内を牛耳ってます!」

「例えば?」

「入学式の時に、坂上先輩に難癖つけてました!」

「難癖?」

「そうです!一年生に話をしただけで、早く作業しろなんて、きつく言ってました!」

「あのね、一年生が何人入ったか知ってる?数百人単位の人数に花のブローチをつけなくちゃいけないのよ?大変なのよ?

ちょっともたつくとすぐ後ろがつかえるのよ。

入学式が始まる時間は決まっていたのだから、話してる暇はないの。」

「でも、もっと優しく言うべきです!」

「友達だもん、そこは気安くいうわよ。」

「先輩が勝手に友達と言ってるだけで、坂上先輩はそうは思ってないと思います!」

「根拠は?」

「だって北帝ですよ!?逆らえないですって!」

小松さんは叫ぶように言う。

「いや、彼女は逆らえるわよ。」

「なんでですか!?」

「北帝とは無縁の生活してるし。」

「…」

「ねぇ、冷静に考えてみて。私が権力をふるえるのは権力が通じる相手のみ。例えば、北帝のグループ会社や下請け企業の関係者及び家族。そこはわかるわよね?」

こくりと頷く。

「これにあたる人間は世界中にいてかなりの規模なのは認める。」

ここで一呼吸。

「これに当たらない人間も当たり前だけどいるのよ。」

「は?」

「北帝の規模は巨大だけど、うちとは関係ない企業にお勤めの人間の方が世の中多いわよ。」

この学校で言えば、半々だろうが、世に出れば北帝とは無関係の仕事についてる人かなり多いと思う。

北帝の商品を購入した事ある人全てを思い通りに…なんてできませんよ。

できるのはあくまで会社関係者のみ。

下請けの家族まで広げるから非常識に権力が広がったにすぎない。

で、ヒロインの家族は働いていなかった。

従って北帝の威光が効かない人間であった。

てか、効いていたら匠を取り合うなんて現象そもそも起こらなかった。

「ちなみに、小松さん、貴方のご家族も北帝とは無関係の企業にお勤めのようだから、北帝の権力なんてもの効かないわ。」

だからね。と話を続ける。

「そもそも、この学校を北帝の名前で牛耳るとかできないからね?」

まあ、そういう事にしておきましょうか。

世の中、裏技ってのもあるんだけど、今は言う必要もないしね。

私は悪役らしい笑みを浮かべて小松さんを丸め込みに入った。




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