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誤解の予感

今日は入学式だ。

私は手伝いの為に体育館前にヒロインと共にいる。

花のブローチを新入生の胸につけるのだ。

私とヒロイン以外にも数人の手伝いがいる。

新入生は決して少なくないので、サクサクやらないと追いつかない。

私は、手早くやることに集中して、あまり新入生の顔を見れなかった。

だけど、隣のヒロインは時折、新入生と話して手を止める。こらこら、後がつかえてるよ。

私はヒロインに注意する。

すると、新入生が私を睨むのだ。

悪いね、美人との会話を邪魔して。


新入生が入場したら、式が始まる。

在校生代表で匠が壇上にあがる。

別に生徒会長とかではない。

成績がよいから代表に選ばれたのだ。

途端、女子から黄色い声援があがる。

忘れがちだが、匠は学校一番のイケメンである。

女子がうっとりするのも当然だ。

挨拶を終えて、壇上から匠は降りる。

自身の席に戻ると、式が進む。

式が終わり、新入生退場となる。

退場の先導として、私と匠が動く。

軽く打ち合わせをしてから、扉を開き新入生を退場させる。


うん、無事に終わった。

帰り支度を終えて、トイレに寄った。

個室に入る。


すると、後から誰かが入ってきた気配がする。

「ねえ、さっきの入学式だけどさぁ、ブローチ配ってた先輩見た?」

「見た!超可愛かったよね!」

「うん!」

「でも、隣の先輩はないね。」

「あ、あの、釣り目の?」

私の事だ。

ドキリとする。

「そうそう、あの可愛い先輩、なんか、難癖つけられてて可哀想だった!」

「私も見た!ただ、挨拶してくれてただけじゃんね?」

「ねー、緊張してたうちらに優しく声かけしただけで、あんな怒る事ないのにね」

え?

私、怒ってたかな?

「あの先輩、北帝らしいよ?」

「え!まじ?」

「じゃあ、我儘なんだろうね」

「きっと可愛い先輩が 妬ましいんだよ」

「可哀想!」

「なんか、噂によると、在校生代表スピーチした先輩に粘着してるらしいよ?」

「え?あのかっこいい先輩?」

「そう。なんか、いつも一緒に登校してるんだって。」

「うわー、我儘お嬢様だから逆らえないのかな?」

「でしょう、あの可愛い先輩と付き合ってるんじゃない?でも、あの先輩が邪魔してるんだよ。」

「うわー、 あの先輩最低!」

まだまだ続きそうだが、ずっとこのままなのも辛いので、しれっと個室から出る。

ぎょっとする、後輩。

三人いた。

ショートカットの可愛い子、ボブカットの眼鏡っ子、ロングヘアーのタレ目ちゃん。

私は三人の横の洗面台を使い手を洗い、そっと出ていった。

後ろで、後輩が、怖い!とか叫んでいたが、特に気にしない。

気になんか、しないもん。。


翌日。

ランチをする為、私、ヒロイン、匠の三人で学食に行く。

ヒロインと匠はお弁当だが、私は学食を利用する。

今日のメニューはパスタだ。

サラダもスープがついて500円。

しかも大盛り。

私はテンションが上がってさあ、食べようとしたところで、飲み物を買い忘れた事に気づいた。

仕方ない、買いに行くかと腰を浮かしたところ、ヒロインも水筒を忘れたと言う。

「よし、じゃんけんで負けた人がパシるでどう?」

「いいよ!」

『じゃんけん、ぽん!』

私、グー、ヒロイン、チョキ。

ヒロインが私のお茶を買う事になった。

財布からお金を渡す。

「ついでに、俺のもよろしく!」

どさくさに紛れて匠もヒロインをパシる。

「匠はじゃんけんしてない!」

「いいじゃん、別に!」

「ったくもー!」

ヒロインはため息をつきつつも、匠からお金を受け取り、自販機に行こうとして…

がたん!

大きな音を立てて通路を挟んだ隣に座っていた女の子立ち上がる。

あ、昨日のショートカットの子だ。

こちら…というか、私を睨む。

なんか、仔ウサギが頑張って威嚇しているように見える。

「北帝先輩!」

「?はい?」

「いくらなんでも酷いです!」

『?』

私達三人は思わず顔を見合わせる。

「こちらの先輩をそんなパシリみたいに使うなんて!」

「えっと、じゃんけんでね…」

「先輩も」

彼女はヒロインに向き直る。

「え?」

「嫌なら嫌っていっていいんですよ!」

「えっと、別に嫌じゃ…」

「北帝だからって遠慮する必要ないんです!それに先輩も!」

「えっ、俺?」

匠をきっと睨む!

「彼女さんが嫌な目にあってるんですよ!なんで庇わないんですか!?怖いんですか!?」

「えっ、いや、別に怖くは…」

「てか、彼女?」

ヒロインが首を傾げる。

「とにかく、私が一年だからって理由でおとなしくなんてしてないんで!風紀を乱す人はたとえ北帝でも、注意するんで!」

君は風紀委員なのかい?

そう、突っ込むより早く、彼女はくるりと背を向け私達から離れていった。

てか、すごい、注目されてるんだけど。

私はお茶は諦めてパスタを食べる。

「なんだったんだ、今の?」

「さあ?ただ、トイレでも今の子私について怒ってたよ。」

「まじか?」

「うん、ヒロインを妬んでて、ヒロインの彼氏である匠に粘着してる嫌な女らしいよ。」

「なんだそれ?」

「私、匠君となんて付き合ってない!」

「粘着されてんのは寧ろ私だよね!」

「俺と良美が付き合ってるって噂は流れてないのか?」

全員バラバラに言いたい事を言う。

「でも、あの子最初からいたんだから、なんで私がお茶買いに行くかも見てたんだよね?なのに

あんな風に言うって意味わからない」

「そういえばそうだね。」

「なんか、良美に対して悪意を感じるな。」

北帝だから、我儘。

北帝だから、傲慢。

そんなイメージがこのままだと先行してしまうかもしれない。

でも…

「まあ、いいか。」

『いいの!?』

「いいわけないけど、正直、学校での事なんてどうでもいいくらい、今忙しいし、考える事が多いのよ。」

北帝としての勉強がかなりきつくて、今のやりとりなんてどうでもいいのだ。

「ああ、その気持ちわかるわ」

ヒロインも勉強が大変なんだろう、同情してくれる。

今日も学校が終わったらその足で会社を見に行くのだ。会議があるらしく、資料を読まなくてはいけないのだが、まだ全然読んでない。

ヒロインと私は顔を見合わせ、同時にため息をつくのだった。

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