デートして決意する
「妙に突っかかる人がいるんだけど、なんか知らない?」
私はノエルに聞いた。
もしかしたら、なんかのイベントかと思ったからだ。
「いや?知らないな。」
だが、どうやら違うようだ。
じゃあ、あの後輩といい、会社といい、偶然の産物ということか。
ここが、普通の現実世界ならありえるトラブルだが、ゲームの世界という下地がある以上、どうしてもイベントかと疑ってしまう。
悪い癖かもしれない。
「まあ、映画を楽しんでこいよ!」
ノエルは笑いながら言った。
映画は週末に行く事にした。
週末まで3日あったが、事あるごとに後輩ちゃんに突っかかられて、精神を削られる。
匠と登校すれば、彼女がいる人と無理矢理登校なんて!とか、うっかり廊下で誰かとぶつかれば、北帝だからって謝らないつもりですか!?とか、クラス委員に選出されれば、北帝の権力を振りかざしてはずかしくないんですか!?とか…。
匠と登校は寧ろ私が無理矢理付き合わされてるし、人とぶつかれば私だって謝るよ!クラス委員如きに権力って一体なんの話なんだ!?
言われる事全てが的外れで、なのに言い訳はさせて貰えず、とても疲れてしまった。
一方、勉強させて貰ってる会社では、電話番と書類整理とお茶汲みをするようになった。
様になってきたかと思っていたが、給湯室に行けば相変わらず、先輩方は私の事で愚痴ってる。
私がいるだけで、社長が部下に威張り腐るので、迷惑だとの事。
最近、休憩にみんなに配られるお菓子が私にだけ配られなかった。
悪意を感じたが気のせいか?
会社でも精神がくたびれる。
そんな中、映画だ。
私は楽しみにしていた。
せめて、休日くらい楽にしたい。
命を洗濯したいんだ。
な、の、に…
「良美、今日ってデートだよね?」
ここは、待ち合わせ場所に指定したカフェだ。
先に来てコーヒーを飲んでいたアランは誰の目にも止まる程かっこよかった。
そのアランが軽くいらっとしてる。
理由は1つ。
「なんで、こいつがいるの?」
後ろに控える石竜子だ。
「私はお嬢様専属の執事でございます。お嬢様が一人で外出などありえません。」
「デートなんだけど?」
「例外はありません。」
二人はにらみ合う。
石竜子を留守番させる事が出来なかった私が悪いが凄まじく疲れる。
側から見ればイケメンが女の子をとりあっているようにも見えるが、いかんせん私だ。
様にならない。
「アランごめん。石竜子も喧嘩売らない。」
私は二人を止める。
「映画見に行こう。」
二人は視線を同時に外し、舌打ちする。
こんな時だけ、妙に気が合ってる。
「じゃあ、行こう。」
アランは立ち上がり私と手を繋ぐ。
「!?」
あまりに自然に恋人繋ぎをするので驚く。
「アラン様、結婚前の淑女と接するには些か距離が近いかと。」
石竜子が繋いだ手を解く。
「僕は婚約者だよ?」
「候補です。」
「使用人風情が僕達の事に口出ししないで。」
「お嬢様をお守りするのが、私の仕事です。」
互いに一歩も引かずに言い争う。
私はこいつらにバケツで水をぶっかけたい衝動に駆られる。
バケツがなくてよかった。
私はすごくイライラしながら映画に向かう。
映画ではさすがに静かにしていた。
私はアランと石竜子に挟まれる席位置で、アランと手を繋ぎながら映画を見た。
時折、石竜子を見ると必ず目があった。
石竜子、映画みろよ。
映画が終わり、ランチにする。
ランチはお店をすでに予約済みと石竜子が伝え、私をアランから引き離し、当たり前のようにエスコートする。
「おい、使用人が私の婚約者を勝手につれまわすな。」
「候補様、 私は専属執事ですので、お嬢様のエスコートは仕事のうちなんですよ」
そうか?そうなのか??
私は首を捻るが、石竜子が間違うはずもない。
きっとそうなんだろう。
お店で食事を終えた。
余談だが、インドカレーの店で結構辛かった。
アランは半泣きで食べる傍、石竜子は顔色一つ変えず食べている。
時節、アランを鼻で笑うのを忘れない。
お店を出た。
そこで、人に出会う。
なんの、呪いか後輩ちゃんだ。
どうやら友達と遊びに来たらしく、私の顔を見て驚いている。
てか、友達の顔、前にトイレで見た子だ。
「こんにちは。」
「…こんにちは」
挨拶は私からした。
だって、休みなのに難癖つけられたらたまらない。
その時、店の方から男二人が言い争う声が聞こえた。
間違いなく、アランと石竜子だ。
私はため息をついて、二人の首根っこをつかんで
その場を去る事にした。
「すみません、急いでいるので失礼します。」
後輩が何か言う前に私達は家路についた。
翌日の学校。
「おい、北帝!」
珍しく、後藤先生から廊下で声をかけられる。
廊下で出会うなんてレアである。
「なんですか?」
「今、一年の子がすげー勢いでお前の事喋ってたぞ?」
「…なんて?」
もう、後輩って誰だよとは思わない。
「なんか、北帝の力で男二人とデートしてた。男はすごく迷惑そうで可哀想だったって。」
うん、一度ちゃんと話そう。
私は心に決めた。




