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悪役令嬢ジョブチェンジ先はヒロインに確定!

その話、覚えてる。

だけど、私は首をひねる。

だって、この話私の中ではアランとの思い出話じゃないんだ。

と、いうかさ。

「アラン、全然違くない!?」

そう、そこだ。

「あの日を境にアランは変わったからな。」

ノエルは言う。

「周りがな、誰も認めなかったんだ。良美様には相応しくない、醜い子供は良美様に近づくなって。実際、あれ以降会ってないだろ?それが原因だ。」

ノエルはため息をつく。

「アランは嬉しかったんだ。初めて遊んだ可愛い女の子に王子様と言われて。醜い外見故に人と扱われなかったアランにとって良美が初めて人間扱いしてくれた人だったんだ。恋に落ちるなという方が無理だろ」

だから、変わった。

醜いなんて誰にも言わせない。

良美の隣に立つに相応しい人間になりたかった。

何年もかけてアランは今のアランになったのだ。

「成る程ね。でも、がっかりだったんだろうな。」

「?」

「だって、この外見よ?昔の私は姫そのものだったけど、今じゃその面影ないしね」

私は笑う。

「いやいやいや!お前、ゲームの良美の顔覚えてる?」

「うん。勿論。」

「今のお前全然違うよな?」

「まあ、ダイエットしたし、努力したしね。」

私は肩をすくめる。

努力はしたが、アランに比べれば努力と呼ぶのも恥ずかしい。

「本来、あの絵姿のまま、アランと良美は会うんだよ」

「えっ!?」

「そして、醜く変わった良美を優しく労わり、美しくしていくのがアランなんだ。」

「なんと!?」

私は驚く。

「悪役の癖に親切だな!」

「は?悪役??」

「うん、だって私は悪役でしょ?その私と結婚エンドってことはアランも悪役って事でしょ。悪役は同じ悪役に親切なのね。」

「今の話のどこに悪役要素があるんだよ!」

ノエルは思わずと言った感じで突っ込む。

「いや、だって…アランは隠しキャラなんでしょ?最初は攻略対象かと思ったけど、私と結婚エンドがあるなら同じ悪役かなって。」

「アランは隠しキャラじゃねぇ」

「えっ!?じゃあ、誰が隠しキャラなの!?」

まさか、ノエルか!? 悪役顔だし理にかなってる気がする!

「今、失礼な事考えなかったか?…まあ、いい。俺は前世で匠ルート攻略中に隠しキャラを解放してしまったって話はしたな。」

「うん。」

「正直、何が条件だったのかまではわからない。検証前に死んだから。でも、とにかくなんらかの条件を揃えた結果…ヒロインの選択肢が増えた。」

「…は?」

ヒロインの選択肢が増えた?

ヒロインは坂上香織ただ一人。

それ以外にヒロインがいるというのか?

「アランは悪役じゃない。攻略対象だ。ただし、坂上香織対応じゃない、新しく選択出来るようになったヒロイン専用だ。」

「ちょっと待って!その話って…」

ひどく嫌な予感がする。

その予感を肯定するかのようにノエルは頷く。

「選択可能になったヒロインは北帝良美。つまりお前だよ。」




王国に着いた。

小国故に平和で美しい国だ。

その国の名前と良美様を攫った人間の名前を聞いて苦い思い出が頭をよぎり、思わず舌打ちする。

良美様が婚約者を募り出して真っ先に名乗りを上げたクソガキだ。勿論即効で断ったが、かなりしつこく申し込んできていた。旦那様は顔を引きつらせていたのをよく覚えている。

これは、あの子供と決着をつけろという事か?

さっさと日本に帰ろう、良美様。

そして、あの身の程知らずの子供に二度と会わなくてすむよう私が守ります。

私の目の前に、あの子供の家が見えた。





「アラン!」

庭にいたアランにルイスが声をかける。

どうやら庭をどのように案内するか考えていたらしい。コスモスが美しく見えるポイントはここかなとか独り言を言っていた。

「なんですか、兄上。」

「良美様の執事が良美様を迎えに来た。」

「使用人等追い返して。」

ふんっといった感じでルイスに言う。

アランは良美の使用人が大嫌いだ。

使用人のせいで結婚の約束をした二人が引き離されていたと考えているからだ。

「俺じゃ話にならない。お前がこの家の時期当主で、何より良美を攫った本人なんだから、お前が話せ。」

言われてみればもっともだ。

そう、一言文句を言ってやろう。

アランはそう考え、良美の執事の元へと行く。



その執事は応接室に通されていた。

アランは執事を見る。

黒髪で鋭くアランを睨む黒い瞳。背はすらりと高く、姿勢もよい。

仕立てのよいスーツに身を包み優雅で気品ある男だった。顔を見た瞬間、憎く感じた。それはアラン自身も戸惑う程の憎しみが心を支配した。

アランが入室したと同時に執事は立ち上がり優雅に一礼する。

「お初にお目にかかります。私、良美様専属執事の石竜子と申します。」

「アラン・ド・ノブリースです。」

「早速本題に入ります。良美様を日本に返していただきたい。」

「申し訳ありませんが、良美様は私の婚約者。長い間会う事すら出来なかったので、空白の時間を埋める為にも、今暫く時間をいただきたい。」

アランの言葉に執事は苛立ちを覚える。

「婚約者?良美様には婚約者はおりません。今回の暴挙は許されるようなものではありません。北帝の名の下に粛清されても仕方なき事ですよ」

「いいえ、私と良美は婚約者です。子供の頃からそうと決めていた事。事情を知らない…そう、貴方のような心無い使用人が私達を引き裂いていただけにすぎません。」

この言葉に執事の苛立ちはさらに深まる。目の前の男に対して憎しみ以外の感情を抱く事は出来そうもない。

「良美様はどちらに?良美様がどのように考えているかが重要です。子供の頃の約束等、果たして良美様が覚えているかどうか。」

言われて、アランは言葉に詰まる。

実際、良美は全く覚えてなかったからだ。

だが、思い出させる自信はある。

良美の隣に立つ男になれたと自負している。

アランは口を開き…

ノックの音がして、ドアがあいた。

中に入ってきたのは兄二人と、

『良美(様)!』

二人は異口同音に少女の名を呼んだのだった。

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