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ヒロイン登場

今日から高校二年生だ。


うわ、元アラサーとして言ってはいけないセリフだったわ。とっくの昔に高校生を終えていた私は久しぶりの高校生にむず痒い思いをしていた。しかしセーラー服が似合わないなあ。姿見を見つめながら私はため息をつく。前世の時も美人ではなかったから似合わない制服を3年着たけどその比じゃなく似合っていない。にきびは薬が効かず相変わらずだし、髪も石竜子がフランスから取り寄せたとかいうトリートメントを使ってみたけどパサつきは変わらず。そんな中唯一変化があったのが体重で、なんと4キロも減ったのだ!やった、やった!!

「お嬢様は最近よく姿見を見るようになりましたね。」

「まあね。己を知らないと綺麗になれないしね。我慢してるんだよ。」

私は肩をすくめる。

石竜子は姿見の前に椅子を持ってきて私を座らせる。そして跪きソックスを履かせる。

「ご立派です。」

ソックスを履かせ終わると立ち上がり、私の後ろに回る。鏡台から櫛を取り出し結い始める。

「所で今朝も電話があったようですが?」

「ああ、あったねぇ」

私は肩を竦めた。

そう、結局この春休み中ずっと匠からのモーニングコールは続いたのだ。電話に出るまで鳴り続け、出たらすぐに切れる。スマホのディスプレイに表示される通話時間はおよそ3秒。いや、本当何がしたいのかと。

「仕返しなのかね?」

「は?」

石竜子は眉をひそめる。

「いや、高校一年の間ずっとモーニングコールをしていた訳じゃない。やられてわかったけどけどかなりうざいし、これを一年間ってやり返されても文句言えないなと思ってね。」

「番号変えましょう。」

「いや、今日会って謝って辞めて貰うよう頼む。交渉決裂したら変更するんでいいでしょう。」

「しかし、本日会えるとは限らないのでは?」

石竜子は今日クラス替えがある事を知っている為言い募って来る。でも大丈夫。私は匠と同じクラスになる。ついでにヒロインとも。私はゲームをしていたから知っているけど、当然普通は知らないので適当に笑ってスルーする。石竜子は眉間に皺をよせて不満顔だ。

「本当はその男からの電話が嬉しいのでは?」

「ないな。」

自分でも驚くくらいの即答だった。本当にうざいんだもん。過去の自分を殴りに行きたい。

「…そうですか…」

髪を結い終わり石竜子は私のカバンを持つ。

私は立ち上がり石竜子の後に続き部屋を出た。そろそろ学校に向かわないと遅刻だ。


二年A組

ゲームと同じく、私はこのクラスに匠、ヒロインと共に組み込まれた。席は始業式後行われる席替えにより私は窓際で匠とヒロインに挟まれる形で決まった。この席位置でヒロインが今どのルートを歩みかけてるかがわかる。ヒロインが匠ルートに入りかけてると悪役が必要になるのだろう、私がお邪魔虫よろしく間に入り込むのだ。もし、他者のルートに入っているとヒロインは私と匠から離れた席位置になる。つまりモブ扱いに格下げされるのだ。なんとも羨ましい限りだ。私はモブになりたい。いや、それはともかく。ヒロインは現在匠ルートに入りかけてるのは間違いない。これはゲーム補正でうっかり虐めたり誤解されたりしないよう気をつけなければ。てか、ヒロインに匠の秘密をバラせばいいのかな?ふと、匠ルートに入った後割とすぐに判明する彼の秘密が頭をよぎる。大した秘密ではないが、ヒロインにとっては根幹を揺るがす大問題を彼は抱えていのだ。その秘密を今バラす→匠ヒロインに振られてルート突入せず→私悪役から降りれる…みたいな?でも他人の秘密をバラすって悪役そのものの行為だよな。と、悩んでいるとホームルームが終わり帰りの時間となった。

「匠君!また同じクラスだね!よろしくね!」

ヒロインが早速席を移動して匠の所へ行く。しまった出遅れた!ここで割って入ると虐め認定されるんだよな。でも私にだって用事があるんだ、これは仕方ない。私はくるりと後ろを向き…息を飲んだ。


金色に染めたサラサラツヤツヤな髪は女神の如く。大きな目は柔らかい印象を与え慈愛に満ちており、すっと通った鼻も潤った唇も薔薇色の肌も何もかもが完璧な美しさ。さすがヒロイン坂上香織。ゲームの時から絵師の気合が他者と違うって思ってたけど三次元になっても格の違いが滲み出ている。その隣にいるのは去年の学祭で行われたミスターコンで見事ナンバーワンをゲットした長谷川匠である。ちなみにヒロインは学祭時別の攻略対象と過ごしておりミスコンには出ていない。出れば一番確実だったろうに。いや、眼福眼福。

…って違う!危うくトリップしてしまう所だった。外見偏差値が一人平均を大きく下回った私がお邪魔虫するのは大変気がひけるが仕方がない。ここで話しかけないと明日も明後日も電話がくるのだ。僅か3秒の通話時間の為に番号変えるの超めんどい。やるなら今だ。行くぞ!


「匠君!」

私は思い切って声をかける。

すると匠より早くヒロインがこちらを見て嫌そうな顔をする。

「匠君は今…ってあれ?」

ヒロインが目を見張るようにこちらを見る。

なんだ?

「北帝さん、痩せた?」

なん…だと?

私は驚く。まさかヒロインに指摘されるとは思わなかったのだ。と、言うか

「わかる!?私実は4キロ痩せたの!!」

ヤバイヤバイ!身内に痩せたとか言われるのより100倍嬉しい!

「本当に!?すごい!何やったの!?」

「毎日4時間筋トレ柔軟マラソン。後食事制限。」

「…ま、まじか。」

ヒロインもドン引きさせるエセ空手家のスパルタぶりよ。てか、しれっと匠もドン引きしてるし。

「後は肌荒れが治れば北帝さんミスコン狙えるんじゃない?」

な、訳ない。何言ってんだこのヒロイン。毒か、毒を吐いたのか。

「いや、このにきび薬塗ってるのにちっともよくならないんだよね。」

「…?そうなの?私もにきびできることあるけど市販薬適当に塗れば二、三日で消えるよ?」

まじか!?羨ましいな。やはりヒロイン。肌質も素晴らしい。若干へこむ。

「所で何か用?」

ぺしゃっとなっていると匠が会話に入ってきた。

そうだ、用事があったんだ、ヒロインとダイエット談義をしている場合じゃない。

「匠君、あのね、一年の時から、私色々やらかしてたじゃない?」

「うん?」

「えーとつまり…ごめんなさい!」

「!」

「実際やられて本当迷惑ってのがわかった。一年も我慢させて本当にごめんなさい」

「実際やられて?」

匠がつぶやくがそれどころではない。

「もう、話しかけないし、視界にも入れないと約束するんで許してください。」

がばっと私土下座する。

ざわっとクラスがざわめいた。

一年の時、クラスに君臨していた女王様が下僕扱いしていた男に土下座である。ざわめかない方がおかしい。だが、とにかく謝罪だ。

「わ、わかった!俺気にしてないから!」

驚いた匠が慌てて謝罪を受け入れる。

よかった!って、

「あ、もう時間だ!」

私は慌ててカバンを持ち教室をでる。

今日も元気に4時間運動コースなのだ。遅刻するとエセ空手家が煩い。


校門で車の外で直立不動で待っている石竜子にカバンを渡し後部座席に乗り込む。ドアを閉め石竜子は運転席へと移動する。間もなく車が発進する。目的地は勿論スポーツジムだ。

「あの男とは話せましたか?」

「うん、話せたよ。」

「では、もう電話はこないですね。」

うん、大丈夫….と応えようとして気付いた。

私、電話の事は言ってない。

一瞬視線が宙を彷徨う。

「お嬢様?」

訝しげに石竜子が声をかける。

ここでそれは伝え忘れたとか言ったら小言がくると思うし、匠は許してくれたんだから電話はこないだろう。うん、ここは

「大丈夫だよ。」

そう伝えるのがベストだよね。

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