ご用件はなんでしょう?
電話が鳴ってる?
眠い目をこすりながらスマホをサイドボードから取り出す。時刻は7時30分。いつもより遅い起床だ。スマホのディスプレイには知らない番号が表示されている。はて?
「もしもし?」
「…」
「もしもーし」
「…」
イタ電か?折角の休みだってのに気分が悪い。
「話さないなら切りますね」
「…俺だ」
「は?」
「俺だよ。」
「…オレオレ詐欺なら間に合ってます」
今度こそ切ろう。
「長谷川だよ!」
「はせがわ?」
はて、どこかで聞いた名前…って一昨日までストーカーしていた男の苗字じゃないか!
「うわ、何の用!?」
「…」
「もしもーし!」
「問題ないならいい」
「は?問題?なにそ…」
ぷつ。つーつーつー
切れた。
いやいやいやいや。今更何の用だ長谷川匠。
問題ってなんだ。
意味なくスマホを見つめる。
トントン。
そこに石竜子がやってくる。
「おはようございます、お嬢様。どうかなさいました?」
「いや、今、匠から電話があった」
「は?」
不機嫌極まりないと言わんばかりの声を石竜子はだす。いや、そんな怖い声出されても私何にも悪くないし。
「ご用件は?」
「さあ?」
「さあ?って何か言っていたでしょう?」
「いや、問題ないならいいって言って切られた。」
「…」
石竜子さん、眉間に皺がよってますよ。
私だって困惑してるんだ。
「また、その男に連絡をとるのですか?」
「いや?そんな事よりやる事あるし。さ、朝ご飯食べたら散歩行こう!」
私はベットから起き上がり大きく伸びをしたのだった。
そして今。
私の目の前には憎き空手家エセトレーナー堂本要がいる。今日から毎日ここで4時間頑張るのだ。そして隙みて悪役令嬢らしくチクチクいびり返してやる。そう、ヒロインにやった事よりなお陰険にな!
そう思っていた事もありました。
ええ、完敗ですとも。
体力0な私は筋トレ開始30分でヘトヘトさ。
でも、私は負けない。必死で筋トレをやり、柔軟をやり、ルームランナーで必死に走り。4時間経った頃には死体ができてました。
「はい、本日4時間コース終了しました。頑張りましたね。素晴らしいです。」
ニコニコと微笑んでいる堂本。
だが、その笑顔に優しさはない。
意地悪いニヤニヤだ。
これがまたイケメンだから似合う似合う。
攻略対象やめて悪役への転職をお勧めします。
「明日もこの時間にいらっしゃいますか?」
「はい。」
即答の私に堂本は驚いたような表情を見せる。
うん?なにか?もしかしてリタイアすると思った?誰がするか、エセ空手家。ブスデブにきび女と罵ってくれた礼がまだじゃないか。
毎日毎日通うから覚悟しろよ。