再戦
後輩ちゃんを呼び出す。
しかし、それは困難を極めた。
まず、彼女の名前がわからない。
次に、呼び出したらまたその件で悪くいってくるのが手に取るようにわかる。
この二点を解決しない限り、私は彼女に接触できない。
しかし、学内で私の噂はまわる。
曰く。
ヒロインの彼氏(匠の事を言ってると思われる)に横恋慕している。
権力で休日も男を侍らせている。
一般生徒を目の敵にしている。
逆らうの退学にされる。
ひとつも事実がない!
なのに、この噂のせいで私は後輩から遠巻きにされている。
後輩から遠巻きにされても痛くも痒くもないと言いたいが、私が廊下を通れば、すごいスピードで横によけ目を伏せられるのはかなり辛い。
同学年にやられたら、登校拒否してた。
少なくても後輩ちゃんの噂を一年は信じ切っているようだ。
「もう!なんなの」
これに一番腹を立てているのはヒロインだ。
なんでもヒロインの所に例の後輩ちゃんが直接やってきて嫌な事は嫌だと言うべきです!だの、
一年はみんな先輩の味方です!だの、北帝の横暴を許してはいけない!だの言ってきたらしい。
ヒロインはその場でブチ切れたらしいが、後輩ちゃんはちっとも懲りずにまた来ます!とか言ってたらしい。
「あれは…なんなんだろう?そんなに北帝を悪者にしたいのか?」
匠も渋い顔だ。
匠は一年と顔を合わせる度に、北帝に負けないでください!とか言われるらしい。
主に女の子に言われるので、ヒロイン程強く出れないとの事。
「もう、呼び出すのは難しいし、次にどこかで会ったら、言いたい事を言うか。」
私の言葉に二人は頷いた。
「先輩!イジメはやめて下さい!」
ある日、学食で後輩ちゃんが数人の男の子をバックに叫んだ。
こっちはオムライスを口に運んだばかりのタイミング。
何事かと口をモゴモゴさせる。
ヒロインはお茶を吹き出しかけてむせる。
匠は唖然と後輩ちゃん達を見ていた。
「イジメって?」
「惚けないでください!先輩が私に嫌がらせをしているのは知ってるんです!」
強く言いだすが、私は彼女の名前もクラスも知らない。嫌がらせなんて初耳だ。
「いや、私貴方が誰かすら知らないんだけど。」
「そんな嘘でごまかせると思っているんですか!?私の教科書盗んだり、文房具を壊したり、体育倉庫に閉じ込めたり!!都合の悪い事をいわれているからって、私の友達を使って嫌がらせなんて姑息です!」
「貴方の友達って誰だよ?」
「そんな言い逃れができるとでも!?」
ばっと後ろを振り向くと数人の男の子が前にでてくる。
「俺は北帝さんに命令されて、小松さんの教科書を破った。」
「俺は文房具を壊した。」
「本当はしたくなかったのに無理矢理…」
あ、あの後輩ちゃんは小松さんて言うんだ。
てかさ。
「君達、塚田君、友永君、横澤君だよね?」
私の言葉にびくっとする。
「知り合い?」
ヒロインが聞いてくる。
「学校では初めてあったね。」
「学校では?」
「いつだったか、パーティで会った…というか、顔を遠くでみた事があるな。」
途端、彼らの顔色が悪くなる。
まさか、私が覚えているとは思わなかったのだろう。
まあ、目立つ顔でもないし、話した訳でもないしね。
「で、君達が何を誰に言われてしたって?」
改めて聞く。
「いえ、なんでも…」
「なにもしてないです」
「僕、何も知らないです」
「!?ちょっと!?」
三人の手のひら返しに小松さんは慌てる。
「また、北帝の権力を使って!卑怯者!!」
ぱしゃん
私に水をひっかけて、何も言わずに背を向けて行ってしまった。
「良美大丈夫!?」
私は呆然としながら彼女の背を見送り…
「三人はここに残れや」
逃げようとした三人に声をかけ金縛りの術を使用した。