クリスマスパーティ
あけましておめでとうございます
日本に帰ってきた!
と、思ったら修学旅行は終わってた。
私抜きで終わってたぜ、畜生。
新幹線で拉致られたという事に気付いたのは幸か不幸か、ヒロインと匠だけだった。
どうやら石竜子は部下に命じてこの二人には諦めて誘拐の事実を伝え、残りの生徒、教師には北帝良美は思いつきで海外旅行に行った事にしてしまったらしい。
学校に着いたら海外土産をクラス中から強請られて、無いと伝えた時のテンションの下がり具合と言ったら…。
一方で、ヒロインと匠は私の顔を見た瞬間、泣きそうな顔で飛びついてきた。
やばい、学年トップの美男美女にサンドイッチされちゃった!
で、何があったか、キリキリ吐かされる。
「…と、いうわけよ。」
事の顛末を転生云々は抜かして簡潔にはなす。
「…て、事はアランとか言う人はいつかこっちに来るってことか?」
匠が渋い顔で言う。
「匠君!ライバルだね!」
楽しげにヒロインは言う。
言われて匠はヒロインを睨む。
いや、ライバルも何も眼中にないからね。
もう、敢えて突っ込むのも疲れるから黙っているけど、未だに強制モーニングコールも登校イベントも発生している。
それだけではなく最近、仲間を増やした彼は盗撮、私物無断保管辺りに特に力を込めはじめていた。噂によると仲間と頻繁に情報交換をしており、しょっちゅう自宅を往復しているとの事。
お仲間は男嫌いで有名なので、素直に驚く事実だ。
その情報交換が功を奏すのか、数々のストーカー行為は石竜子の目すらもすり抜ける。
実に傍迷惑な話だ。
そんな、ストーカー男とどうにかなる訳がない。
落ち着けヒロイン、匠はライバル以前の問題だ。
「それに、ノエルさんは今どうしているの?」
「彼は石竜子の部下になり、見習い執事になりました。」
「よく、許したね。」
実に嫌々ではあったが、私の命令なのでこなしてくれている。ノエル曰く超スパルタらしい。
でも、楽しそうだ。
「まあ、アランやノエルはどうでもいいのよ。」
「どうでもいいかな?」
寧ろ結構重要だよね的な顔をヒロインはする。
でも、とりあえずひと段落して目の前から消えた人間などどうでもいいのだ。
重要なのは、目の前にいる、我が友だ。
「ほら、結局修学旅行にはいけなかったじゃない?で、代わりに旅行をと言いたいけど、テストが差し迫っていてそれどころじゃない。だから、クリスマスパーティをやらない?」
「クリスマスパーティ?」
「うん、私の家で。」
「北帝家で!?超凄そう!」
ヒロインは匠と違い我が家に来た事がないので乗り気のようだ。匠は勿論、断らない。
「心を込めておもてなしするよ。是非、来てね。」
この日からテストまで実に1月程、超勉強を頑張りクリスマスの補講を全力回避したのは言うまでもない。
どうしてもクリスマスパーティをやりたかった。
煌びやかな夜会なんてつまらない。
友達だと胸を張って言える人と過ごしたい。
そう思ったのははじめてだから。
北帝良美に友達はいない。
そう公式設定にあり、実際前世の記憶が戻るまで彼女には取り巻き以外の友達がいなかった。
地位目当ての取り巻き以外で友達を持ったのは人生ではじめてだから。
煌びやかなだけの夜会は無視するのだ。
ジングルベールジングルベール鈴が鳴る!
今日はパーティだ!
幸い、クリスマスが土曜日にあたり準備に時間をたっぷりかける事ができた!
石竜子とノエルも手伝ってくれた。
ノエルは私以上にはしゃいでた。
ピンポン!
来た!!
私とノエルは顔を見合わせ同時に玄関に行く。
「ヤッホー!」
「来てやった」
「ほーほっほっほ!!この私に夜会を蹴れというのですから、相当なパーティなんでしょうね!?」
「姉さんが来るから仕方なく来てやった。」
「良美、綺麗。」
いつものメンバーが口々に挨拶をしながら我が家の玄関をくぐる。
ノエルが、口元を押さえプルプルしている。
石竜子は怪訝そうな顔をしているが、大方ゲームキャラに会えて感動しているのだろう。
「あ、貴方がノエルさん?初めまして、坂上香織です」
「は、は、は、初めまして!の、ノエルです!」
ガッチガチに緊張しているノエルにピクリと眉を動かす堂本。
自然な動作でヒロインを背に隠し、
「初めまして、坂上の恋人の堂本です。」
にこやかに挨拶する。
うん、恋人とか言う必要ないのに敢えて言うあたり、ジェラシーねっ!?
堂本はわかりやすいから見てて楽しいわ。
対して、ノエルはヒロインを前にした以上のテンションで
「初めまして!!」
とか言ってる。
聞いてないけど、堂本がノエルの推しキャラだったのかもしれない。
匠ともガッチリ握手しているし、ほっとくとサインをねだりそうな勢いだ。
適当なところで、挨拶を切り上げパーティ会場に案内する。
普段ダンスパーティーを開くホールにご馳走とツリーを用意してある。今日はダンスも企画してあるが、果たして社交ダンスなど彼らに踊れるのか?ま、踊れないので別の物を今日は用意してある。楽しみ!
さあ、乾杯だ!
『メリークリスマス!』
声を合わせてグラスを高々あげる。
思い思いにご馳走を食べて談笑する。
匠と英里佳様は二人で私が知ってはいけない話で盛り上がり、ヒロインと私が美容について語り合い、堂本とヒロインが桃色空間を作り出し、その周りを雪平君がちょろちょろしてる。楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
さあ、ケーキだ!
私は石竜子に言ってケーキを用意させる。
しかし、出て来たケーキは私が指定したクリスマスケーキではなかった。
これは…
『ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデーディア良美〜ハッピバースデートゥーーーユー』
部屋が暗くなり、全員で合唱された。
目の前にはバースデーケーキ!!
なんで、今日が私の誕生日だって知ってんだよ!
畜生、驚きすぎて目から水が…
「泣くな、良美!」
「ホーッホッホッ!サプラーイズ!ですわ!」
「ほら、プレゼント。」
「僕も選んでやった。」
「喜んでくれると嬉しい」
私は彼らからプレゼントを受け取る。
フォトフレームだった。
じゃあ、今日の思い出を最初に持ってこよう。
私は石竜子に命じてデジカメを持ってこさせる。
ケーキと私を中心に皆んなが集まり
『はい、チーズ!』
最高の一枚が撮られた。
この日、私は17歳になった。
「皆んな、ありがとう!」
私は最高の笑顔を返す。
友達は全員楽しそうだった。
さあ、最後はダンスタイムだ。
「じゃあ、最後にマイムマイム踊ろう!」
『なんでやねん!』