ノエル・ド・ノブリース
生前俺は社畜だった。
朝から晩までブラック企業にその身を捧げていた。
そんな俺の唯一の趣味がゲームだった。
パズル、RPG、ミステリー、格闘、ギャルゲー、なんでも手を出し、クリアしていく。攻略サイトも運営していて、その界隈じゃ俺は有名人だった。
ある日、姉貴が乙女ゲームなるものを持ってきた。全然クリアできなくて、キュンキュンできない!助けて!!と。
正直知るか!と、思ったが、どんなゲームもクリアしてきた俺は規格外と噂されるその乙女ゲームに興味を持ち、プレイすることになる。
それが、よかったのか、悪かったのかは俺にもわからない。
規格外と言われるだけあって中々クリアできないが、それでも地味にゲームを進めていたある日、俺の同僚が死んだ。どうやら事故のようだ。
一瞬自殺かと思ったよ。秘密だが、その同僚に俺ストーカーされてて、振った直後だったからさ。
で、葬式の帰りに事故に遭い、俺も死んだ。
輪廻転生。
俺は生まれ変わった。
記憶をそのままに、規格外乙女ゲームラブ&マネーの世界へ。
それも、ノエル・ド・ノブリースとかいう
微妙なキャラクターとして。
俺は前世で偶然にもこのキャラクターを目にしていた。隠しキャラを解放したら、出てきたサポートキャラだ。隠しキャラを解放しない限り出番のないモブと言って差し支えのないキャラクターだ。
弟のアランが生まれ、ゲームの世界と気付き、思った。
せっかくゲームの世界に転生したのにゲームを堪能せずに人生終えるのかと。
俺はせっかくなんだから、ゲームに参加したかった。その焦りから下手を打つ。
辺り構わず、ここはゲームの世界だ、アランは攻略対象だと言っていたら、心療内科…子供だからそれですんだが…に通院するはめになる。
転生故に俺には未来がわかる。
しかし、それはゲームがはじまってからの未来だけ。そして、俺の見立てでは、ゲームに自分が絡む可能性は低い。ここはゲームの世界なのに、ゲームとは関係ない現実で埋め尽くされている。
もしかして。
俺は狂っているのかもしれない。
そう、感じるのに時間はかからなかった。
誰も転生を信じず。
自分が唯一知ってる未来に進む可能性も低い。
前世、成人していた為、同世代の子供と関わる事も上手くできず。
俺は孤独だった。
その孤独が己を蝕み、自身が正常か異常かの区別もつかなくなった。
心療内科では手に負えず、やがて、精神科でより専門的な治療を受けることになる。
病的な妄想癖
それが医師の見立てだった。
そうか、乙女ゲームとか、転生とか、これは全部妄想か。薬の影響か、はたまた洗脳か、わからないが、そう納得し始めた時。
アランが行動を起こす。
計画を聞いた時、ゲームが動いていると知った。
心が震えた。
北帝良美がここにくれば、自分が異常か正常かがわかる。そう考え、兄を説き伏せ、アランの計画が上手くいくよう手を尽くす。
果たして、北帝良美がやってきた。
ゲーム通りなら成功するのはわかってた。
でも、あまりに絵姿がゲームと違い過ぎてやはり自分がいかれていたかと不安になる。
おまけに良美はアランとの思い出を思い出さない。不安は増すばかりだ。
しかし、その不安は唐突に終わりを告げる。
なんと、良美も転生者だったのだ!
自分の妄想ではなかった!
自分は正常だった!
この安堵感は今世始まって以来だった。
良美は俺程ゲームをやり込んでいないようだ。
俺の事もアランの事も知らず、それどころか自身の立ち位置も理解していなかった。
それは都合がよい。
俺にはサポートキャラとしての役割がある。
俺の知ってるゲーム進行と違う事もあるが、俺はアラン攻略専用サポートキャラクター。
良美にはアランを攻略してもらい、俺はゲームキャラクターとしての役割を果たさせて貰う。




